第44回 日本磁気共鳴医学会大会 参加印象記

2016.10.06

第44回 日本磁気共鳴医学会大会の参加レポートを鈴木雄一先生( 東京大学医学部附属病院放射線部)にご寄稿頂きました!
 
 

図1 会場はポスターなども英語表記に
図2 機器展示会場風景
図3 電気自動車「テスラ」
図4 地元の蔵元「文楽」の日本酒
私のテンションも含め去年の大会との違い

 第44回日本磁気共鳴医学会大会が、2016年9月9~11日の3日間に渡り、埼玉県にある大宮ソニックシティにて開催された。テーマは「MRI Now And Beyond」である。現状を把握して、できることと今後の課題を検討する、という趣旨である。その趣旨に沿った講演やシンポジウムが多く開催され、現在の臨床レベルと課題を様々な領域と疾患で再確認させていただけた大会であった。また、わたくし個人としては、家から電車で十数分の街での開催であり、いつもとは異なるテンションでの参加であった。
 テンションだけではなく、今年はいつもと異なる点がいくつかある大会であった。まずは、国際化の推進として全ての抄録・スライド・ポスターが英語となり口頭発表形式の一部も英語となった(図1)。そして海外からの一般演題募集も加わった。以前から行われている韓国のMR学会であるKSMRMとのジョイントセッションでも国際化を感じていたが、今回は実際に中国から参加された演者の発表を拝聴したことによって、中国での現在進行形のMRI研究を(一部ではあるが)知ることができた。また、大会開催期間が「金曜日から日曜日」となったり、抄録集の記載事項を少なくしてスリム化を図ったりという新しい取り組みが行われた大会でもあった。第一展示場では機器展示(図2)に加え、「テスラ」つながりでテスラモーターズの電気自動車「テスラ」のセダンが展示された(図3)。また、埼玉県が全国第4位の日本酒生産県ということで、埼玉県上尾市にある蔵元「文楽」酒造の日本酒の試飲会などが開かれて憩いの場になっていたのをはじめ(図4)、各所でミーティングや熱い議論が交わされていた。

緊急シンポジウムで取り上げられた、今話題の脳機能画像データ分析についての論文

 このような新しい試みがいくつもある大会に参加をさせていただいて、印象的だった講演や発表を何点か述べる。7月上旬のニュースやインターネットなどでご存知の方も多いと思うが、脳機能画像(functional MRI; fMRI)のデータ解析の問題点を指摘した論文(Eklund A et al:Cluster failure:Why fMRI inferences
for spatial extent have inflated falsepositive rates. Proc Natl Acad Sci USA113(28):7900-5, 2016)についての緊急シンポジウム「クラスターレベルでの統計的推論の注意点 ~fMRIデータ統計解析にまつわる最近の論争をめぐって~」が初日の朝に開催され、とても印象的だった。詳細は元論文を参照いただきたいが、fMRI解析ソフトウェアに不具合があり、直近1年の研究結果の正当性が危ぶまれるというものである。40,000件もの研究結果の正当性に疑問符が付く、偽陽性が70%もあるなどとも伝えられた。fMRI研究で著名な八幡憲明先生(量研機構 放射線医学総合研究所 分子イメージング診断治療研究部)と川口 淳先生(佐賀大学医学部 附属地域医療科学教育研究センター)からこの論文の内容解説や報道後の反応などを聴くことができた。そこでは、そもそも直近1年という点が間違っていること、著者が40,000件を3,500件に訂正したこと、現在は修正されているが一部のソフトウェア(AFNI 3dClustSim)のみで起きていたことなどを解説していただいた。また、この論文報告にあるような偽陽性が発生しやすい場所や偽陽性を減らすにはどのようにしたら良いかなどの解説もあり、fMRIをかじっている身としてはとても勉強になるシンポジウムであった。

★続きはRadFan2016年11月号にてご覧ください!