富士フイルムメディカル、ITメディカルセミナー2014 in Tokyoを開催

2014.07.03
松村 一氏
東内京一氏
関塚永一氏
杉本和繁氏
森 修倫氏
会場の様子
富士フイルムメディカル(株)は6月28日コクヨホール(東京都港南区)にて「富士フイルムITメディカルセミナー2014 in Tokyo」を開催した。
同セミナーではまず、杉本和繁氏(同社取締役・常務執行役員)から挨拶があり、また、オープニングプレゼンテーションとして、森 修倫氏(同社ITソリューション事業本部)が同社の医療ITソリューションを紹介した。
続く第1部では松村 一氏(東京医科大学総合情報部)が「クラウドの導入背景と今後の活用方法」という講演を行った。同大学では2014年5月から同社のPACSクラウドを導入している。クラウド導入の背景としては臨床医の「長期保存画像をシームレスに使いたい」という要望、また災害時におけるバックアップの対応が挙がったという。「医療でのクラウド活用に対して不安点もあった」と語る同氏。懸念の1つであった安心・安全面についてはインターネット回線ではなく専用回線を使用し、院内保管とクラウド両方を使用することで解消した。また院内でクラウドに関するルールを制定するなどして環境を整えた。費用に関しては、院内保管よりも若干かさむものの、導入のメリットが大きく上まわるため、許容範囲であると判断したという。今後は、この導入により効率的な診療ができるようになるだろうと見込まれるが、「昔のデータをすぐに閲覧できるような体制の利点は、その真価がわかるのが約3年後だろう」との見解を示した。
第2部では「ICTにより医療・介護の他職種間連携基盤を強化する」という演題で、行政と医療の立場から講演が行われた。まずは東内京一氏(和光市保健福祉部)が「地域包括ケアシステムの構築と機能化~和光市のマクロ政策とミクロのケアマネジメント支援を中心に~」という題で、自治体と医療の連携の重要性を説いた。現在行政や制度などの連携はあまり見られず、医療・介護などを包括的、継続的につなぐ枠組み「地域包括ケアシステム」が必要となっている。そのため、同氏は「基礎自治体である市町村の医療への積極的な関与が課題である」とした。和光市は医療との連携強化、介護サービスの充実強化などを重視し「長寿あんしんプラン」という地域包括ケア計画を実施している。そして食事や排泄などのADL(日常生活動作)だけではなく、買い物や洗濯などのIADL(手段的日常動作)において自立できる高齢者が増えるよう、在宅療養支援診療や24時間訪問介護などフォローを進めている。更に2013年10月からは「C@RNA Connect」という地域医療連携システムを導入し、国立病院機構埼玉病院と高齢者の入退院時の情報共有や連携強化の取り組みを行っている。
関塚永一氏(国立病院機構埼玉病院)は「急性期病院における地域包括ケアへの心得と紹介率・逆紹介率アップ策」という題で、C@RNA Connectの導入のメリットとその地域連携における可能性を示した。同氏は「当院では数年前から放射線科の検査や外来検診を、地域の診療所からインターネットからいつでも簡単に予約でき、診断や検査の結果も翌日までに診療所で閲覧できる」とC@RNA Connectの利便性を述べた。その効果もあり、同院は紹介率72%・逆紹介率116%という成果につながった。同院では「顔の見える医療」を目指しており、ICTを活用しつつも、患者さんとのコミュニケーションを重視している。和光市のコミュニティケア会議にも参加し、医療・介護連携のICT化に積極的に取り組んでいる。同氏は「急性期病院として地域の患者さん一人一人と医療、介護などに関係した施設全てがICTを介してつながるよう、支えていきたい」と締めくくった。