ロボット支援手術の現状と今後の課題-手術支援ロボット「da Vinci(ダビンチ)」の操作体験会も―

2018.05.25
滝沢一浩氏
宇山一朗氏

 インテュイティブサージカル合同会社(東京都港区、以下、ISJ)は5月21日、同社東京トレーニングセンター(東京都江東区辰巳)で、「がん治療における最新治療の現状とは」と題したプレスセミナーを開催した。会場には、今年4月に薬事承認を取得した手術支援ロボット「da Vinci X」、また、同Xと基本プログラムを同じくする上位システムの「da Vinci Xi」が展示され、会見後、取材のメディア関係者が実際に操作体験も行った。

 記者会見では、ISJ社長の滝沢一浩氏が、世界的には最初のda Vinciが登場した1999年以来この20年間で、世界で約500万人がda Vinciのロボット支援手術を受け、現在では36秒間に1人が手術を受けている――とまず、世界の現状を説明した。その一方で、日本では2009年の薬事承認、2010年からの販売開始、と世界に比べて遅いスタートとなったことや、また世界的には泌尿器科、婦人科領域だけでなく一般外科へと手術症例の広がりを見せている中で日本は、2012年に保険適用が認められた前立腺悪性腫瘍手術など泌尿器科が大半を占めていると説明した。

 そのうえで、2016年4月の腎悪性腫瘍手術の保険適用に続き、今年4月に新たに、ロボット支援を含めて腹腔鏡下12手術の保険適用が認められたことを踏まえ、「ロボット支援手術にとって大きなステップとなる。急速に浸透して、今後高い成長が見込める」と期待を表明した。滝沢氏は「低侵襲外科治療においてロボティクスが最善の技術になると考える」と普及の意義も強調した。また、今後の展望については「安全の普及のためにはカスタマートレーニングが重要で、トレーニング体制の拡充に努めたい」と述べ、まず、今年9月までに東京トレーニングセンターの受け入れ規模を50%拡大することを表明した。

 続いて、ISJマーケティング部の金田浩之氏が、第4世代となる今回のda Vinci Xと、2015年3月に薬事承認を得たda Vinci Xiの特長を説明した。ともに、3D高画質画像、手首関節を持つ鉗子と手振れ補正などを施したモーション技術、座ってリラックス状態で行えるサージョンコンソールは共通し、両システムともプログラムは同じでビジョンカート、サージョンコントロールは互換性がある。違いは、患者が乗るペイシャントカートで、Xが一定の術野範囲へのアクセスに対し、Xiは広範な術野範囲を可能とする、としている。定価はXiが2億7000万円なのに、Xは1億7000万円と経済的になっている。

 金田氏は、「プログラムが同じなので双方のドッキングも容易であり、効率的な運用も可能となる」と両システム併用のメリットも強調した。

 さらに、いち早くda Vinciによるロボット支援手術に取り組んできた藤田保健衛生大学医学部総合消化器外科学主任教授の宇山一朗氏が「ロボット支援手術における現状と今後の期待および課題」について講演した。

 宇山氏は同大学ダビンチ低侵襲手術トレーニングセンター長も務め、これまで600例に及ぶ低侵襲手術実績を有する。低侵襲手術について「傷口が小さいだけでは十分ではない。いかに再発につながる腹腔内感染症を抑えるかが重要。内視鏡手術は腹腔内で動作性が制限される。動作制限のハードルを下げるには、特殊な技術を持った医師を例外とすれば、この克服にはロボテックサージェリーしかない」とロボット支援技術の一層の普及を予測した。今後の課題については「指導者の育成」を挙げ、学会としても取り組んでいく意向を表明した。

 記者会見後、取材した約30人のメディア関係者が実際にda Vinci X、Xiの両システムのサージョンコンソールに座って、操作を体験したが、「画像が鮮明」「3Dで遠近の感覚がつかみやすく、操作しやすい」などの声が上がっていた。

da Vinci Xと説明する金田浩之氏(右)
da Vinci Xと説明する金田浩之氏(右)
広範な術野範囲が可能なda Vinci Xi
広範な術野範囲が可能なda Vinci Xi