ジョンソン・エンド・ジョンソン、臓器が落ちてくる疾患「骨盤臓器脱」に関する50歳以上女性530名、婦人科開業医100名の調査結果

2011.12.02

骨盤臓器脱を知らない人は63.8%、正しく認知している人は23.2%
婦人科来院患者の約半数が症状を抱えていても骨盤臓器脱の認知なし

骨盤臓器脱を「知らない」人は63.8%、正しく認知している人は23.2%
50歳以上女性への調査結果では、骨盤臓器脱を「よく知っている」と答えたのは3.2%で、「ある程度知っている」は10.6%、「名前は聞いたことがある」は22.5%でした。「知らない」と回答した人は63.8%で、半数以上の人が「骨盤臓器脱」という名前さえ知らないことが明らかになった。次に骨盤臓器脱の症状の認知度について調査したところ、「骨盤の中の臓器が腟の方に出てきてしまう病気」であると、疾患を正しく理解していたのは「知っている」と回答した192人のうちでも64.1%で、全調査対象者の23.2%に留まる結果となった。

骨盤臓器脱を正しく認知している人のうち「症状を有している/有していた」人は7.3%
骨盤臓器脱を正しく理解していた123人のうち、「骨盤臓器脱の症状を有している/有していた」人は7.3%で、最も多く挙げられた症状は、「腟の中から臓器が出てくる」が約9割を占め、「股に何か挟まっている異物感がある」(44.4%)、「尿が出にくい」(44.4%)と続いた。

来院患者の約5割が症状を抱えていても、骨盤臓器脱という病気であることを認知していない
婦人科開業医への調査結果では、骨盤臓器脱患者の診療を行う最も多いケースは「患者が骨盤臓器脱の症状を有し、骨盤臓器脱であると訴え、自ら来院してきた」が50.0%、「患者が骨盤臓器脱の症状を有し、どのような疾患か知らなかったが、自ら来院してきた」が44.0%、「骨盤臓器脱以外の主訴で来院した患者に骨盤臓器脱の症状が認められた」が3.0%で、約5割の患者は症状を抱えていても、疾患について知識がないまま来院していることが明らかになった。

受診が遅れる理由は、「恥ずかしい」が約9割、疾患に対する「知識不足」が約5割
婦人科開業医への調査結果では、患者が来院するまで1年以上かかっているケースが32.0%見受けられ、受診が遅れる理由としては、「下の病気で恥ずかしいと思っていたから」(89.0%)と、患者が躊躇するケースもさることながら、「老化現象であり病気だと思っていなかったから」(35.0%)や、「治療できると思っていなかったから」(28.0%)など、疾患の知識不足から受診が遅れるケースが約5割あることがわかった。

婦人科開業医の約8割が「骨盤臓器脱に関する一般向けの情報不足」を課題と感じている
婦人科開業医に骨盤臓器脱の治療に関わる課題を聞いたところ、「この疾患に関する一般向けの情報が不足している」が81.0%と最も多く、「この疾患の専門的な医師が少ない」(49.0%)、「この疾患に関わる診療報酬が低い」(31.0%)が続いた。

・日本医科大学産婦人科学教授の明楽重夫氏のコメント。
「骨盤臓器脱は決して新しい病気ではなく、以前からある病気ですが、その認知度の低さと、下の病気であるという恥ずかしさから受診が遅れることが多いと推測されてきました。今回の調査では、それに加え、老化現象だと諦めてしまっている、治療できることを知らない、などの理由で受診が遅れるケースも少なくないことが明らかになりました。骨盤臓器脱のような高齢女性特有の病気に悩む患者さんは増えていくことが予想され、産婦人科医として、今後はより真剣に取り組むべき疾患のひとつであると考えています」。

・泉北藤井病院ウロギネセンター長兼梅田ガーデンシティ女性クリニック女性泌尿器科ウロギネセンター長の竹山政美氏のコメント。
「今回の調査では、骨盤臓器脱について正しく認知をしていたのは、2割程度ということでしたが、医師の立場からも、骨盤臓器脱や尿もれは、患者さんに対する情報提供活動がまだまだ足りていない病気であると実感しています。骨盤臓器脱も尿もれも、まれな病気ではありません。専門的な治療に取り組んでいる医師に相談することで、多くの場合、有効な治療方法が見つかります。そのためには患者さんや一般市民に向けた啓発活動が大変重要だと考えています」。

