日本メドトロニック、インスリンポンプ「ミニメドTM 780Gシステム」リアルタイムCGM「ガーディアンTM 4スマートCGMシステム」を発売― 較正不要のAIDにより、さらに糖尿病患者さんの生活に合わせたインスリン治療へ―

2023.11.28

 日本メドトロニック株式会社(本社:東京都港区)は、日本初、基礎インスリンと補正インスリン両方の自動インスリン注入(AID)機能を持つ「アドバンス ハイブリッドクローズドループ(Advanced Hybrid Closed Loop:以下、AHCL )」テクノロジーを搭載したインスリンポンプ「ミニメド™️780Gシステム」の製造販売承認を2023年2月24日に取得し、11月27日より販売を順次開始。また、血糖自己測定の回数をこれまでより減らしてご使用いただけるリアルタイムCGM(持続グルコースモニタ)「ガーディアン™️4スマートCGMシステム」も近日販売を開始する。

 AHCLの登場により、さらに自動化されたインスリン注入が実現され、日々の血糖管理に負担を感じている方へ新たな選択肢が追加される。日本メドトロニックでは、糖尿病と生きる患者さんが、「もっと楽に、もっと私らしく」活き活きとした毎日を送るために、様々なソリューションの提供を通じて、パーソナライズ医療の実現を目指していく。

(左)「ミニメド™️780Gシステム」(販売名:メドトロニック ミニメド 700シリーズ 医療機器承認番号:30300BZX00256000)

(右)「ガーディアン™️4スマートCGMシステム」(販売名:メドトロニック ガーディアン コネクト  医療機器承認番号:22900BZX00321000)

糖尿病患者さんをめぐる背景や課題

 国内の1型糖尿病患者数は約9万2千人であるとの報告があり、特に1型糖尿病の場合は若年発症の割合が高く罹病期間が長い傾向があるため、生涯を通じて最適な治療法を選択しながら血糖を管理することが重要である。

 しかし、日々の体調や運動量、心理状況、多様な食事パターンなど、様々な血糖変動の要因を考慮しながら、常に最適なインスリン量を考えて投与することは、患者さんにとって非常に大きな毎日の負担になる。その結果、やむを得ずインスリン治療に合わせて食事や運動のタイミングや量を調整せざるを得ない場面もあり、これらの制約が生活の自由度を妨げることから、身体的・心理的な負担と感じる方も少なくないと言われている。

ミニメド™️780Gシステムについて

 今回発売したミニメド™️780Gシステムに搭載されたAHCLは、従来モデル(ミニメド™️770Gシステム)に搭載されていたHCL(ハイブリッドクローズドループ)の基礎インスリン自動調整機能に加え、新たに補正インスリンの自動投与機能が付加される。様々な要因により、血糖が上昇したときに必要となる補正インスリンを、連動するCGMの値に応じてインスリンポンプが自動で計算し、注入。これにより、HCLだけでは十分に抑制できていなかった高血糖の予防・抑制が期待される。また、ミニメド™️780Gは、ガーディアン4トランスミッタ、ガーディアン4センサと組み合わせて使用するが、1日に3~4回行ってきた定期的な較正を行う必要がなく、血糖測定に伴う穿刺の頻度を減らすことが出来る。

 患者さんは高血糖に対し3回に1回は補正せず、2回に1回は補正インスリンの計算間違いが起こっているという海外の報告もある。このたび、新たに補正インスリンを自動投与する機能が追加されたことにより、インスリンポンプでの自動調整がされ、より患者さんにとって負担なく、高血糖イベントに対応することが可能となる。

 また、従来のスマートフォンアプリとの連動に加え、Apple Watchにも対応。CGMの値やアラートの発生を手元で確認でき、仕事中や運動中も、より簡単にご自身の状況を把握できる。インスリンの注入履歴やアラート・CGMデータはリアルタイムでクラウドに保存され、患者さんがいつでもアプリやApple Watchで振り返ることができ、血糖マネジメントに役立。こうしたデータはクラウドを通じて医療従事者にも随時共有されるため、いざという時にスムーズに対応できるだけでなく、通院時の診察の効率化も期待される。

