MY BOOKMARK No.14 無料で使える画像閲覧・画像処理ソフトウエア─ DICOM画像から3Dプリントまで ─ 

2021.12.19

京都医療科学大学医療科学部教授

江本 豊 先生

はじめに

 私が所属している京都医療科学大学は診療放射線技師を養成する施設である。付属の医療施設を持たず、学生の臨床実習は近隣の病院に依頼している。医師の資格を持つ教員がいるが、大学では臨床業務は行わない。よって、臨床機器の紹介ができないので、教育や研究目的として使える無料の製品のなかで私が気に入っているものを紹介する。また、3Dモデル作成についても簡単に言及する。本稿では私が使用している範囲での紹介であり、可能な限り製品情報収集や動作確認をしたが、不十分あるいは不適切な記述があった場合にはご容赦願いたい。

画像ビューワー

 DICOM画像を表示し、加えて様々な画像処理もできる最も有名で高性能な製品はOsiriXであろう。 我々の大学でも、かつては多数のMacintoshを設置し学生が自由に使えるDICOMビューワ・画像処理装置として使っていた。しかし、Macintoshが更新されず、当時の古いOsiriXのライセンスでは新しいMac OSに対応しないことから、学生への提供は終了している。現在では医療用として認可されているOsirix MDが主製品であり、そのデモ版として無料で使えるOsiriX Liteがある1)。本稿ではOsiriX Liteについて紹介する。
 OsiriXはApple社のMacitoshでのみ使用できる。DICOMビューワとしての基本的な機能に加えて、様々な画像処理が行える。2D処理では、減算、重ね合わせなど、3D処理ではMPR、Curved-MPR、MIP、Volume Rendering、Surfece Rendering、Vertual Endoscopyなど多くの画像処理が可能である(図1、2)。Version12からはCinematic Renderingも可能になった。しかし、計算量が多いためか画像表示に時間がかかり実用的ではなかった。

図1 OsiriX Liteで作成した3D画像
a Maximum Intensity Projection(MIP)像
b Surfece Rendering像
c Volume Rendering像
d Cinematic Rendering像
図2 OsiriX Liteで作成したEndoscopy像

1. Horos

 OsiriXは初期に無料で使えたが医療機器として認証されると有料化され、ソースコードも非公開となった。公開されていたオープンソースを引き継ぎ開発したものがHorosである。したがって、使い方やデザインはOsirixとほぼ同じである。やや古いMac OSから新しいMac OSまで対応していて、学生の実習や研究用のDICOMビューワ・ワークステーションとして大変重宝している。新しいversionは日本語環境で観察画面が開かないが、設定で日本語を外せば使用できる。3D処理としてはOsiriXとほぼ同じであるが、操作方法や画質が現在のOsiriXとは微妙に異なっている。Cinematic Renderingは本稿の執筆時点では搭載されていないようであった。

2.Clear Canvas

 Clear Canvas(以下CCとする)はカナダ・トロントを拠点としたグループがオープンソースで開発していたDICOMビューワである。2010年頃(正確な年は確認できなかった)に有料化され医療機器としての認証をとったようである。CCは有料化されてからRSNAの機器展示ブースに出展していたので記憶にある読者もあろう。
 本稿で紹介するのは有料化前のバージョン(ClearCanvasWorkstaion2.0以下v2.0)と、最近のオープンソースバージョン(ClearCanvasDICOMviewer13.2以下v13.2)である(図3)。CCはOsiriXやHorosのような高度な画像処理はできないが(MPRは可能)、windowsマシンで稼働し、操作はシンプルで画像表示がスムーズなので、読影のように多くの症例画像を観察する場合に使いやすい。もともと、RISとの連携を意識して開発されているので、DICOM通信機能があり、DICOMサーバから画像取得が可能である。私としては使い勝手の良いwindowsベースのDICOMビューワとしてv2.0を愛用していた。ただし、v2.0は日本語版windowsでは稼働しないので、英語版windowsで使っていた。この不具合については当時の開発者に報告したが、修正されなかった。
 本稿の執筆にあたって久しぶりにCCのウエブサイトを見たら、2020年に開発およびサポートを終了したとのことであった2)。一方でオープンソースによる開発は継続されるようで3)、ダウンロード可能であった。ただし、最終変更が2015年であり、活動は止まっていると思われる。V13.2(32bit版)を日本語版windows 10にインストールしたところ、稼働した。V13.2(64bit版)4)をV2.0と入れ替えて使用テストを行ったところ、問題なく動作した。

図3 Clear Canpas Image Viewer 13.2の画面

画像処理ソフト

 OsiriX Lite、Horosについては前述のように様々な画像処理ができる。処理時間や安定性、扱えるデータ量等の制限を受け入れられれば、臨床画像の観察や加工はこれだけで十分足りる。後述する3Dモデル作成のためのsurface rendering画像も簡単に作成できる。以下にその他の画像処理dソフトを紹介する。

