一般社団法人米国医療機器・IVD工業会/一般社団法人日本臨床検査薬協会共催、第7回メディアセミナー開催

2017.11.07
田村 誠氏
尾形裕也氏
寺本哲也氏

 11月1日(水)、東京都の「JAビルカンファレンス」にて、一般社団法人米国医療機器・IVD工業会、一般社団法人日本臨床検査薬協会共催の、健康経営に関するメディアセミナーが開催された。第7回である今回の演題は、尾形裕也氏(九州大学名誉教授・東京大学政策ビジョン研究センター健康経営ユニット特任教授)による「経営戦略としての健康経営」であった。
 田村 誠氏(一般社団法人米国医療機器・IVD工業会医療技術政策研究所所長)による開会の挨拶の後、まず尾形氏は、日本においてはまだ後発の概念である健康経営について、行政と民間組織とが連携する「日本健康会議」という活動体の発足や日本医師会と公益資本主義推進協議会が「健康経営シンポジウム」を開催するなどといった動向が、近年みられるようになったと紹介した。その上で、欧米諸国においては医療・健康問題を従来のように単なる「コスト」としてみなすのではなく、「人的資本」に対する「投資」としてみなす考え方に移行していると指摘した。
 米国における企業にとっての従業員の健康関連コストの事例によると、医療費よりも、「Presenteeism」とよばれる「出勤してはいるものの元気がない状態であるがゆえに発生するコスト」の方が随分に多い。健康経営とは、このような生産性の損失を減らすことが目的である。
 同氏が所属する健康経営ユニットの研究からも、今後日本において労働力の中高齢化が見込まれるなかで健康リスクが「高リスク」であると判断される層が拡大していくと予測し、早期の介入が必須であるとの結果が示された。
 また尾形氏は、「健康経営」を単なる欧米からの輸入運動としてではなく、従業員の健康に対する温かな配慮があったような「従来の日本的経営」の「再構築論」として捉えることができるのではないかと述べ、それが先進国経済の歩むべき「王道」であると提示した。
 最後に尾形氏は、全米病院協会報告書における勧告を参照しながら、これまで研究で集めたデータを蓄積しながらさらに研究を進めていくこと、そして健康経営を一時的な運動として消費するのではなく、組織文化として根付かせることが重要であると強調した。
 閉会の挨拶において寺本哲也氏(一般社団法人日本臨床検査薬協会会長)は、「企業において健康経営が推進されれば従業員それぞれの生産性が向上し、企業利益が増大し、さらには社会全体の利益にもつながる」と確認した上で、「健康経営が、日本の抱える少子高齢化や労働力不足などといった問題を乗り越える切り札となるのではないか」との期待を述べた。

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会場風景