富士フイルム和光純薬、唾液による迅速な新型コロナウイルスの PCR 検査を実現

2020.07.30

①PCR 検査用前処理試薬「SARS -CoV-2溶解バッファー」
② 遺伝子検出キット「SARS-CoV-2RT-qPCR Detection Kit Ver2」ウイルスとヒト遺伝子を同時に検出することにより、「偽陰性」の発生を低減

富士フイルム和光純薬(株)は、唾液を検体とし、新型コロナウイルスの迅速検査を実現する PCR 検査用前処理試薬「SARS-CoV-2 溶解バッファー」と、新型コロナウイルス遺伝子検出キット「SARS-CoV-2 RT-qPCR Detection Kit Ver2」を7月31日より日本で発売する。PCR検査では、検体の保管状況の不備などでウイルスの遺伝子が分解され、感染しているのに陰性と判定してしまう「偽陰性」が発生する可能性がある。「SARS-CoV-2 RT-qPCR Detection Kit Ver2」は、ウイルスの遺伝子と同時に、検体に必ず含まれるはずのヒト遺伝子を検出することで、遺伝子の分解が起こっていないかどうかを確認することができる。「SARS-CoV-2 溶解バッファー」と「SARS-CoV-2 RT-qPCR Detection Kitver2」を組み合わせて使用すると※1、検体採取後約1時間で検査結果を得ることができる。
 これまで、新型コロナウイルスの PCR 検査の検体には主に鼻咽頭ぬぐい液が使用されていた。しかし、鼻咽頭ぬぐい液の採取は被検者に身体的負担がかかるうえに、採取時のくしゃみや咳によりウイルスが飛散する恐れがあることが指摘されており、被験者の身体的負担と、採取者の感染リスクを低減する方法として、唾液を検体とする検査方法が求められている※2 。また、唾液や鼻咽頭ぬぐい液などの検体には夾雑物※3 が含まれており、その中からウイルスを検出するためには、検体を希釈して夾雑物の濃度を下げる必要がある。しかし、検体を希釈すると、検出対象のウイルス由来のRNAの濃度も低下してしまうためPCR検査における検出感度を保つためには、RNA の抽出・精製という煩雑な工程が必要だった。
 今回、当社は、ごく少量の試薬を唾液や鼻咽頭ぬぐい液などの検体に添加するだけで、PCR検査の検体として使用できるようにする、新型コロナウイルス用前処理試薬「SARS-CoV-2 溶解バッファー」を新たに開発した。この前処理試薬を用いることで、従来必要だった煩雑な RNA 抽出・精製工程のうち、抽出工程を簡略化し、かつ精製工程を省略することができ、約1時間を要していた前処理工程を約10分に大幅に短縮する。同時に発売する「SARS-CoV-2 RT-qPCR Detection Kit ver2」は、新型コロナウイルス遺伝子および、ヒト遺伝子を検出するプライマー※4とプローブ ※5 をセットにした遺伝子検出キットです。本キットは、ヒト遺伝子 の検出が可能であるため、感染有無に関わらず検出されるはずのヒト遺伝子が検出されない場合には、検査が成立していないことを確認できる。これにより、保管状況の不備などによって検体中の遺伝子が分解されていた場合における「偽陰性」を防止できる。

当社は、企業活動のベースとなる「次の科学のチカラとなり、人々の幸せの源を創造する」という理念のもと、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の前処理試薬と遺伝子検出キットを供給することで、新型コロナウイルス検査の迅速化に貢献する。

※1:遺伝子検出キット「SARS-CoV-2 RT-qPCR Detection Kit Ver2」のヒト由来遺伝子同時検出機能によるもの。
「SARS-CoV-2 溶解バッファー」と「SARS-CoV-2 RT-qPCR Detection Kit ver2」は、セット売りではなく別売り。
※2:6 月 2 日に国立感染研究所より、PCR 検査において唾液検体の使用が認められた(「2019-nCoV(新型コロナウイルス)感
染を疑う患者の検体採取・輸出マニュアル~2020/06/02 更新版~」
※3:あるものの中にまざっている余計な物質のこと。
※4:PCR 反応時にターゲットとなる DNA 複製の起点となる短鎖(20 塩基前後)DNA。
※5:ターゲット DNA における特有の塩基配列に特異的に結合する DNA。

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富士フイルム和光純薬株式会社
TEL 06-6203-1590