アボット、卵円孔開存(PFO)患者の脳梗塞再発リスク低減を目的とするAMPLATZERTM PFOオクルーダーの製造販売承認を取得

2019.06.06

 2019年6月6日、アボットメディカルジャパン(株)(以下、アボット)は、脳梗塞の原因となる可能性のある心臓の卵円孔開存(Patent Foramen Oval、以下PFO)の閉鎖を目的とする経皮的カテーテルPFO閉鎖機器である「AMPLATZERTM PFOオクルーダー」の製造販売承認を、2019年5月28日に取得した。当製品は2016年に米国で承認され、日本で初めて承認を取得したPFO閉鎖デバイスである。

 酸素を多く含んだ血液を送るために、心臓の左右の心房の間の心房中隔に胎児期に開いている卵円孔は、胎児循環器系の発達において重要な役割を果たす。生後は閉じるが、約25%が閉じずに開存していると考えられている※1。通常は症状もなく、治療の必要もないとされているが、まれに卵円孔が閉じずに開存しているために右心房から左心房に血液が直接流れ込み、危険な血栓が卵円孔を通過し脳に達することで脳梗塞や一過性脳虚血発作の原因となりうると考えられている。

 「AMPLATZER PFOオクルーダー」は、PFOが関与したと考えられる脳梗塞の再発予防として、カテーテルを通して心臓内に留置され、PFOを閉鎖することで、血栓が孔を通過し脳にまで達し脳梗塞を再発するリスクを低減する、低侵襲の人工心膜用補綴材である。当製品が承認された国では、卵円孔閉鎖術では患者は、意識下鎮静法を用いて1時間以内に完了し、24時間以内の退院が可能となる。

 東京慈恵会医科大学神経内科の井口保之教授は次のように述べる。
 「今回の承認は、脳卒中医がPFOが原因である可能性を精査し、循環器内科医が安全に治療することで、原因不明の脳卒中を経験し再発リスクに直面している日本の患者さんにとって新たな重要な治療オプションとなります」
 当製品の承認根拠となった、米国で行われ、New England Journal of Medicineにも2017年に掲載されたPFO閉鎖試験であるRESPECT試験では、当製品はPFOを有する脳卒中患者の再発リスクを有意に低減した。この1,000人近くの患者を対象とした無作為化比較対照試験において、当製品により、脳梗塞の再発リスクを標準薬物療法と比較して45%低減した※2。また、当製品は、特発性脳梗塞として知られる原因不明の脳梗塞の再発リスクを62%低減(p=0.007)した※2。特発性脳梗塞患者の40~50%にPFOが認められた※2

 岡山大学循環器内科の赤木禎治准教授は、次のように述べる。
 「本手技の対象患者さんは比較的若く、実際RESPECT試験においても平均年齢は45歳と、生産年齢人口の脳梗塞の再発を予防する社会的意義の高い手技だと考えています」

 アボットのストラクチュラルハート事業部ゼネラル・マネージャーのダン・シルバー氏は次のように述べる。
 「AMPLATZER PFOオクルーダーは日本で初めてのPFO閉鎖デバイスであるだけでなく、全世界で確かな実績のあるデバイスです。低侵襲の本製品により、PFOに起因する脳梗塞の再発リスクを抱える患者さんが、毎日のように薬剤を服用することなく、かつリスクを低減して、健康で不安のない生活に戻ることができます」

AMPLATZER PFOオクルーダーについて
 AMPLATZER PFOオクルーダーは、2016年10月に米国食品医薬品局(FDA)によって承認され、PFO患者における潜因性脳虚血発作のリスクを低減することが示された装置である。

「AMPLATZER PFOオクルーダー」(承認番号:30100BZX00024000)

脳梗塞について
 脳梗塞は全脳卒中の8割程度を占め、脳に血液を供給する動脈の閉塞または狭窄によって引き起こされ、脳血管の血流が大幅に減少して虚血状態となり、脳細胞を損傷する恐れがある。脳梗塞は様々な原因で起こる可能性があるが、脳梗塞を引き起こす閉塞は血栓が原因であることが多く、PFOを有する患者では、その血栓が静脈から心臓内のPFOを通って左心房へ移動し、そこから脳を含む全身に送られてしまう可能性がある。そこで、脳卒中医は、患者がPFOを有しているか、また他の脳梗塞の原因があるか、など主に超音波装置などを用いて検査を行い、原因を精査する。

RESPECT試験について
 RESPECT試験は2003年に開始された多施設共同非盲検無作為化比較対照臨床試験であり、米国およびカナダの69施設980名の患者が組み込まれた。18歳から60歳の特発性脳梗塞の既往があるPFO患者が、AMPLATZER PFOオクルーダー(499名)もしくは薬物療法(アスピリン、ワーファリン、クロピドグレルまたはアスピリンと徐放性ジピリダモールの併用のいずれか、481名)のどちらかに割り付けられ、中央値5-9年にわたって追跡調査された。主要評価項目は非致死性脳梗塞の再発、致死性脳梗塞または早期死亡だった。

※1 Homma S et al: Patent foramen ovale and stroke. Circulation 2005;112:1063-1072, 2005
※2 Long-Term Outcomes of Patent Foramen Ovale Closure or Medical Therapy after Stroke. N Engl J Med 377:1022-1032, 2017

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アボットジャパン株式会社 パブリックアフェアーズ
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