骨盤臓器脱とは、女性の骨盤の中にある子宮、膀胱、直腸、腟などを支える骨盤底の筋肉や靱帯の力が低下することで、臓器が本来の位置より下がり、場合によっては腟の外に出てきてしまう疾患である。出産や肥満に伴い、骨盤底にかかる負担や、加齢に伴う筋肉量の減少、閉経後の女性ホルモンの減少による骨盤底の支持力の低下などが原因として挙げられている。下腹部から腟にかけての違和感や、排尿や排便のトラブルなどの症状が現れ、QOL(Quality of Life)を著しく下げる疾患である。アメリカでは女性の10人に1人が生涯のうちに骨盤臓器脱か尿失禁の手術リスクがあると言われ*1、スウェーデンの調査では20~59歳の女性の31%、出産経験者の44%が骨盤臓器脱であるという報告がある*2が、日本では骨盤臓器脱の患者数や受診状況について、調査や統計がないとのことである。

*1 Olsen AL, et al; Obstet Gynecol 89 501-506 1997
*2 Samuelsson, et al; Am J Obstet Gynecol 180, 1999

■主な調査結果の詳細
●調査概要
・調査対象者:50代~70代の女性530名 (50代167名、60代213名、70代150名/平均63.1歳)婦人科開業医100名 (床数19床未満で、年間1人以上骨盤臓器脱患者を診ている医師)
・実施時期:2011年11月
・調査地域:全国
・調査方法:50歳以上女性:FAX調査((社)日本能率協会に登録されているパネルから対象者を抽出)
婦人科開業医:インターネット調査((株)マクロミルに登録されているパネルから対象者を抽出)

■参考資料
・骨盤臓器脱とは?
骨盤は、底の開いたお椀のような形をしている。その中に、尿道、膀胱、腟、子宮、直腸が存在しており、これらを骨盤臓器と呼ぶ。骨盤臓器は互いにバランスを取り合い、周りの筋肉、筋膜、靱帯などに支えられながら、骨盤内に位置している。このバランスが崩れたり、周りの支える力が弱くなると、骨盤臓器が腟壁を押し出し腟の出口の方へ下がってくる。ひどくなると体外にでてくることもある。これが、骨盤臓器脱である。
・骨盤臓器脱の種類
骨盤臓器脱は、膀胱瘤や直腸瘤などの総称で、同時に複数の臓器が下がってくることもある。米国のデータによると、骨盤臓器脱では膀胱瘤が一番多く現れると言われている。また、二つ以上の種類の併発を含めると、膀胱瘤82.3%、直腸瘤45.6%、子宮脱37.0%の順に多くみられる*3。
・骨盤臓器脱の要因
骨盤臓器脱は骨盤を支える力が低下することで起こりますが、そのきっかけには様々な要因が考えられる。
出産:出産に伴い骨盤底にかかる負担が大きくなる。
加齢:人の筋肉量は加齢とともに減少する。
肥満:体重や内臓脂肪が増えると骨盤底に負担がかかる。
閉経後の女性ホルモンの減少:閉経で女性ホルモンが減少すると、骨盤底の支持力が弱くなる。
激しい運動や重労働:長時間立ちっぱなしの仕事や農作業は骨盤底に負担となる。
長引く便秘:トイレでふんばると骨盤底に負担がかかる。
慢性的な咳(ぜん息など):長引く咳により骨盤底に負担がかかる。
・骨盤臓器脱の治療方法
症状がそれほどひどくなく、肥満ぎみの人や便秘が続く人は、食事や運動などの生活習慣を見直すことから始める。治療法は、症状の程度や年齢、ライフスタイルに合わせて選択する。
骨盤底筋体操:治療予防効果が期待できるのは病気の初期に限られるが、体操は予防としても有効である。緩んでしまった骨盤の筋肉をきたえる体操で、座ったり立ったり、様々な姿勢で行うことができる。
ペッサリー:ペッサリーとはポリ塩化ビニール製の直径5~10cmのリング状の装具である。腟内に入れて下がってきた臓器を支える。この治療法は、手術を希望しない人や手術のリスクが高い人、妊娠予定の人に向いている。
薬物療法:現在は骨盤臓器脱そのものを治療する薬はない。女性ホルモン薬は腟の血流をよくして、乾燥や痛みを和らげる効果がある。
手術:骨盤臓器脱を根本的に治療するためには、手術が必要である。手術には、子宮の摘出(子宮脱のみ)、腟壁の縫縮、メッシュを使用した手術、腟の閉鎖など、いくつかの方法があり、患者の年齢や体力、下がってきた臓器の種類や程度によって、医師と相談しながらその方法を決めていく。
*3 Olsen AL, et al; Obstet Gynecol 89 501-506 1997

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