消化管CT技術研究会参加見聞記

2014.12.05

2014年11月1日、宮城県仙台市の東北大学医学部艮陵会館で開催された第9回消化管CT技術研究会を、北海道消化器科病院の高林 健先生にご執筆頂きました!
 
消化管CT技術研究会参加見聞記
 
北海道消化器科病院 
高林 健
 
はじめに
 
2014年11月1日、宮城県仙台市にある東北大学医学部艮陵会館で開催された第9回消化管CT技術研究会に参加した(図1)。当日は小雨の降る生憎の天気であったが、全国から診療放射線技師や放射線科医また企業関係者など100名を超える参加者が会場に集まっていた(図2)。
この研究会は消化管のCT検査、特に大腸CT(CT colonography)について議論し、参加者相互の専門知識および撮影技術の向上を図ることを目的としている。今回は北福島医療センターの松井先生が当番世話人を務め、「Next Step CTC」と言うテーマにちなんだ教育的な講演、またアンサーパッドを使用し全員が参加するディスカッションなど、とても充実した内容が企画されていた。以下、研究会の内容について報告する。
 

図1 会場入り口
図2 受付

 
小さなポリープ、取る?取らない?
 
最初は太田記念病院消化器内科の大竹先生が、大腸微少病変の取り扱いについて講演された。大竹先生は内視鏡検査にて腫瘍性病変を認めなかった群と5mm未満の腺腫性ポリープのみを認め経過観察した群を比較し、両群のadvanced neoplasia(癌、高度異形腺腫、または10mm以上の腺腫)の累積発生率について示されていた。結果としては各advanced neoplasiaの累積発生率は観察期間60 ヶ月でそれぞれ1.5%、2.1%であり有意差は認めなかったが、5mm未満の腺腫性ポリープを3個以上認めた場合は発生のリスクが高くなると述べられていた。現在本邦では大腸CTをもちいたスクリーニングのガイドラインは存在しない。大腸CTでポリープが指摘された場合は、海外のガイドラインや各医師の判断により方針が決められている。今後この結果は大腸CTを始めとする大腸スクリーニングの方針決定の一助となるものと思われる。非常に興味深い内容の講演であった。
 
一般演題
 
今回は7つの一般演題があった。ファントムを使用した撮影線量に関する検討やDual Energyを使用したElectronic Cleansing(ワークステーション上で残液を除去する処理)の検討、読影補助目的に開発された隆起物強調フィルタの効果についてなど、大腸CTに関するさまざまな検討が報告された。中でも特に興味深かった演題は、炭酸ガス拡張による血流動態への影響についての発表だった。前回の研究会(第8回消化管CT技術研究会)でも他施設より同様の報告があったが、今回の結果も炭酸ガスで大腸を拡張した時は、非拡張時と同条件で撮影しても動脈早期相における静脈のCT値が高くなるという同様の結果が報告された。更にこの静脈CT値の上昇はSMV(上腸管膜静脈)・IMV(下腸間膜静脈)など大腸からの還流のある静脈のみで認められており、炭酸ガスで腸管拡張したことが影響したと考えられる。これまで炭酸ガスで腸管拡張した際の人体への影響については、ほとんど報告が見られなかったが、炭酸ガスを使用した大腸CTが普及してきたことでこれから報告が出てくるかもしれない。
 
続きは「RadFan」1月号(2014年12月末日発売)にてご高覧ください。