富士通、高齢化社会に対応した持続的で柔軟な地域医療提供の実現に向けて、津田塾大学とソーシャルデザインの共同研究を開始

2022.08.25

 富士通株式会社(本社 東京都港区、代表取締役社長 時田 隆仁)(以下、富士通)と津田塾大学(所在地 東京都小平市・渋谷区、学長 髙橋 裕子)は、AIなどのデジタル技術と実証経済学などの人文社会科学の知見を融合したコンバージングテクノロジーにより、限られた社会資源で質の高い医療や健康サービスを提供できる体制の実現に向けて、患者へのサービスの質の向上と地域におけるサービス提供の効率化の両立を目指すソーシャルデザインの共同研究を2022年8月25日より開始することを発表した。

 地域全体で、疾病予防や治療、予後などの各段階に応じて患者が受ける医療や健康サービスの流れ(ケアパスウェイ)をデジタル化し、津田塾大学の実証経済学の知見に基づき、医療・健康データから患者の状態を予測する富士通のAIを用いてケアパスウェイを分析。これにより、医療提供体制の偏りや入院の長期化といったボトルネックを抽出し改善案を探索するケアパスウェイ設計技術を富士通が開発する。本技術を活用し両者は、医療機関や自治体の協力の下、患者や自治体、サービス提供者への改善提案や、改善案の社会実装に向けた合意を形成するための方法論の確立を目指す。

 両者は、本共同研究のもと、地域完結型医療の構築が進められている山形県(知事 吉村 美栄子)の医療・健康データを用いて検証し、将来的にその成果を山形県などの地域医療提供において適用することで、有効性の検証を目指す。

背景と課題

 近年、日本では高齢化率(65歳以上人口の割合)が28.6%(出典:2020年国勢調査)に達している。世界の多くの国々でも高齢化が進む中で、限られた社会資源を効率的に用いて、医療や介護の質を維持できる持続的なサービス提供体制の構築が、グローバルな社会課題となっている。

 しかし、疾病予防や治療、予後などの医療・健康サービスは現在、個別に提供されており、患者の状態や状況に応じて各サービスが全体最適で連携できておらず、例えば、患者が転院時などに医療・健康サービスの全体の流れが見通せずに安心感がないことが課題となっている。また、医療や健康サービスの質を向上しようとすると、多くの社会資源が必要となり、サービス提供の効率が低下するというトレードオフの関係も大きな課題となっている。

 これらの課題解決に向けて、AIによる患者の状態予測や公正な割り当てを導き出すマッチングなどの富士通が培ってきたデジタル技術と、津田塾大学の病床減と都市空間の再編による健康イノベーションなどの実証経済学の観点での研究における知見を融合させ、高齢化社会に対応した持続的で柔軟な地域医療提供の実現に向けたソーシャルデザインの共同研究を開始した。

共同研究について

1. 期間:

2022年8月25日~2023年3月31日(2023年4月1日以降も継続予定)

2. 研究概要:

 医療機関や自治体が定めた標準的な提供体制や手順に基づいて、患者が受ける医療・健康サービスの流れ(ケアパスウェイ)を、レセプト情報などの過去の患者の医療・健康データとともに地域全体で分析することで、地域の医療提供体制の偏りや入院の長期化といったボトルネックを抽出。

 ボトルネックの抽出については、津田塾大学がこれまで培ってきた実証経済学の知見と、医療・健康のデータからケアパスウェイにおける患者の状態を予測する富士通のAIを組み合わせて、問題箇所を分析。

 抽出したボトルネックを改善するために、患者へのサービスの質の向上と地域全体でのサービス提供の効率化の両立を目指し、地域における患者や自治体、サービス提供者の観点で課題を解決可能な医療・健康サービスの提供体制・手順の改善案を設計するケアパスウェイ設計技術を開発。

 医療・健康サービスの提供体制・手順の改善案の社会実装に向けて、医療機関や自治体の協力の下、実証経済学に基づく解決的な提案を通じて、合意形成を構築するための方法論の確立を目指す。

図. 共同研究で開発する技術を活用したソーシャルデザインの医療・健康サービスへの適用イメージ
図. 共同研究で開発する技術を活用したソーシャルデザインの医療・健康サービスへの適用イメージ

3. 両者の役割:

富士通

  • 患者一人ひとりのケアパスウェイを地域全体で一元的に可視化・分析し、ボトルネックを抽出
  • 医療・健康データに基づきケアパスウェイの改善案を設計する技術の開発

津田塾大学

  • 医療・健康データに基づく身体機能や費用対効果などの疾患や医療に関する指標の可視化
  • 地域の医療提供体制に関わる政策の提示と合意形成に向けた議論の場の設定
  • 医療(病床)の規模縮小と治療効果の改善を両立する方法論の検討

今後について

 両者は本共同研究のもとで、国立大学法人山形大学(本部 山形県山形市、学長 玉手 英利)などと連携し、地域完結型医療の構築が進められている山形県における入院記録や外来診療記録などの医療・健康データでの検証を実施する。その後、本共同研究の成果を山形県などの地域医療提供において適用することで、有効性の検証を目指していく。

 富士通は、生活者と医療機関や企業、行政をつなげ、生活者が中心となる社会と産業の再構築に向けて、本共同研究で開発する持続的で柔軟性の高いケアパスウェイ設計技術を2024年度中に実用化するとともに、現場実証を通じて、グローバルな医療および健康サービスの提供現場への幅広い展開を目指している。今後も富士通は、サステナブルな世界の実現を目指す「Fujitsu Uvance」のもと、あらゆる人のライフエクスペリエンスを最大化する「Healthy Living」の取り組みを進めていく予定だ。

お問い合わせ先

富士通株式会社

研究本部 コンバージングテクノロジー研究所

E-mail:contact-social_design-pr@cs.jp.fujitsu.com

URL:https://www.fujitsu.com/jp/about/corporate/

津田塾大学

総合政策学部 教授 伊藤由希子

E-mail:yuki110@tsuda.ac.jp

URL:https://www.tsuda.ac.jp/