ECTIS~臨床に役立つCT画像~研究会開催

2021.11.30

 ECTISはCT検査を中心に画像診断のギモンに答えるべく、撮影技術・造影技術および画像作成の向上の力添え、研究成果の発表、意見交換および情報交換を目的とした組織だ。イベントは2019年から始まり、2021年で5度目の開催となる今回は「5th ECTIS~臨床に役立つCT画像~ 」と題し、11月20日にさいたま赤十字病院で開催された。

 

 はじめに、基調講演として小林隆幸氏(北里大学北里研究所病院)が「3DCT画像作成の基礎」を説明した。「3D画像検査では検査の前には検査依頼者がどのような画像を求めているか検討することが大事だ。また、疾病に対する造影効果を予測し、疾患・撮影部位、患者の状態を把握する必要もある。
 3D画像を作成する際のポイントとして、一つ目はAxial画像(元画像)を確認すること。二つ目は物体選択法を極力最後まで用いないこと、三つ目は検査目的に合った処理方法や表示方法を選択することだ。
 そして、各種3DCT画像によって作成方法は異なる。CT値の閾値を設定する方法、目的の立体を用手的に選択する方法、用手的に切除する方法がある。WSによって各種機能の得手・不得手があるため自施設の使用しているWSの性能や特徴を理解して処理を行うことが大切だ」と述べた。

小林隆幸氏

 その後は研究発表が行われた。最初に竹光政樹氏(山口大学医学部附属病院)による「超低濃度造影剤(140mgl/mL)を用いた低管電圧CT検査の有用性」についての発表を行った。造影剤腎症のリスクを抑えるために、造影CT検査において最低用量の造影剤を使用する手法について言及した。超低濃度造影剤を用いた低管電圧撮影では、被ばく線量や画像のノイズ量への注意は必要だが、低侵襲なCT検査の実現ができると結んだ。

竹光政樹氏

 次に発表を行ったのは大須田恒一氏(函館五稜郭病院)だ。大須田恒一氏の「実物大模型を用いた三尖弁形成術前形態評価に関する検討」では、希釈注入併用TBT法を用いた造影剤注入方法により、精度良く輪郭抽出が可能となる。また、3Dプリンターにより実物大心臓模型を造形することで、立体構造を把握し手術手技のシュミレーションにも活用でき、3D画像が得られにくい部位における有用性の高さを示した。また、三尖弁複合体構造を立体的に表現することにより、十分な生理的形態評価を行え、安全性が向上すると発表した。

 

 続いては、 三井宏太氏 (佐賀県医療センター好生館)から発表があった。三井宏太氏から「頭部CT-angiography(頭部CTA)における造影剤投与量に関する検討」についての発表があり、頭部CTAの臨床的有用性や現状の課題、新たな造影プログラムの開発とその試験結果などについて言及した。症例間の造影効果の均一化を目的にしたpCOP群と、体重によって造影剤量を換算した体重換算群で造影効果の比較を行い、pCOP群の方が安定した造影検査が行えるため、課題を解決し、臨床に役立つCT画像を提供するための有用な手法であると結論づけた。

 研究発表の最後となったのが、阿部駿氏(秋田厚生医療センター)だ。阿部駿氏の発表は「手指屈筋腱・伸筋腱3D-CTにおけるマスク適用画像の有用性」についてである。整形領域の骨3Dと比べて抽出の難しい手指屈筋腱・伸筋腱の3D-CTに関して、空間分解能を考慮した高周波強調関数、骨用関数と、マスク適応画像を使用することで抽出能の向上を図った。具体的なマスク適応画像の作成方法についても言及し、その有用性を示唆した。

 さらに、特別講演として、原田耕平氏(札幌医科大学医学部附属病院)が「消化管領域の手術を支援する」の発表を行った。「外科医より求められる放射線技師による支援方法として、手術支援画像を作成を担うべく、手術に必用な血管情報のみを描出するために血管解剖を熟知し、担当外科医とのコミュニケーションの重要性が必要」と述べ、胃・食道・側方リンパ節郭清に対する手術支援画像を基に観察のポイントや3DCT画像作成法等について解説した。また、手術に必要な血管情報のみを描出する方法の実演した。

原田耕平氏

 最後に阪本 剛氏(株式会社PixSpace 代表取締役)が「CT画像からの臓器抽出用DeepLearning技術の開発」として技術提供を行った。DeepLearning学習環境による画像生成手法を応用した画像処理方法として、AIによる学習とそこから予想されるデータを引き算し、診断に必要な臓器画像の抽出する方法を解説した。

「RadFan 2022年 2月号」にて詳細を掲載します。