第3回消化管CT技術研究会開催

2011.06.26
吉川秀司氏
小倉敏裕氏
歌野健一氏
田仲健朗氏
坪井秀明氏
長島千恵子氏
山﨑通尋氏
藤原正則氏
松本徹也氏
山本修司氏
平野雄士氏
坂本 崇氏
第3回消化管CT技術研究会が6月18日、国立がん研究センター(東京都中央区)にて開催された。
吉川秀司氏(大阪医科大学附属病院)が総合司会を務め、まず当番世話人の鈴木雅裕氏(国立がん研究センター中央病院)が「熱く有意義な時間を過ごしていただきたい」と開会の挨拶を述べた。
はじめに、小倉敏裕氏(群馬県立県民健康科学大学)の司会の下「大腸術前検査におけるCTCの有用性」と題して歌野健一氏(自治医科大学附属病院)が教育講演を行った。自治医科大学では大腸癌予定手術のほぼ全例にCT colonography(以下CTC)を施行していること、一般的なCTC撮影方法、同施設での撮影プロトコール、実際の症例画像などが呈示された。歌野氏は、CTCでは局在診断においてほとんど認識可能であり、深達度診断も正診率が高く、有害事象も極めて少ない上に医療費用も削減可能であることから、CTCは大腸癌術前検査として一般化していくことが考えられると述べた。
一般演題(術前)では、まず田仲健朗氏(小樽掖済会病院)が「腹腔鏡下大腸切除術における3D-CTA描出法の検討」と題して発表。腹腔鏡下大腸切除術における血管の走行・分肢形態の把握のための、腹腔鏡視野と同等の3D-CTAを描出する方法を示した。結果、腹腔鏡視野と同等の術前3D-CTAを描出することで術者の負担が軽減でき、3D-CTAは有用であると述べた。続いて坪井秀明氏(松戸市立病院)が「自動炭酸ガス注入法によるCT colonography」について発表した。現在、CTC専用の炭酸ガス自動注入器は市販されていないため、同施設では腹腔鏡手術用の気腹装置を使用しているという。坪井氏は、腹腔鏡手術用の気腹装置は安全で確実な方法であると結論し、同装置は外科のあるほとんどの病院にあり、手術室と運用調整が可能であれば選択肢の一つになりうるだろうと述べた。
次に「当番施設におけるCT colonography」について、長島千恵子氏(国立がん研究センター中央病院)が述べた。同施設では2010年11月にCTCによる大腸検診コースが開設されており、2011年3月までに140症例実施しているという。長島氏は術前処置方法や使用装置・検査プロトコール、読影医によるレポート作成の流れ等について説明した後、今後の課題として需要拡大に伴う午後検査に対応した前処置の検討や、医師と技師が連携した所見チェックの確立を挙げた。
一般演題(検診)では、山﨑通尋氏(医療法人山下病院)が座長を務めた。藤原正則氏(亀田メディカルセンター幕張)は「大腸がん検診におけるCT コロノグラフィーの有用性の検討」について発表。同施設での調査では、大腸内視鏡(以下CS)受診歴ありでは「CTCの方が楽」と答えた受診者は40.1%、「CSの方が楽」は33.4%。CS受診歴のない受診者のCTC満足度は73.2%だったという。診断能の検討では、CTCの診断能は5mm以上の隆起性病変に限ればCSとほぼ遜色がなかった。受診者の受容性はCTCの方が優れていたため、大腸癌検診における精検の受診率向上が期待できるとした。一般演題最後は、松本徹也氏(大腸肛門病センター高野病院)による「低線量CT colonographyを用いた大腸スクリーニングにおけるコンピュータ支援読影ソフトの評価」。Advantage Workstationに搭載された「Colon VCAR」は画像処理および大腸ポリープ描出が可能であり、絞り込みも容易であったとし、低線量におけるCTCにも利用が期待できると述べた。
エーザイセッションでは2講演が行われた。まず山本修司氏(国立がん研究センター)司会の下、平野雄士氏(小樽掖済会病院)が「CTCの撮影線量」について講演。自作ファントムでの検討からSD35を超えると描出能が悪化するが、体重43kgまでは5mAs、体重77kgまでは15mAsの超低線量でも、大腸のみの観察目的であれば描出能が保たれることを示した。最後に、坂本 崇氏(済生会熊本病院)の司会で「CTCスクリーニング技術」について山﨑通尋氏(医療法人山下病院)が講演した。大腸検査数の推移や、同院におけるCTCの用途について等解説した後、「前処置」「検査方法」「画像処理」それぞれにおけるCTCスクリーニング技術のポイントを解説した。
今回の研究会ではアミン(ザイオソフト)社、GEヘルスケア・ジャパン社、AZE社の3社の製品を使った「ワークステーション実力検定テスト」も行われた。三宅基隆氏(国立がん研究センター中央病院)が用意した3つの異なる症例について、3社のワークステーションでユーザーである診療放射線技師3氏がその場で解析し、所見を述べた。その他にも多くの協賛企業が製品展示を行い、盛会のうちに終了した。