透析エコーの実践と評価
検査前の視診とマッピング
血流機能評価のポイント
一般的には、上腕動脈の血流をVAの血流量(FV)とする。VA造設前の動脈は、上腕動脈から末梢血管に行くほど血流速度は低下するが、VA造設後は逆に上腕動脈よりも橈骨動脈の方が血流速度は速くなり、かつ拡張期の血流も増大する。さらに、VA造設前後では吻合部の末梢部の血流動態にも違いがあることがわかっている。
例えばFVが840mL/min、血管抵抗指数(RI)が0.45であれば血流機能は正常だと言えるが、乱流成分が増えて血管径が太くなってくるとFVが1,960mL/min、RIが0.38といった過剰血流が見られる。狭窄がある場合、軽度であればFVやRIが正常な場合も比較的多いが、高度狭窄ではFVが420mL/min、RIが0.80といったように拡張期血流が低下し、拍動性に近くなる。さらに拡張期にほとんど血流がなく、FVが170mL/ min、RIが0.93で拡張期血流が消失している状況になると、閉塞が起こっている可能性が考えられる。
このように、上腕動脈の血流のパターンを見ることで(FVとRIを測定することで)、VAに高度狭窄や閉塞が起こっている可能性をある程度推測することができる。当施設では、脱血不良がある症例に限って、狭窄は1.5mm以下、血流量は300mL以下、RIは0.7以上を手術適応の基準として超音波検査を行っている。
実例提示
1. 表在化動脈の脱血部に発生した穿刺困難症例
表在化動脈症例(図5)では、脱血穿刺部に3.5cm大の瘤が形成され、この瘤に穿刺困難が生じていた。エコーを当てれば一目瞭然で、瘤内に血栓形成が認められる。短軸と長軸像を組み合すことで、穿刺部の瘤内が血栓で閉塞し、内腔がほとんど無い状態であるため穿刺しにくいということがわかる。このような症例の場合は比較的簡単に超音波検査で把握可能である。
おわりに
今回の講演ではVA超音波検査時において、視診の大切さを強調して説明したが、実際の検査時には触診によるスリルの検出もVAの異常を推測する手がかりとなるため大切な手技である。さらに講演で使用した血流表示はほとんどが東芝メディカルシステムズ独自の血流表示技術であるAdvanced DynamicFlow(ADF)を使用した。この方法は血管からのにじみが無く、血管内腔を過大評価することなく表示できる優れた特性だけでなく、Perivascular Artifactを利用することで狭窄の判定は容易にできる利点もある点を付け加えておく。