第51回日本胆道学会学術集会ランチョンセミナー 講演2:EUS 関連手技

Satellite View~Canon Special Session:セミナー報告
2016.01.22

第51回日本胆道学会学術集会ランチョンセミナー

マークのある画像は、クリックすると画像が拡大されます。
 

第51回日本胆道学会学術集会ランチョンセミナー

胆膵内視鏡治療 2015
~最新の情報をあなたに~

 

日時:2015年9月17日
場所:ホテル東日本宇都宮
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社

司会

 

愛知県がんセンター中央病院
山雄健次先生

講演2 EUS 関連手技

 

演者

 
仙台市医療センター仙台オープン病院
伊藤 啓先生

【KEY Sentence】
●X線透視装置をオーバーチューブ方式で利用する際は、遮蔽板を使用し、術者の上半身の被ばくを低減する。
●Ultimax-iのパルス透視機能は、画質を維持したまま被ばく線量を大きく抑えることができる。
●手技の目的に応じて、超音波内視鏡、小腸内視鏡、X線透視装置を適切に用い、安全で確実な手技を実践する。

 
膵胆道疾患に対するInterventional EUSは数多くの手技が臨床応用されている。特に超音波内視鏡下胆管ドレナージ術(EUS-BD)の有用性に関する報告は多い。当院での実際の手技を紹介しながら、Interventional EUSの手技のポイント、そしてX線透視検査における被ばく低減の重要なポイントを解説する。
 

はじめに
 EUSは診断を目的に開発され、EUS-FNAを契機に近年では膵胆道疾患に対するInterventional EUSが数多く臨床応用されている。特にEUS-BDは、その有用性と安全性から主にhigh volume centerを中心にERCP不成功例に対して行われている。Interventional EUSはレントゲンを併用した手技でもあるため、当院におけるX線透視検査における被ばく軽減の取り組みについても解説する。

図1 当院のX線透視装置Ultimax-iと遮蔽板に
よる術者の被ばく低減効果
図2 Ultimax-i、連続透視およびパルス透視
(15fpsと7.5fps)の被ばく線量の違い
遮蔽板による術者被ばく防護の取り組み
 Interventional EUSではコンベックス走査型超音波内視鏡を用いて行う。X線透視装置をオーバーチューブ方式、アンダーチューブ方式のどちらにするかは施設や術者で好みが異なると思われるが、われわれは手技中の手元のワーキングスペースを確保するため、またCアームの角度を最大限活用するためオーバーチューブ方式を採用している。特に当院に導入している東芝メディカルシステムズ社製のFPD搭載CアームX線システムUltimax-i(アルティマックスアイ)は、オーバーチューブ、アンダーチューブ方式のどちらにも対応しており、大変有用である。オーバーチューブ方式で懸念となる、術者や助手の上半身の被ばく線量については、遮蔽板を用いることで対策している。当院での術者および看護師の立ち位置での被ばく線量を計測したところ、遮蔽を行うことで約1/6以下の低減が可能であった(図1)
 
 

低レートパルス透視で高画質を維持したまま被ばく低減
 Ultimax-iには、連続透視機能、および、1~15fpsまでフレームレートを細かく設定できるパルス透視機能がある。当院は通常の手技では15fpsのパルス透視を使用し、随時7.5fpsにレートを下げることでさらに被ばく低減を行っている(図2)。実際の画質において、15fpsと7.5fpsの両方ともガイドワイヤーの視認性が高く、安全で確実な手技を行うのに十分な画質である。しかし後者では明らかにフレームレートが落ちるため、小腸内視鏡の挿入時や、手技時間が長時間となる場合、レントゲン上で細かい操作が必要でない場合に用いると患者の被ばく低減にもつながり、有用と考える。