 さらに新しい取り組みとして、現在ミニメド™️770Gシステム(HCL)を使用中の患者さんはインスリンポンプ本体を交換することなく、専用のアプリを介して780Gにアップデートし、使用できるようになった。これは医療機関・患者さん双方の負担軽減や、機器本体交換不要による環境負荷の軽減など、多面的な効果が期待される。インスリンポンプの本体を交換せずに内部のプログラムをリモートでアップデートするこの方法は、これまでにない新しい取り組みになる。

ガーディアン™️4スマートCGMシステムについて

 糖尿病患者さん自身による血糖自己測定回数の減少が期待されるリアルタイムCGM(持続グルコースモニタ)システムである。従来のガーディアン™️コネクトと異なり、CGMの較正が不要となるため、較正のための血糖自己測定回数やアラート回数の減少による負担の軽減が期待される。

 リアルタイムCGMが測定しているのは、血糖値より遅れて変動する間質液中のグルコース濃度(センサグルコース値)であるため、この間質液で測定したセンサグルコース値を血糖値に近づけるため、これまでは定期的に実測血糖値を入力(CGMを較正)する必要があった。

 ガーディアン™️4スマートCGMは、インスリンポンプを使用しない患者さんに対しても安心した生活の実現を支援する。

 最大60分前から高・低血糖傾向を予測しお知らせするアラート機能や、遠隔での医療者・家族の見守り機能と組み合わせることで、より便利で安心した生活の実現をサポート。リアルタイムCGMデータを家族や友人、医師と共有した結果、89%の患者さんが安心感が向上したと回答する報告もあり、予測アラートと見守り機能の併用は患者さんのQOL向上に寄与することが期待される。

ミニメド™️780Gシステム、ガーディアン™️4スマートCGMシステム 発売を受けて

 東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科教授の西村理明氏は、次のように述べている。

「高血糖に対して自動で補正ボーラスを注入する本テクノロジーは、海外では既に10万を超える患者さんで使用されています。

本テクノロジー使用者のリアルワールドデータが発表されており、低血糖を予防しつつ、推定HbA1c6.7%(平均)、Time In Range76%(平均)を達成しているという結果が示されました。さらに、使用者の75%が治療目標であるHbA1c7%未満を達成していることから、本テクノロジーの使用により血糖管理の改善につながると期待しています。

また国別に解析しても、結果に大きな差はなく、各国の生活や食文化、医療・保険制度の違いに影響されずに、本テクノロジーが血糖改善に寄与できることが示唆されており、日本でも同様の効果やより良い血糖管理をもたらすと予想します。

このような新しいテクノロジーが、我が国に導入されるにあたり、是非、患者さんの経済負担に対して、他の先進国と同様な負担軽減制度が創設されることを、強く希望します。」

 日本メドトロニック株式会社 ダイアビーティス シニアダイレクター 岡 光代は、次のように述べている。

「ついに日本の患者さんにもAHCLをお届けできる日が来たことを大変嬉しく思います。AHCLや較正不要といったミニメド™️780Gシステムの特徴は、1型糖尿病患者さんが、より少ない負担で自分らしい生活に合わせたインスリン治療を実現するためにお役に立てると考えています。ミニメド™️780Gシステムを安心して選んでいただけるよう、引き続きメドトロニックは患者さんをサポートするソリューションやサービスを提供し、一人ひとりの患者さんが、糖尿病と生きる生活をより充実したものにするお手伝いをしてまいります。」

メドトロニック ダイアビーティスが目指す、1型糖尿病のパーソナライズ医療

 私たちはより良い血糖マネジメントとその先にある活き活きとした笑顔を目指し、これまで新しいテクノロジーを用いた治療法を数多く日本で広めてきた。今回、さらに進化した自動調整機能をもつAHCLが加わることで、より患者さん個々の生活スタイルやニーズに合わせたパーソナライズ医療の実現に貢献できればと考える。

 私たちは糖尿病患者さん及び、その人を大切に思う人の幸せのために、革新的で魅力のある製品・サービス・情報を提供し、患者さん一人ひとりに合わせたソリューションを導くことで、QOLを改善し、健康寿命を延伸させることを目指している。糖尿病のない人と変わらない自由で安心・安全な生活の実現に寄与し、「インスリン治療に合わせた生活」から、「生活に合わせたインスリン治療」への転換に貢献し、日本全国どこでも、患者さん・ご家族・医療従事者が最適な治療法を選択できる環境の構築を追求していく。

