MY BOOKMARK No.27 RADspeed Pro EDGEの使用経験

2022.02.18

筑波メディカルセンター病院 放射線技術科

石橋智通

はじめに

 単純X線撮影検査は放射線検査で扱うモダリティの中で、一番多く検査が実施される。頭部や胸部、腹部、四肢など多くの部位における画像診断検査の第一選択として、外来診療から救急診療と幅広く活用され、検査には正確性と即時性が求められる。多くの施設では限られた検査室数の中で検査の質を担保しつつ、より多くの検査を効率的に実施することが求められ、ワークフローの改善はなくてはならない。単純X線撮影業務におけるワークフロー改善には検査担当者個人の努力・技量だけでなく、装置側に関わる要因も大きい。今回、そんな装置側のワークフロー改善に期待ができる製品として、島津製作所の一般撮影システムRADspeed Pro EDGEを紹介する。

当院の現状

 当院の単純X線撮影室はRADspeed Pro EDGE 一般撮影システム1室とその他2室の合計3室で運用を行なっており、1日150〜250件ほどの検査に対応をしている。全3室ある単純X線撮影室のうち1室は乳房X線撮影室との兼用検査室となっている。そのため、マンモグラフィ検査中は2室による運用となる。当院は救命救急センターを併設しており、通常の胸腹部や整形外科領域の検査の他に外傷撮影も多く実施される。また、小児虐待が疑われるケースでは放射線科医師立ち会いのもとで全身骨X線撮影(骨スクリーニング)が行われ、1患者にかかる検査時間が20分以上要する場合がある。外来診療の時間と外傷撮影や小児の全身骨X線撮影の検査タイミングが重なると、検査の待ち時間が問題となっていた。限られた検査室の中での運用のため、3室全ての検査室において立位・臥位撮影、ストレッチャーによる外傷撮影が行える運用となっている。

オートポジション機能

 付属のオートポジショニング用リモコン(図1)を操作することで、検査情報に応じて天井走行式X線管懸乗器が自在に移動し、予め決めたポジショニング位置に自動で設定される。オートポジショニング機能によりX線管懸垂器セットアップの手間が省かれ、その分患者のケアに集中することができる。オートポジショニングの設定は各検査情報に応じて登録が可能であり、最大90のポジショニング設定が可能である。オートポジション機能の利用により、検査の効率化という点において検査時間の短縮に繋がり大変重宝している。オートポジション機能はX線管球懸垂器の上下方向や天井走行の水平・垂直方向の動きだけでなく、X線管懸垂器の射入方向の自動調整も可能である。マニュアル設定時には射入方向の角度設定に多少の時間を要していた方も多いと思うが、ちょっとした手間を省くことでポジショニング時の時間短縮に繋がる。また、X線撮影テーブルを使用する際、X線管懸垂器の位置や角度に合わせて撮影テーブル内のブッキー部が自動で長手方向に連動する。そのため、一度に胸椎、腰椎など長手方向に観察部位が長い場合の撮影においても、患者を動かすことなく撮影テーブルとX線管懸垂器の動作だけで撮影が可能である。注意点として、接触防止の安全センサーがない点が挙げられ、検査室内に人や点滴スタンド、椅子等の障害物が存在する場合、オートポジショニング機能を利用する際はX線管懸垂器から目を離さないことは言うまでもない。また、オートポジショニング機能を操作するリモコンは有線のため、リモコンを操作する際は行動範囲が限定されてしまう。患者案内からポジショニングの一連の流れをより効率的に行う上で、リモコンのワイヤレス化に期待をしたい。

