2012 CVIT見聞記

2012.07.23

2012年7月12~14日新潟市で開催された第21回日本心血管インターベンション治療学会・学術集会の参加報告を、阿部充伯先生よりお送りいただきました!
 
 

図1 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター内のCVIT受付
図2 2012CVITスローガン

2012 CVIT見聞記
よつば循環器科クリニック
循環器科 阿部充伯

 2012年7月12~14日新潟市で開催されたCVITに参加してきた。松山発だとアクセスが悪いと思って敬遠していたが、今回Retrograde Summit 2010 Multicenter trialの一般演題発表のため久しぶりに参加した。松山からANA伊丹経由で3時間足らずで学会場に到着できる気軽さに驚愕した。松山から意外に近い!
 学会場は、信濃川辺に隣接する朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンターである(図1)。新潟には背の高いビルが少ない中、この建物は近代的で威容な外観を誇り、今回のCVITのような全国規模の医学会を開催するに十分である事に感心した。
学会期間中は梅雨の真最中で、12日初日から連日大雨ながら、学会場はほぼ盛況であった。メイン通路に新潟名産の日本酒や米菓子などの出店が立ち並び、講演の合間には試飲、試食やお土産購入に人垣ができていた。
 初日には、PCIの原点回帰というスローガン(図2)のなかで、各シンポジウム「LMT病変の治療のあるべき姿」「脂質管理の新たな展開」、「PCI役割の再考」、「PAD治療戦略」や「EVT不成功後のマネージメント」、「高血圧に対するカテーテル治療」、「心臓リハビリテーション学会との合同シンポジウム」やパネルディスカッション等々が開催された。
 私は、シンポジウム「LMT病変の治療のあるべき姿」と「PCIの役割の再考」およびコーヒーブレークセミナー「FFR Forum in CVIT 2012」を聴講した。
 シンポジウム「LMT病変の治療のあるべき姿」では、LMTや多枝病変に対する治療に関して、循環器内科医と心臓血管外科医の立場から議論が行われた。この演題はPCIが活発になってきた当初から幾度となくディベートされてきた「PCIかCABGか」という普遍的な討論項目である。今回は2月に天皇陛下がCABG治療を受けられた事や、最新の虚血性心疾患のガイドラインに心臓血管外科医との意見交換が設けられた事もあり、この討論が再燃した感がある。心臓血管外科医が常駐していないPCI施設の方が日本でも多かろうと思われるが、どの位の施設がこれを励行しているのか、甚だ疑問である(それだけ心臓血管外科医からみると循環器内科医はいい加減な適応でPCIをしているように映っているのだろうか?)。当院ではLMT病変および多枝病変に対しては、SYNTAX scoreやEURO scoreを参考にして心臓血管外科医と即座に相談して、その都度患者に対してbestな治療(予後も考慮して)を選択しているつもりであるが、その治療選択はある程度循環器内科医の経験値に依る所が大きいと思う。CVITがPCI全てを登録してその現状把握に努めようとしてはいるが、まだまだの感が否めない(勿論緊急時にはPCIが優先されるという事は言うまでもないと思うが…)。
 シンポジウム「PCIの役割の再考」では、心臓血管外科医である高橋玲比古先生ご自身の経験を元にした軽妙で味のある講演「CABGからPCIへ:得たもの失ったもの」が印象的だった。高橋先生が言われるのは、PCIはDESや新たなディバイスの出現など数々のイノベーションを経て発展し、CABGに比しより低侵襲となり、より困難病変へと適応拡大してきた。しかも、日本の実現場では欧米のデータが示すほど悪い成績をもたらしていない。実際に高橋先生ご自身で施行しているCABGの件数は減少し、PCI件数は増加している。しかし、現在の困窮した有限医療資源の中で、現況のPCI偏重の考え方も改善する必要性は高いという意見であると思われた。私も同様な意見を持っているし、これが日本の虚血性心疾患の治療現場のCABGとPCIの立ち位置ではないかと思う。特に、現在でもご自身でCABGとPCIの両方を施行されている高橋先生ならではのご意見に共鳴した。
 また、「低侵襲PCIで得たものは?」で熱く講演された青森県立中央病院の吉町文暢先生の、スレンダーPCIに対する努力と熱意に敬意を表する。ただし、IVUSが挿入出来ない程の小口径でPCIを施行するのは患者にとってメリットがあるのか?と疑問に思う。
 さらに、セコイア病院の日野原知明先生の「米国におけるPCIの適応;過去、現在、将来」も興味深かった。米国では適切な薬物療法(OMT;Optimal Medical Therapy)により虚血性心疾患の発現率が減少して、PCI件数そのものが減少している。そのなかで不適切なPCIが厳しく取り締まられるようになってきた。日本でも早晩同じ事を厚労省が施行する可能性があり、その為にも正確な日本独自のデータを集計する必要があるとのアドバイスであった。
 また、コーヒーブレークセミナー「FFR Forum in CVIT 2012」では、FFRに他のモダリティーであるRI、MDCT、Fusion(RI+CT)を組み合わせてのPCIについて、その成果と今後の保険制度における制限について活発な議論がなされた。PCIに他のモダリティーを追加して、正確な心筋虚血を同定しPCIの是非を決定する事こそ、不適切なPCIを減らす事に通じる。私は核医学専門医でもあり、25年位前からRI検査も施行してきた。ちなみに当クリニックでも昨年8月からRIを新規導入して毎日のPCI治療に利用し、 現在全国多施設調査研究にも参加中である。

※続きは「Rad Fan2012年9月号」(2012年8月末発売)にてご覧下さい。