エレクタ、最新の脳内疾患専用定位放射線治療器ガンマナイフ「IconTM(アイコン)」の日本における製造販売承認取得

2016.07.04

 開頭せず脳疾患を治療するガンマナイフ治療の最新機器、エレクタの「IconTM(アイコン)」が2016年5月25日、厚生労働省より製造販売承認を取得した。
 ガンマナイフ治療とは、ビームが集中する箇所がまるでナイフで切り取られたかのような治療を可能とするためにつけられた名称だ。同製品は、192個のコバルト線源をコリメーターヘルメットを通じて脳幹部の1点に高精度で高線量を照射し、治療を行う。0.5mmという極めて高い精度での照射が可能の為、手術困難な脳深部にも威力を発揮することができる。世界での治療実績は100万人を超えており、日本でも1990年の導入以来、現在までに20万人以上が治療を受けた。多くが転移性脳腫瘍(がん)の治療であり、脳腫瘍(聴神経腫瘍、髄膜腫、脳下垂体腫瘍、頭蓋咽頭腫、血管芽腫、神経膠腫、悪性リンパ腫など)、脳血管障害(能動静脈奇形など)、ガンマナイフのみが治療可能である機能的疾患(薬物療法による疼痛管理が困難な三叉神経痛)への幅広い治療実績がある。
 この度日本での販売が認可されたIconTMは、脳定位照射に最適なデザインがなされ、放射線治療の先生方のために開発された新型装置だ。具体的なポイントとして次の4点が挙げられる。

1、分割照射と単回照射が可能な点
2、従来のピン固定に加えマスクによるフレームレス固定が可能な点
3、照射位置を自動的にとらえるステレオタクテックCBCTを搭載している点
4、照射中に患者の位置を監視し、照射の精度を保つことが可能な点

 正確な放射線量でのピンポイントな照射が実現するため、全脳照射と比較すると治療後の認知機能障害がなく、脱毛もほとんどない。正常な組織への被ばくを最小限に抑えることができることで、新病巣に対する複数回治療が可能となり、それぞれの患者に合った治療選択の幅が広がることが期待される。
 IconTMに導入されているガンマナイフ初のマスクシステムは、治療の高精度を維持しながら柔軟性を持った処理手順を実現することができる。一方で、従来のステレオタクティックフレームにも対応している。ステレオタクティックフレームは装着に高い専門性が求められる装着具であったのに対し、IconTMのマスクシステムはより容易な装着が実現可能となった。位置補正もソフトウェアの性能でカバーすることが可能なため、治療精度は従来とほぼ変わらない。IconTMには治療計画の照射位置を実際の患者の位置に合わせ自動的に補正するコーンビームCT(CBCT)がシステムに統合されている。このシステムにより、サブミリメートルの精度でキャリブレーションされ、治療計画を正しい患者体位に補正する。
 新しいマスクシステムにより、マスクアダプタの4点が基準点になり、鼻につけた反射するペイシェントマーカで患者の体動をリアルタイムに赤外線HDカメラ監視する。設定したしきい値以上の体動があった場合、直ちにビームがオフになり照射を中断し、再度、しきい値内に復帰した際には照射再開する仕組みになっている。
 また、数分で治療計画が完成するなど画期的な時間短縮がなされており、マスク作成(あるいは従来のフレーム固定)から、計画画像MRI、治療計画、照射までの全ての治療を一日で終了し、患者は二泊三日で社会復帰することが可能だ。
 日本での販売が正式に認められたことで、今後は転移性脳腫瘍に対する放射線治療の第一選択になり得る可能性が広がる。