【アドバンス ハイブリッド クローズドループ(Advanced Hybrid Closed Loop :AHCL)について】

 AHCLは、従来メドトロニックが提供していたハイブリッドクローズドループ(Hybrid Closed Loop:HCL)に自動補正(補正インスリンの自動追加)機能が追加された新しいテクノロジーである。

 HCLではセンサグルコース値に対して、5分毎に基礎インスリン量を自動で増減し調整するオート基礎により血糖マネジメントのサポートを行っている。対してAHCLは、このHCLのオート基礎に加え、自動補正として、最大基礎レートに達しSG値が120mg/dLを超えている場合にシステムが5分毎に自動で補正インスリンを注入。なお、一時目標が設定されている場合は、自動補正は行わない。

 この自動補正機能の追加により、従来の基礎インスリン自動調整だけでは対応の難しかった一時的な高血糖イベントや食後高血糖に対応することが可能となり、より良いTIR(Time in Range)が期待されている。

【基礎インスリン・追加インスリン・補正インスリンとは】

 生命活動を維持するために必要なホルモンの多くは血糖値を上昇させる作用があるため、血糖値を直接的に下げることができる唯一のホルモンであるインスリンは24時間絶えず分泌される。このインスリンを「基礎インスリン」と呼ぶ。また、食事などによって血糖値が急激に上昇した時もインスリンは急峻に分泌され、このインスリンを「追加インスリン」と呼び、その中でも高血糖を是正するためのインスリンを「補正インスリン」と呼ぶ。

【TIR(Time in Range)とは】

CGMによる測定期間中センサグルコース値がどの程度目標範囲内に入っているかを示す指標(%)で、「より良いTIR」とは、よりTIRの%が高いことを指している。2019年ADA(American Diabetes Association)より、「CGM使用時の1型および2型糖尿病の治療目標としてTIRを70mg/dLから180mg/dLとし、HbA1c7%の患者さんの場合は全体の70% の時間(CGMの測定地点)がこの域内に収まること」というガイドラインが発信された。TIRが高いほど低血糖時間・高血糖時間・血糖変動が短小であり、TIRが1%改善すると、24時間のうちの1%(14.4)分、この目標範囲を下回るまたは上回る時間が減少し目標範囲に収まる時間が延びたことを意味する。なお、ピボタル試験でのミニメド(TM)️780GシステムのTIR達成率は75%、RWDでは76%だった。

【メドトロニックについて】

 大胆な思考。より大胆な行動。私たちはメドトロニック。Medtronic plc(本社:アイルランド、ダブリン)は、ヘルスケアテクノロジーをグローバルにリードし、人類が直面している多くの困難な健康課題に積極的に取り組み、ソリューションを探し、見つけ出していく。150ヵ国以上にまたがる情熱を持った9万5千人以上の従業員からなるグローバルなチームを団結させているのは、「人々の痛みをやわらげ、健康を回復し、生命を延ばす」という私たちのミッションである。私たちは70以上の健康課題を治療する、心臓ペースメーカ、手術支援ロボット、インスリンポンプ、外科用手術機器、患者モニタリングシステムなどの多様なテクノロジーと治療法を提供していく。
 私たちは、多様な知識、飽くなき好奇心、そしてそれを必要とするすべての人を助けたいという思いを原動力に、革新的なテクノロジーで、1秒に2人の人々の生活を、毎時間、毎日、変え続けていく。メドトロニックは、インサイト(洞察)に基づいた治療法の提供、人を第一に考えたエクスペリエンス、そして世の中により良いアウトカム(結果)をもたらすことに注力していく。

【日本のメドトロニックについて】

 日本のメドトロニックは日本メドトロニック株式会社、メドトロニックソファモアダネック株式会社、コヴィディエンジャパン株式会社の3法人が、「人々の痛みをやわらげ、健康を回復し、生命を延ばす」というメドトロニックのミッションのもと、循環器領域、外科領域と低侵襲治療・診断領域、神経科学領域、糖尿病領域の4つの領域で、身体の70種類以上の疾患に対する治療法、サービス、ソリューションを提供していく。

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日本メドトロニック株式会社
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