第44回日本磁気共鳴医学会大会

2016.10.13

第44回日本磁気共鳴医学会大会の参加レポートを畑 純一先生(理化学研究所脳科学総合研究センター 慶應義塾大学医学部生理学教室)にご寄稿いただきました!

図1
図1 会場入り口
全体印象
 本年度は埼玉医科大学放射線科の新津 守先生を大会長として、大宮ソニックシティにて第44回日本磁気共鳴医学会大会が開催された。会場は大宮駅より近く非常に足を運びやすい立地となっていた(図1)。また参加者は1,900名近くの方が参加をされ盛況に終えた。従来は木、金、土曜日に開催されていたが、本年度は病院勤務の先生方が多く参加できるようにと金、土、日曜日にと配慮され開催された。また、他の新しい試みとして、1.国際化の推進、2.抄録集のスリム化、3.緊急シンポジウムの開催がなされた。特に国際化の推進に関しては参加者、発表者は大きな変化と感じたことだろう。抄録、スライド、ポスターの文章が全て英文となった。私もそうだが、作成にあたり英作文には苦労したことと思われるが、いつかは達成しなければならない国際化への一歩として非常に良い機会になったはずである。抄録集もスリム化され、近年よく用いられているアプリを使用したWEB抄録は、聴講したい講演を事前にチェックしスケジュール管理もしやすく非常に便利だといつも使っている。今後はアプリを使い、その場での質疑やアンケート等もあるかもしれない。シンポジウムに関しても緊急シンポジウムということで、本年7月に発行され話題になったfMRIの統計に関するシンポジウムも盛り込まれ、また、JSMRM-KSMRM Joint Sessionも国際化の一環として、とても内容の濃いテーマが集められ開催されていた。
 これらの新しい試みの中、本年度の磁気共鳴医学会大会のテーマはMRI Now and Beyondを掲げ開催された。その名の通り、研究の現状、技術の現状を再確認し、今後どのような課題に取り組んでいけば良いのかを把握できた学会だった。より詳細な学会内容、印象をいくつかのテーマに分け後述する。

図2
図2 大会会場内風景
シンポジウム
 シンポジウムとして本年も多くの内容が盛り込まれていた。各テーマのシンポジウム、JSMRM-KSMRM Joint Session、教育講演、ランチョンセミナー、Study Group、etc、と非常に多くの内容となっていた(図2)。時間が重なるため、全部を聴講することはできなかったが、私が聴講した中で、特に印象的だった緊急シンポジウムに関して、内容紹介、印象をまとめたいと思う。
 先日話題に挙がり、多くの先生方が関心をお持ちと思われるfMRIデータ解析の問題点について緊急シンポジウムとして解説、検討の講演が設けられた。
 これは、下記の7月に米科学アカデミー紀要(PNAS)にて発表された論文内容の話題となっている(Eklund A et al:Cluster failure:Why fMRI inferences for spatial extent have inflated false-positive rates. Proc Natl Acad Sci:7900-7905, 2016)。
 この論文では、SPM、FSL、AFNIにおけるfMRI解析パッケージにおいて、最大70%の誤検出の可能性があると述べられている。結果、約4万件のfMRI研究結果の正当性が疑われることとなり、脳賦活検査に大きな影響を与えることになるという内容であった。安易に受け入れると大変なことだ。この話題に関して、「クラスターレベルでの統計的推論の注意点 ~fMRIデータ統計解析にまつわる最近の論争をめぐって~」というタイトルで内容の解説、妥当性について講演が行われた。内容を簡潔にまとめると、まず、クラスタリング統計解析の場合、パラメトリックな解析をとると有意になりやすく間違いが生じやすい。ノンパラメトリックであればエラーは少なく、パラメトリックでも有意水準を厳しくすればエラーは少ないといった論文の概要紹介があった。続いて、クラスタリング統計解析ではボクセルの位置が近い所は相関があると仮定しているため、検出力はボクセル解析より高い。しかし、この結果は設定するクラスタリングサイズが肝になるといった内容のお話があった。私はfMRI解析を行ったことがなかったが、統計に関して非常に勉強になった。要するにUserが原理をしっかりと理解して使えば問題ないということだ。本シンポジウムを聴講することで、改めて原理を理解することの大事さが身にしみ渡った。近年、物理値画像の重要性の高まりからパルスシークエンス構造や解析ソフトウェアは大変複雑になってきているので、よりしっかりと理解して使っていかなければいけない。