一般社団法人日本画像医療システム工業会、「第17回(2019年度)画像医療システム等の導入状況と安全確保状況に関する調査」結果概要を公開

2020.06.04

 一般社団法人日本画像医療システム工業会(以下、JIRA)は、2019年11月から12月にかけて「第17回(2019年度)画像医療システム等の導入状況と安全確保状況に関する調査」を実施し、調査結果を公開した。
 本調査は、約30年前の1988年から「医療機器の導入実態調査」を継続的に実施している。JIRAは、本調査の継続実施により医療施設での機器の導入・使用の状況と保守点検を含む安全性確保の状況や、流通状況などを把握し、画像医療システムの医療現場での安全で適正な使用の促進を提言している。 また、産業全体の技術水準の向上、社会ニーズに沿った画像医療システムの開発方向性の探求、安全性、標準化の基礎資料などにも調査結果を活用してきた。
 調査は、全国の医療施設を99床以下、100床~299床、300床~499床、500床以上の 4 つの病床群に分類し、その中から無作為に抽出した1,000施設の放射線部門技師長宛にアンケート用紙を郵送し、締切日までに得られた有効回答数405施設(回収率41%)より得られた回答を集計・分析して報告書としている。

 調査結果の概要は、次の通りである。
1.「平均買い替え年数」
 調査結果によれば、「X線CT装置」、「血管撮影用X線装置」、「MRI装置」、「核医学装置(SPECT装置)」、「粒子加速装置」、「超音波装置」及び「CR画像処理装置」の代表的7機種の「平均使用期間」は、2008年の第7回調査から11回連続して“11年”を超え、2016年度から12年となり、その後も延長し続け、長期使用が 固定化され、日常の安全点検と定期的な保守管理が、より重要度を増す状況となっている。

2.「装置の稼動年数別台数」
 調査対象51機種の実際の使用期間を「1~5年」、「6~10年」、「11年以上」の3区分で調査したが、最長の使用期間「11年以上」をみてみると、51機種中11機種(22%)の装置が50%以上あり、15機種(29%)の装置が40%以上と長期使用の状況であるとの回答が寄せられた。
 また、「6~10年」と「11年以上」の合計が50%以上の機種は51機種中46機種(90%)と多数を占め、平均買い替え年数の長期化を裏付ける結果となっている。

3.「保守点検実施状況」
 保守に関する調査結果では、メーカーとの「保守契約」と「都度メーカーを呼んで点検」、「院内で保守点検」の3項目を合計した“保守点検実施率”を掲載している。
 「一般X線撮影装置」、「血管撮影用X線装置」、「核医学装置(SPECT)」、「超音波装置」及び「CR画像処理装置」の5機種の内、「血管撮影用X線装置」、「CR画像処理装置」は前回に比べわずかに増加しているが、「一般X線撮影装置」、「核医学装置(SPECT)」及び「超音波装置」は前回に比べ減少した。

4.「医療機器安全管理責任者の設置状況、医療機器保守点検計画の策定状況など」
 「医療機器安全管理責任者」の設置状況の調査結果は、全体の90%以上の施設が設置し改善がみられるものの、病床規模や設置主体で差がみられた。また、「医療機器安全管理責任者」の職種は、診療放射線技師、臨床工学技士および医師の3職種で約90%以上を占めている。
 「医療機器保守点検計画の策定」状況に対する回答では、「策定している」と回答した施設が92.1%と前回の調査から0.5ポイント良化している。

 今回の調査でも平均買い替え年数の大幅な延びの固定化が顕著に見られる。保守管理の重要性が増す中で院内点検を含む保守点検の実施率がなかなか向上しないという状況は、患者の安全確保の観点からも大きな課題ととらえている。JIRA、会員企業は、患者の安全確保のため医療施設への保守点検の必要性についての啓発や点検に関わる情報提供などを継続して実施するとともに、厚生労働省をはじめ関係行政機関へ保守点検実施に対する診療報酬上でのインセンティブ設定などを医療関係団体と連携して今後も継続して要望していきたいと考えている。
 尚、本調査の正式報告書は2020年6月より、JIRAのホームページから購入可能となる。調査報告書本体には、診断用モニタの品質管理状況、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の対応状況などの結果も含み、約700頁の膨大な資料となっている。「調査結果要約」と「単純集計」のみを印刷提供し、傾向比較に有用な「設置主体別クロス集計」と「病床数別クロス集計」および「病院機能別クロス集計」は CD にて添付する形式で頒布する。