GEヘルスケア・ジャパン、メディアセミナー「東日本大震災における災害医療と今後の地域医療再生について~日本超音波医学会と岩手県の取り組みから~」を開催

2011.09.10
小山耕太郎氏
多田荘一郎氏
Vscan
GEヘルスケア・ジャパンは2011年9月5日、日本記者クラブ(東京都千代田区)にてメディアセミナー「東日本大震災における災害医療と今後の地域医療再生について~日本超音波医学会と岩手県の取り組みから~」を開催した。
はじめに、小山耕太郎氏(岩手医科大学)による表題の講演が行われた。同氏は震災直後より日本超音波医学会と迅速な連携を取り、3月18日にはポータブル超音波装置が岩手に届けられたという。災害医療の現場は、DMATを中心とした初期の救急災害医療(第一段階)、避難所における慢性疾患の治療・健康管理・衛生管理(第二段階)、仮設診療所の整備(第三段階)、という段階を取って日々変化していく。当初小山氏は、第一段階においてポータブル超音波装置が活躍すると想定していたが、東日本大震災における岩手県の被害は、地震よりも津波被害が大きく水死者が大多数であったため、震災直後から日を置かず第二段階に移行していたと振り返る。避難所向けの災害医療において目立ったのは、薬不足による慢性疾患のコントロール不良例、風邪等の感染症の蔓延、衛生面の悪化などであり、ポータブル超音波装置を使用する場面はなかったという。
岩手県における東日本大震災の被害の特徴は、ガソリン不足・通信途絶という問題を抱えていたこと、地理的特徴のために沿岸地域が孤立していたこと、もともと岩手県は医療過疎地であり高齢化率も高いことが挙げられた。陸前高田の仮設診療所では、DMATが持参した医療機器を借りて診療している状況であり、DMAT撤収後には医療機器も無くなることを意味するため、「仮設診療所の整備のためには、標準電源で使えるポータブル超音波装置が重要な役割を果たす」と語る小山氏。実際に、避難所におけるDVTスクリーニングのために行ったエコー検査において、ポータブル超音波装置が有用であった事例が紹介された。
地域医療再生に向けた次の段階は、基幹拠点病院の再整備と、新生の地域社会に応じた県全体の新しい医療体制であるとして、岩手医大は「いわて情報ハイウェイ」をはじめとする遠隔医療の充実に力を入れている。また今回の経験から小山氏は「災害時の超音波検査を適切に実施するためには平常時から超音波検査を普及することが重要」と述べ、医療過疎地域における超音波専門医・検査士の養成や、プライマリケアや訪問診療でのエコー検査を普及する意義を説いた。
つづいて、多田荘一郎氏(GEヘルスケア・ジャパン)が「被災地における『携帯型エコー』の活用事例と今後の可能性」と題し、被災地におけるポータブル超音波装置の有用性と同社の取り組みについて講演した。同社は「Vscan」をはじめとするポータブル超音波装置を被災地に貸し出し・寄贈しており、慢性疾患を抱える高齢者のプライマリケアや、検診を受けられなくなった妊婦の検査、急性期疾患のトリアージに役立ったという。また少子高齢化や医師の偏在、厳しい医療財政といった日本の医療課題の解決に向け、限りある医療資源の有効活用の重要性を述べた。「healthymagination」コンセプトのもとに提案する構想として、ポータブル医療機器やITを活用した地域医療連携支援ネットワークについて紹介した。