富士通、米国Baptist Health South Floridaと有効性を検証した手術室の稼働率を向上させるオファリングを提供し、ウェルビーイング向上に貢献

2023.09.14

 富士通株式会社(以下、富士通)は、病院における手術室運用の最適化に向けて、手術室の稼働率と病院経営の収益を向上させる新たなオファリング「Surgical Capacity Optimization(外科手術能力最適化)(以下、SCO)」を開発し、2023年10月より北米市場に向けて販売を開始する。その後、アジア太平洋地域や欧州などグローバルへ順次展開していく。

 「SCO」は、富士通の量子インスパイアード技術(注1)「Fujitsu Quantum-inspired Computing Digital Annealer」(注2)(以下、「デジタルアニーラ」)を組み込むことで、手術前後の患者の治療スケジュールに合わせて、手術室や手術に伴う機材・スタッフなどのスケジュールを素早く提示できる。患者の手術までの待機期間を短縮するとともに、手術室の稼働率の改善により病院の収益向上を実現する。

 米国のBaptist Health South Florida(注3)(以下、BHSF)の病院のひとつであるDoctors Hospital(注4)で実証実験を重ね、手術が集中するゴールデンタイム(平日7時半から17時半まで)の利用可能時間が3ヵ月間で37%改善される成果を確認できた。

 富士通は、サステナブルな世界の実現を目指す「Fujitsu Uvance」のもと、あらゆる人のウェルビーイングを実現する「Healthy Living」の取り組みを進め、SCOは「Healthy Living」のオファリングの一つとして、医療現場が直面する人材やリソース不足などの課題解決を実現する。

 富士通は、2023年9月19日に米国テネシー州ナッシュビルで開催される周術期のリーダーシップイベント「OR Manager Conference」に出展し、SCOの詳細や実証実験の成果について報告する。

背景

 これまで、さまざまな外科病院において、患者の手術が決定してから、手術後に社会復帰するまでの一連の期間を管理する周術期チームと協力した富士通の経験から、手術室利用の非効率なスケジューリングにより、生産性の損失、医療コストの増加が伴うことが明らかになった。手術スケジュールを作成するプロセスでは考慮すべき変数が多く、従来の手作業では効率的なスケジューリングの作成や予定変更への早急な対応が困難だった。また周術期チームには、外科医をはじめ、麻酔科医、看護師、栄養士、理学療法士などの関係者が多く、それぞれの専門分野における最適が、全体の最適と競合することがあり、病院内の全ての手術室を対象とした効果的なスケジュールを構築することが困難だった。
 これらの課題を解決するため、富士通は、病院における手術室運用の最適化に向けて、高度な最適化機能を組み込んだ「SCO」を開発し、販売を開始する。

「SCO」の概要

 「SCO」は、手術室の過去の実績データと未来の予測データを分析する機能レコメンドエンジンにより、電子カルテシステムに記載された手術予定日から、手術室のスケジュールを適切な単位(ブロック)に区切り、高度な最適化を行う。そして、手術による医療の生産性を向上させるために、個々の外科医療提供者のスケジュールに合ったブロック(手術室利用の時間帯)の適切な数と配分を考慮して、ゴールデンタイムの最適な手術室のタイムテーブルを作成し、周術期チームに提示する。
 また「SCO」には、手術室環境をデジタルツイン上で再現する機能が導入されている。この機能により、外科医や主要な医療スタッフ、手術室および医療機器などの手術施設をデジタルツイン上に再現し、潜在的な影響を視覚化することができる。これにより、スケジュールを作成する周術期チームは、手術室スケジュールに影響を与えることなく、ブロックごとの手術スケジュールの変更や手術可能な時間の延長、新しい機器の入れ替えなどを行うことが可能となる。また、病院経営者は、手術室の稼働率と病院の収益へ与える影響を把握でき、スケジュールや設備投資などの重要な意思決定を支援する。
 「SCO」は、手術室の正確な稼働率と利用予測データを提供することで、患者の需要に合わせ手術までの待機期間を短縮し、必要とされている医療処置を迅速化する。また、未使用の手術室の時間を活用して稼働率を向上させ、地域社会における病院の価値を向上するとともに、あらゆる人のウェルビーイング向上に貢献する。

実証実験の概要

 BHSFの病院のひとつであるDoctors Hospitalの14の手術室を対象とした実証実験では、Doctors Hospitalの電子カルテシステムのデータや手術室利用の実績データをもとにSCOが最適なスケジュールを提案し、それを元に周術期チームがデジタルツインを活用して手術スケジュールを決定した。これにより、ゴールデンタイムの手術室利用可能時間を3ヵ月間で37%増やすことに成功した。

Chief Medical Innovation Officer at Baptist Health, Dr. Barry Katzenのコメント

 富士通の「SCO」は、手術室の稼働率を向上させる新しい挑戦です。手術室のスケジュールに関する問題の根本原因を解消し、病院と患者の双方にとって最適な手術スケジュールを提示します。また、安全で簡単に「SCO」のデータを参照できるため、周術期チームが、スケジュールの再編成の提案や、医療関係者との難しい交渉をする際にも、データに基づいた建設的なコミュニケーションを可能とします。

CEO of Doctors Hospital、Javier Hernandez-Lichtlのコメント

 イノベーションは私たちのDNAにあり、富士通とのコラボレーションを発表できてうれしく思います。このコラボレーションにより、富士通の卓越した技術的リーダーシップとエンジニアリング能力とともに、ワールドクラスの臨床専門知識と周術期管理サービスのベストプラクティスがもたらされました。これにより、患者ケアの質を最優先事項として維持しながら、臨床と収益の両方のパフォーマンスを変革することができました。

Head of Healthcare Capacity Optimization, Fujitsu Uvance Healthy Living, Dean Prelazziのコメント

 当社は、革新的なソリューション「SCO」を開発し、BHSFとの実証実験により、次世代の周術期管理を実現しました。BHSFをはじめとする医療機関における手術スケジュール最適化の支援ができることをうれしく思います。今後も、手術件数を増加させることで、病院のサービスを拡大し、外科以外の周術期管理の関係者がより良い患者ケアを提供できるよう支援をしていきたいと思います。

商標について

 記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標。

注釈

注1量子インスパイアード技術:
量子効果そのものは利用していないが、量子技術に着想を得た複数の演算高速化技術。
注2デジタルアニーラ:
現在の汎用コンピュータでは解くことが難しい組み合せ最適化問題を解くことに特化したドメイン指向型(特定の領域に処理能力を特化)計算機アーキテクチャ(メモリや演算回路からなるコンピュータの基本設計)による情報処理技術。「デジタルアニーラ」の技術は、2022年10月より提供を開始した、高度なコンピューティング技術とソフトウェア技術を誰もが容易に利用できるサービス群である「Fujitsu Computing as a Service(以下、CaaS)」の構成技術の一つ。
注3Baptist Health South Florida:
信仰に基づく非営利のヘルスケア組織であり、マイアミ・デイド、ブロワード、パーム・ビーチの各郡にある臨床ケアネットワーク。 Baptist Health には 11 の病院があり、100 を超える診療所と外来施設がある。
注4Doctors Hospital:
所在地、米国 フロリダ

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