1. ImageJ/Fiji

 画像一般をデータとして様々な処理や計測を行いたい場合には、ImageJが役立つ。FijiはImageJに生物科学でよく使われるプラグインを含めたもので、私はこちらを使っている。DICOM画像を表示したり、タグ情報と呼ばれるメタデータを表示したり取り込んだりできる。プラグインを使って高度な処理も行え、基本的な画像データ処理がベースに
なるので、学生教育用には最適のソフトと言える。マクロを使って複雑な自動処理が可能で、プログ
ラミングの学習にもなる。Javaベースのソフトなので、Windows、macOS、Linuxで動作する。

3D モデル作成のためのソフト

 私は学生教育用の3D printerとしてRAISE 3D Technologies社製N1(図4)を使用している。比較的低価格の割にはしっかりした製品であるが、現在は販売されていない。3Dプリントするにはsurface renderingデータを使用し、3D printerにあわせてプリント用データに変換する。上記製品用にIdeamakerというソフトが無料で入手可能であるが、このプリンタに依存した製品なので、ここでは割愛する。

図4 RAISE 3D Technologies社製N1 3D printer

1. mesh mixer

 surface renderingのデータ編集や、3D printer用のサポート(支柱のようなもの)を追加編集ができるソフトである。積層型の3D printerでは、宙に浮いた構造やせり出した構造を造形する場合には造形物に適切なサポートを追加する必要がある。臨床データ等から作成する複雑なモデルでは適切なサポートが必須である。上記のIdeamakerのような3D printerデータを作成するソフトでもサポートが作成できるが、mesh mixerはサポートの高度な設定や編集ができる。
 私のゼミ学生が作成した骨の3Dプリントモデルを(図5)に示す。このモデルは素材に蓄光性フィラメントを使用している。この素材のCT値は500程度なので、X線で撮影が可能である。

図5 3D printerで作成した骨モデル
蓄光フィラメントを使うことで、X線撮影が可能なモデルになった。

2. Blender

 「3D printerモデルの代わりにリアルな3Dモデルを画面上で表示したい」場合はBlenderがよい。私はcinematic renderingのようなことを自分自身でするために探索してBlenderにたどり着いた。Blenderは医療画像処理というより、3DのComputerGraphicsを作成するソフトでWindows、macOS、Linuxで動作する。GPLライセンスなので無料で安心して使用できる。3Dの静止画のみでなく、3D動画を作ることもできる。モデルの3Dデータを作成し、観察するカメラや照明を設定することで、モデル表面の明るさや影が表現される。3Dモデルの表面反射や透過性を設定でき、ガラスや金属、陶器のような質感を表現することもできる。さらに、発光するモデルも作成できる。単純な図形モデルであればBlender内で作成することができる。CTデータなどからモデルを作る場合には、OsiriXやHoros等でsurfaceデータを作成して取り込むとよい。Blenderを使えば、3Dprinterでは造形しづらい形状や様々な質感を表現できる。反射や影があることで人間の視覚と合致し、対象を認知しやすい。私が作成したモデルの例を(図6)に示す。骨の領域を抽出し、病変部が発光するように設定した。このモデルは一定方向から光をあてた状態で回転させると影が変化し現実に近い表現ができた。動画をyoutube5)にアップロードしたので参照されたい。

図6 Blenderで作成した3Dモデル
自然な影や病変の発光により対象が認知しやすくなった。

まとめ

 無料で使えるソフトであっても、目的にあったものを使用すれば十分に活用できる。しかしながら、開発者にとっては資金的なバックアップが必要で、初期には無料であっても一定のユーザを確保して初期開発終わると、有料化されることがある。日本語の対応にも限界があるようだ。
 臨床用として販売される製品には、一定レベルのサポートが期待でき、IT分野にあまり詳しくないユーザでも使える体制がある。一方、無料ソフトにはこの体制がなく診療目的には勧められない。しかし、臨床目的で市販されているソフトであっても補間処理が低レベルで誤診を誘発するような製品もあるので、市販品であれば問題ないとは言えない。無料ソフトはソフトの動作や提供の継続性が不安定になる可能性があるが、教育や研究目的であれば、基礎から応用まで様々なレベルで自由に使うことができる。
 本稿では私が使っている製品をいくつか紹介した。広く使われていて、読者にも既になじみのある製品もあったと思う。本稿では使用法などの詳細は割愛したが、いずれの製品もインターネットに多くの情報があるので、興味を持った製品については検索することを勧めたい。

<文献>

1) https://www.osirix-viewer.com/osirix/osirix-md/#differences
2) https://clearcanvas.ca
3) http://clearcanvas.github.io
4) https://github.com/ClearCanvas/ClearCanvas/releases/download/v13.2/DicomViewer-13.2.19401.1661-x64.exe
5) https://www.youtube.com/watch?v=WZ5NRJttf8Y