カナダがん協会、カナダ・トロントの研究者グループが三次元すいがん細胞の培養に成功したと発表

2012.08.14

微細な三次元モデルで、すい臓がんの増殖メカニズムの解明へ向け前進

 カナダがん協会(Canadian Cancer Society、オンタリオ州トロント)は、トロントの研究者グループが、微細なすい管の三次元生体組織モデルを作成に成功したと発表した。この三次元生体組織モデルにより、がんと診断されてから5年以内の生存率が約6%程度ときわめて低い、すい臓がんの発見と治療に新たな方法がもたらされる可能性がある。すい管はインスリンやその他の分泌液が通る管で、いくつか種類のあるすい臓がんの中でも最も腫瘍が現れやすい場所である。
 すい臓がんは手遅れとなり治療の施しようのない段階になるまで兆候がほとんど現れないため、患者の予後は余りよくない。また、侵襲性がきわめて強く、他のどの種類のがんよりも転移が早いという特徴がある。研究者の間でも、発がんの原因はほとんど知られず、がんの中でも研究予算や研究件数が最も少ないままになっているがんの一つである。

 トロントのプリンセス・マーガレット病院の研究者、Senthil Muthuswamy氏は、カナダがん協会からの研究助成金「Innovation Grant」から20 万カナダドル(約1,580 万円)を受け、すい管の三次元生体モデルを作成した。今後、すい管の深部でがんが増殖するメカニズムの謎の解明に取り組んでいくという。同氏が率いるマーガレット病院の研究チームが、ペトリ皿で培養された何千もの微細な三次元生体モデルを活用して、遺伝子操作を行い、すい臓におけるがん形成の誘因となる現象を再現する。研究グループは遺伝子、ホルモンや他の作用因子を加えて、細胞ががん組織に変化する原因を調べる。患者の体内では、このような病変が急速に末期のすい臓がんへと進行してしまう。
 同氏は、「がんの生物学的研究では、通常、ペトリ皿の中で、芝生のような平面状の細胞層を培養して研究しますが、人体の細胞はそのような状態で存在していません。立体的な管や血管として存在しているのです。ですから、平面状の細胞層でがんを研究していては、すべての正確な疑問を投げかけることはできません。これに対して、三次元モデルは、より現実的で、人体の実際の状態にかなり近づけることができます」と、述べている。

 同氏が率いる研究チームは、今後、三次元モデルを用いて、すい臓がんのさまざまな段階を観察していく。同氏は、この研究により、心臓疾患のリスクの高さを示す高コレステロール値のような、すい臓がんの早期発見と診断に役立つ新たなバイオマーカーの特定につながることを期待している。同氏は「研究チームは、今回のインパクトのある研究成果に沸き立っています。新たにバイオマーカーとすい臓がんの治療法を特定する準備が整い、新局面に入ることができます」と、述べている。

 カナダがん協会の研究所長、Mary Argent-Katwala博士は、「すい臓がんは最も研究不足で死亡率が高いがんの一つであり、研究の必要性は非常に高いです。当協会は、Muthuswamy 博士の研究に意欲的に資金を提供しています。博士の研究は、すい臓がんの増殖メカニズムを解明し、早期診断、およびより効果的な治療につながる貴重な情報を提供してくれるからです。さらに、今回の画期的な新モデルは、すい臓がんを研究する世界中の研究者にも役立つことでしょう」と、述べている。
 2012年に、カナダですい臓がんと診断された人の数は4,600名、また、すい臓がんによる死亡者数は4,300 人と推計されている。

●お問い合わせ
カナダ・オンタリオ州政府経済開発革新省日本広報窓口
(株)トークス
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