【富士フイルム】AIプラットフォーム「SYNAPSE SAI viewer(シナプス サイ ビューワ)」新開発

2019.04.04

富士フイルム株式会社(社長:助野 健児)は、当社の医用画像情報システム(PACS)「SYNAPSE(シナプス)」上で、CT画像からの臓器自動抽出や骨の経時変化表示など、人工知能(AI)技術を活用した画像診断ワークフロー支援を実現するAIプラットフォーム「SYNAPSE SAI viewer(シナプス サイ ビューワ)」(*1)を開発した。
なお、本年7月の発売(予定)に先駆けて、4月12日~14日にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催される「2019国際医用画像総合展(ITEM2019)」に本システムを出展する。

日本は諸外国と比べて、人口に対する医療機関のCT、MRI導入数が多くモダリティーが充実している一方、画像診断の専門医の人数が少ないのが現状だ(*2)。また多列CTなど高性能な画像診断装置の普及によって読影する画像が増えており、医師の効率的な画像診断を支援するAI技術を活用したソリューションへの期待が高まっている。

今回開発した「SYNAPSE SAI viewer は富士フイルムのPACS「SYNAPSE5」と接続して使用するもので、AI技術を活用して自社開発した以下3つの画像診断ワークフロー支援機能を搭載している。7月の発売以降も、「SYNAPSE SAI viewer」で利用可能な新たな機能を継続的に開発し、追加アプリケーションとして提供していく予定だ。また、パートナー企業のアプリケーションも追加で提供していく。

<本年 7 月発売時点の「SYNAPSE SAI viewer」の画像診断ワークフロー支援機能

① 臓器抽出機能およびラベリング機能
・CT 画像から肝臓・腎臓・脾臓などの臓器構造を自動で抽出。個人差により形状が異なる臓器も自動で抽出することができる。
・頸椎、胸椎、腰椎、肋骨を各々自動抽出し、医師が疾患の場所などを指し示す際に引用する「骨番号」を自動的に付与し、CT 画像の上に重ねて表示する。これにより、骨が見分けにくい画像での番号の振り間違いを抑制するとともに、医師の作業負荷を軽減する。

② 骨経時サブトラクション機能
同一患者において、過去に撮影したCT画像と現在のCT画像の骨構造の位置合わせを行い、CT値(*3)の変化を経時的に可視化することができる。

③ Virtual Thin Slice(バーチャル シン スライス)機能
一般的な読影に使用されるスライス厚5mm程度のCT画像「Thin スライス」から、スライス厚1㎜程度のCT画像「Thin スライス」を仮想的に生成する。仮想的に生成したThin スライスを活用することで、CT画像を再構成して作成するサジタル像(体を縦に切った像)とコロナル像(前後に切った像)において、骨の視認性を高めたり3D表示の画質を向上させる。

さらに、「SYNAPSE SAI viewer」は、高速で3D画像の回転・拡大・縮小などの操作ができる。これにより画像診断における診断効率の向上と医師のストレス軽減に貢献する。

富士フイルムは、医療画像診断支援、医療現場のワークフロー支援そして医療機器の保守サービスに活用できるAI技術の開発を進め、これらの領域で活用できるAI技術を「REiLI(レイリ)」というブランド名称で展開する。今回発表の「SYNAPSE SAI viewer」は本ブランドを使用する。
さらに当社は、自社での AI 技術開発に加えて、優れたAI技術を有する国内外のベンダーとのパートナーシップによる開発を推進する。今後もAI技術を活用することで画像診断における医師の診断支援やワークフローの改善に取り組んでいく。

*1:「SYNAPSE SAI viewer」の画像診断ワークフロー支援機能の開発には、AI技術(ディープラーニング)を活用。導入後に自動的にシステムの性能や精度が変化することはない。「SAI」は、Smart Advanced Imagingの略。
*2:経済開発協力機構の主要統計より(https://www.oecd.org/tokyo/statistics/#Health)
*3:CT検査において、被写体の中の小さな単位容積内における物質のX線吸収値。CT値が高い部分は、硬い状態であることを意味する。

1. システム名称
SYNAPSE SAI viewer
販売名:画像診断ワークステーション用プログラム FS-V686型
認証番号:231ABBZX00028000 号

SYNAPSE SAI viewer 用画像処理プログラム
販売名:画像処理プログラム FS-AI683型
認証番号:231ABBZX00029000 号

2.発売時期
2019 年 7 月予定

3.特長
(1)AI 技術を活用した様々な画像診断ワークフロー支援機能が利用可能。
1臓器抽出機能およびラベリング機能

AおよびBの緑色の領域は、それぞれCT画像から肝臓と肺を抽出したものである。本機能は、個人差により形状が異なる臓器も自動で抽出することができる。

2骨経時サブトラクション機能

骨経時サブトラクション機能は、過去に撮影したCT画像と現在のCT画像の骨構造の位置合わせを行い経時的変化を可視化する。
現在画像と過去画像との差分を赤く塗りつぶして、表示する(左の画像の第10胸椎(骨番号:T10))。
さらに、本来であれば、医師が骨番号を付与しなければならないが、ラベリング機能を活用することで胸椎(Thoracic)に対して、骨番号(赤丸部分。左の画像では、T5~T12)を自動的に付与し、CT画像の上に重ねて表示することができる。

3Virtual Thin Slice(バーチャル シン スライス)機能

5mm程度のThickスライス画像から3D画像を再構成すると、画像Aの赤い破線部分のようにぼやけてしまうことがある。
「SYNAPSE SAI viewer」では、Thickスライス画像からスライス厚1㎜程度のThinスライス画像を仮想的に生成可能。
これを活用して3D画像を再構成することで、画像Bの赤い破線部分のように骨の視認性を高めることができる。

(2)富士フイルムの3次元画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」で開発されたVR※4や MPR※5といった3D表示機能を搭載。GPU※6を用いたレンダリングによって滑らかな操作を実現。

(3)富士フイルムの放射線画像診断に特化したエキスパートビューワ「SYNAPSE EX-V(シナプス イーエックス ブイ)」同様に、自由度の高いカスタマイズ性を備え、複数検査の比較表示など画像診断ワークフロー支援機能を豊富に搭載。

(4)過去の検査画像において計測した部位と、現在の検査画像の該当箇所を自動で認識し、その位置合わせをする計測・トラッキング機能を搭載。

※4 Volume Rendering の略。3次元画像の表示手法の一つ。陰影をもたせた立体情報として表示し、血管走行などを連続的に把握するこことができる。
※5 multi-planar reconstruction の略。多断面再構成像。アキシャル(横断)画像からコロナル(冠状断)画像やサジタル(矢状断)画像
など任意断面の画像を生成することが可能。病変の形状や位置関係を様々な方向から把握することができる。
※6 Graphics Processing Unit の略。リアルタイム画像処理に特化した画像処理装置。

【システム構成図】
「SYNAPSE SAI viewer」のシステムは、SYNAPSEサーバ、SAIビューワサーバ、画像処理サーバ(SAI Viewer用画像処理プログラム)にクライアント端末を接続して使用する。
さらに、統合検査レポート管理システム「SYNAPSE Result Manager」※7と連携させることで、Result Managerで選択したレポートのサムネイルを「SYNAPSE SAI viewer」と連動して表示させたり、「SYNAPSE SAI viewer」上の画像をワンクリックでレポートに貼り付けることができる。

※7 富士フイルムの統合検査レポート管理システム。レポート記入のワークフロー全体を支援。読影・診断レポート作成の大幅な効率化に貢献する。

●お問い合わせ先
富士フイルム株式会社
https://fujifilm.jp