【RSNA 2012 On-Site Report!】「朝早くから、乳腺MRの是非の討論」久保田一徳先生(東京医科歯科大学医学部附属病院)

RSNA2012 Report:RSNAからの宅急便
2012.11.28

久保田一徳先生(東京医科歯科大学医学部附属病院)より、現地レポートをいただきました!
 
RSNA 2012 On-Site Report! 「朝早くから、乳腺MRの是非の討論」
東京医科歯科大学医学部附属病院
久保田一徳

  
 ホテルから朝6:38発のバスに乗り、ミシガン湖から昇る日の出を見つつ、朝7:15からのspecial courseに参加した。タイトルは、Controversy session: Preoperative Breast MR Imaging: Pros and Cons、要するに乳癌術前のMRIは必要か、不要かということ。MRIでの広がり診断は頻繁に行われているものの、実際のoutcomeについての有用性報告は少なく、そもそもMRIをやることで乳房切除術が増加していることも危惧されているに関して、容認派であるワシントン大学の放射線科医であるConstance Lehman先生と、否定派として有名なMemorial Sloan-Kettering Cancer Centerの外科医であるMonica Morrow先生の対決が行われた。放射線科医の集まりなので、Morrow先生がアウェーと言ったところか……。どちらも、これまでのstudyなどを踏まえての発表を行い、討論を行った。
 
 Lehman先生は、断端陽性率や再手術率・乳房切除率などは多様な因子に基づくため一概にどうこう言えず、各々の施設での成績をもとに患者に情報提供を行った上で決定していくべきとの意見だったと思う。もちろん、精度管理なども踏まえて。Morrow先生は、多くのエビデンスを並べて説明し、現在の乳癌罹患が減っている状況や、intrinsic subtype別に見てもそれぞれ薬物療法などのおかげで再発率が下がっていることをあわせて説明された。研究的な、トライアルとしての施行については今後も行うことを否定しないものの、現段階でのエビデンスではMRIはやるべきでないとしていた。
 
 どちらの勝ちとか、結論を一つにまとめることはなかなかできないところだとは思うが、「検査をすることで不利益を被ることがある」ことについてはわれわれも十分に認識した上で、冷静に検査の意義を考え、検査を行うのであれば十分な精度を保って質の高い診断を行わなければならないと思った。
 
 朝早いにも関わらず、ほぼ満員に近い状況で多くの聴衆が参加されており、各国の診断医が注目しているところなのがよくわかった。今年からは、RSNAでファンラン(マラソン)も開始されたようで、そちらは朝6:30からだったようなのでもっと早起きだったのだろうけど(来年は参加しようかな)。
 

会場からみたミシガン湖と朝日