エレクタ株式会社、がん患者の10人に1人が発症する“脳転移”治療 最前線に関するセミナーを開催

2018.02.13
Dheerendra Prasad氏
中川恵一氏
日本人の場合、EGFR変異が脳転移の原因として重要。
 エレクタ株式会社は、2月7日(水)、トラストシティカンファレンス・丸の内(東京都千代田区)にてがん患者の10人に1人が発症する“脳転移”治療 最前線に関するプレスセミナーを開催した。
 まずDheerendra Prasad氏(ニューヨーク州立大学バッファロー校医学部)が定位放射線治療機器「ガンマナイフ ICON」による治療について講演した。ICONによる治療は、従来は頭部を金属のフレームとピンで固定していたが、同製品による治療では、マスクで固定して行うことで患者負担が軽減された。また病巣に正確に放射線を照射すること、1回だけでなく複数回照射することが可能になり、患者の状態に合わせた治療が可能になった。これにより患者の生存率が飛躍的に伸びたと報告した。
 つづいて「脳転移をめぐるパラダイムシフト」と題し、中川恵一氏(東京大学医学部附属病院)が講演を行った。欧米人と比べて日本人の場合、EGFR変異が脳転移の原因として重要である。転移性脳腫瘍が発症した場合の患者の生存率は約3か月程度であった。そしてその治療としてこれまで一般的であった全能照射(WBRT)は、転移は抑えられるが延命効果を示さないこと、認知機能低下をもたらすことが分かっている。日本肺癌学会のガイドライン2017年版では、「手術や定位放射線治療に全脳照射の併用を行わないことを勧める。」としており、全脳照射の役割がなくなりつつある。
 一方、ガンマナイフによる定位放射線治療による生存率は転移数1では13.9か月と伸びた。しかし転移数が2~4と5~10では、生存率の差は少なくそれぞれ10.8か月となっている。また、EGFR-TKI(分子標的薬)を用いた治療では5年以上生存するケースもあり、これまでの常識を大きく変え、「転移」=「死」ではなくなってきている。
 これらのことにより、現時点での転移性脳腫瘍の治療は、定位放射線治療ののちEGFR-TKIを投与することが最善だといえると解説した。