書評 『放射線災害と向き合って―福島に生きる医療者たちからのメッセージ』 (ライフサイエンス出版)

2013.11.16

喜多悦子
公益財団法人 笹川記念保健協力財団理事長

 本年5月出版のこの本は、福島県立医科大学の医師らによる原発事故直後からの過酷な状況におかれた保健医療者の貴重な経験と苦悩をつづったものです。

 「福島県立医科大学病院の被ばく医療班」の人々は、自らの良心に従って過酷な事態に対峙されました。本書は、その経過、想いが、心の奥底から絞り出された生きたメッセージとしてまとめられています。何故過酷な負担を福島県立医科大学が背負わざるを得なかったか、何を日本の、そして世界の後世に伝えるべきか、いつまでも色あせることない必読書です。特に、近未来の巨大災害リスクが危惧されるわが国では、あらゆる保健専門家だけでなく、その分野の学生が目を通すべき書として広く推薦されるべき良書です。何故なら、本書は、あの未曾有の原発事故に正面から向き合った唯一の保健分野の教育研究拠点、医科大学の現場の声の集積だからであり、さらに、章立てで、保健医療関係者が最低限知っておくべき放射能•放射線の基礎知識や放射線災害の過去の事例、さらに放射線健康リスクの考え方や、さらに現在福島県で行われている県民健康管理調査事業が、平易かつ論理的に紹介されているからです。

 福島県立医科大学は、あたかも歴史的使命を与えられたかのようですが、原発震災の「悲劇」を糧に着実な復興と再生への道を歩み続けられています。全国保健医療関係者は一層の協力と支援を継続すべきでしょう。

 東日本大震災にあわせ発生した東京電力(株)福島第一原子力発電所事故後2年4カ月の今、改めて、なお避難生活と種々の困難を強いられている多くの方々に心からお見舞い申し上げるとともに、人々の苦難を共有するためにも、ぜひ、本書を手に取り、事実を知るとともに、今後の危機対応、リスク管理も理解しておいて頂きたいと願います。

●放射線災害と向き合って―福島に生きる医療者たちからのメッセージ
編著者:福島県立医科大学附属病院被ばく医療班(現 放射線災害医療センター)
発売元:ライフサイエンス出版株式会社
体裁:B5判、274頁
発売日:2013年5月1日
本体価格:2,200円(税別)
ISBNコード:ISBN978-4-89775-306-5 C1047\2200E

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