長尺撮影システム

 これまで当院で使用していた長尺用Imaging Plate(IP)は83×35.4cmサイズが採用され、長尺撮影領域には限界を感じていた。整形外科による下肢全長撮影や全脊椎撮影などのオーダーは以前から受けていたが、高身長の患者ではIPを斜めに使用するなどの工夫をして撮影を行なっていた。しかしながら、観察対象がIPサイズギリギリの場合、ポジショニングが入念になりすぎてしまい時間を要してしまいうケースがあった。また、Flat Panel Detector(FPD)系と比べIPを使用する際、読み取り機に装填してから画像出力までに時間を要する点や、観察対象がIPギリギリのサイズではポジショニングの難しさも診療放射線技師側の大きな負担となっていた。新たに導入された長尺撮影システムは、撮影時に自動的にX線管懸垂器の首振りを行いつつFPDが上下移動して画像が収集される(図2、3)。長尺専用のIPやFPDが必要なく専用の衝立台を立位撮影スタンドに設置し、ポジショニング後、撮影範囲の設定を行う。撮影範囲の設定は、X線管懸垂器の首振りを動作させ光照射野を撮影対象の上縁と下縁に合わせて設定を行うのみで、簡易的である。2回または3回のばく射後、得られた画像はDigital Radiography(DR)システム側で自動的に結合処理され、X線ばく射後数秒で画像を確認することができる。本システムの導入により、長尺撮影の検査時間は大幅に短縮することができた。本システムはX線管懸垂器の首振りを利用した撮影であるため、撮影距離は150cmと以前利用していた長尺用IP利用時より短い設定となっている。そのため、臥位での長尺撮影範囲も最大120cmまで可能となり、立位・臥位の両方で広範囲の画像を取得することが可能である。一方、FPDを上下移動させて数回の撮影画像を結合することで長尺画像が作成されるため、撮影中の体動と息止めには注意が必要である。撮影スイッチを押してから最後の撮影が終了するまでの時間は2ばく射で約12秒、3ばく射で約18秒程度である。そのため、観察範囲が比較的短く息止めが難しい小児や高齢患者の場合では、従来通り長尺用IPを使用して対応するなどの工夫も必要である。

撮影条件・照射野連動機能

 単純X線撮影において検査を実施する際、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)からModality WorklistManagemen(t MWM)を介して患者情報及び検査情報が検査端末に転送され、撮影準備が完了する。撮影準備が完了した時点でFPDに検査情報に応じた撮影条件や自動露出機構(Auto Exposure Control:AEC)のプリセット設定や照射野連動が可能となった。比較的新しい装置では標準装備となりつつある機能であるが、検査をスムーズに実施する中で撮影条件の細かな設定を省くことができるため、検査時間の短縮と適正な照射野設定による患者被ばく低減に寄与している。時間短縮に焦点を当てれば、1画像当たりの時間短縮効果がたとえ数秒であっても、1装置 1日100件の画像を扱うとすれば、1日数十分の検査時間の削減が可能である。

お気に入りの点

 個人的に使いやすい点として挙げるのは、垂直軸回転ボタン、オールフリーボタン、照射野ランプ点滅ボタンがX管球懸垂器の支柱側に配置されている点である(図4)。特に小児の四肢撮影時など、患者抑制と同時にポジショニングと照射野範囲の設定を行う際は大変重宝している。また、X線管懸垂器側でX線管の陽極を回転させるSpeed Shot機能がある(図5)。通常、撮影を行う際はreadyスイッチを押し、ばく射可能となるまで3秒ほどのタイムラグが発生するがポジショニング時に患者の体動や呼吸停止が難しいと判断した場合、X線管懸垂器側でSpeedShotを押すことで、X線管球の回転が始まり瞬時にばく射することができる。ポジショニング時に患者状況に応じて使用することができ、非常に便利な機能である。

おわりに

 本稿では、島津製作所の一般撮影システムであるRADspeedPro EDGEの主にオートポジション機能と長尺撮影システムについて紹介した。オートポジショニング機能により検査担当者の負担軽減と、立位・臥位での長尺撮影領域の拡大と簡易的な撮影設定により、検査一連のワークフローの改善が図られ、臨床価値の高い画像を提供することが可能となった。当院には導入しておらず本稿では紹介しなかったが、その他のオプション機能としてトモシンセス撮影やデュアルエナジーサブトラクションのアプリケーションもある。トモシンセス撮影は金属アーチファクトの少ないトモシンセス特有の断層画像の取得ができ、胸部X線単純撮影においても骨の癒合状態や金属周囲の骨評価が可能となる。また、デュアルエナジーサブトラクションでは1回の撮影間に撮影間隔500msec以下の高電圧撮影と低電圧撮影を連続して行うことで、軟部画像と骨部画像の作成が可能となる。胸部撮影において、軟部画像の利用により肋骨に隠れた結節陰影の描出向上が期待できる。このように、一般撮影システムにおいても臨床応用可能なアプリケーションの発展が続いている。質の高い検査・画像をより効率的に提供するためには、日々進歩し続ける装置の特性を十分理解しその機能を最大限発揮することが重要である。