図3a
図3b
図3 EUS-BD
a 押しつけが十分でできないため、穿刺長を
足し、穿刺スピードを速めて対処した例
b 胆管への押しつけが適切で、安定した  
スコープの位置取りができた例
いずれも背側にある門脈に注意が必要   
であった。
図4
図4 ガイドワイヤー留置のポイント
超音波画像とレントゲンで穿刺位置と 
スコープがずれしないように固定して 
ガイドワイヤーを留置した。Ultimax-i
ではガイドワイヤーの視認性がよく、
スムーズな処置が可能であった。
図5
図5 胆管拡張のポイント
瘻孔を拡張する際には、ガイドワイヤーに
テンションをかけてダイレーターを挿入した。
EUS-BD手技のポイント
 EUS-BDの基本的なステップは、穿刺対象を描出して穿刺し、穿刺したルートを拡張してステント等を留置する、という流れになる。それぞれの手技のポイントを当科で毎年行なっているライブデモンストレーションの画像と共に紹介する。
1.描出
 超音波内視鏡下胆管十二指腸吻合術(EUS-CDS)を行う場合は、十二指腸球部にスコープを挿入し、upアングルを用い門脈の腹側に肝外胆管が描出され、スコープを押しつけ安定した状態で穿刺を行う。超音波内視鏡下肝胃吻合術(EUS-HGS) やantegradeアプローチを行う場合は、穿刺位置は胃噴門部もしくは腹部食道になる。膵臓のInterventional EUSの超音波内視鏡下膵管ドレナージ術(EUS-PD)は、膵頭部主膵管の狭窄により経乳頭的にアプローチできない場合適応で、胃体部の位置から膵体部の主膵管の描出を行なう。
2.穿刺
 当院では、超音波内視鏡下穿刺針は主にBoston社のExpectフレックスタイプ19Gを使用している。穿刺の際には、穿刺速度と長さに留意して行うのがコツである。胆管の背側に門脈があることに注意する。膵腫瘤に対するEUS-FNAなどではゆっくり穿刺することも可能であるが、胆管はゆっくり穿刺すると特に胆管炎などで硬くなった胆管壁を貫通することが困難なことから、なるべくすばやく一気に穿刺する(図3)
3.ガイドワイヤー留置
 ガイドワイヤー留置のコツとしては、なるべく深い位置まで留置すること、先端位置にはこだわらないこと、引き戻さないことである。特に、先端位置を変えようとして引き戻してしまうと、ガイドワイヤーの断裂などの損傷で思わぬトラブルに繋がるため、注意が必要である。ガイドワイヤー挿入時にも、X線画像と超音波画像をよく見て内視鏡と穿刺位置が変わらないようにする。Ultimax-iの高精細画像では、ガイドワイヤーの先端がよく見え、処置もスムーズに行うことができる(図4)
4.拡張~ステント留置
 瘻孔部を拡張する際には、ガイドワイヤーにテンションをかけてダイレーターやバルーンを挿入する(図5)。当院ではXEON社の7Frダイレーターを使用している。近年登場した細径(7.5Fr)デリバリーシステムを有するオリンパス社のカバードメタリックステントと組み合わせることで、大部分の症例で通電針などを要せず拡張からステント留置までスムーズに行うことが可能である。
 ステント留置のコツも前述と同様に、エコー画像でデリバリー挿入が確認できるよう画像を変えないよう、X線画像でガイドワイヤーが抜けないように位置を確認することが重要である。また、胆管壁通過時にはガイドワイヤーにテンションを十分にかけること、展開の最後は内視鏡画像で確認をすることが挙げられる。肝門部の胆管分岐を確認して、片葉ドレナージとならないようにCアームの角度を調整して、肝門部を十分認識してステントを展開していく。ステント展開においては、随時エコー画像を確認しながら、胆管壁と十二指腸壁が離れてキャンディ現象が起こらないように先端が展開したら、デリバリーをやや引き気味にして展開を続け、瘻口部まで十分展開が到達したら内視鏡画像に切り替える。最後に、スコープを穿刺部から離してリリースして迷入のないことを確認する(図6)

図6 ステント留置のポイント
a 超音波画像を見ながらゆっくりと展開し、先端が展開したらややデリバリーを手前にテンションをかけ、キャンディ現象が起きないようにした。
b 瘻口部までステントが展開したら内視鏡画像に切り替え、迷入しないことを確認しながら最後までステントを展開した。

図6
a                          b

膵管狭窄に対するInterventional EUSのポイント
 膵臓に対するInterventional EUSは報告例が少なく、安全性も確立していないことから十分に注意して行なう必要がある。手技を成功させるポイントはEUS-BDと同様であるが、膵炎の影響で膵が硬い場合には瘻孔の拡張、ステントの留置などが困難な場合がある。図7は慢性膵炎の膵頭部主膵管狭窄で経乳頭的アプローチができず、膵体部から穿刺してステンティングした症例である。

図7 EUS下膵管ドレナージ術
a EUS下に著明に拡張した膵管を穿刺した。
b antegradeにガイドワイヤーを用いて狭窄を突破して十二指腸内に誘導した。
c 膵管ステントを留置した。

図7
      a                b                 c       

図8
図8 膵管空腸吻合部狭窄症例
a EUS下に拡張した膵管を穿刺し、ガイド
ワイヤーを用いて膵管空腸吻合部を突破
して空腸内に誘導した。
b、c 小腸内視鏡を用いて空腸側から狭窄部
をバルーンで拡張した。
図8の症例では術後の膵管空腸吻合部狭窄があり、膵体部から穿刺してガイドワイヤーを留置した後、スコープを一旦抜去して小腸内視鏡でバルーン拡張を行った。小腸内視鏡を用いた手技は煩雑で長時間を要するため、Ultimax-iのパルス透視機能を併用し被ばく低減に努める。また、経胃的なEUSで治療が完結できれば手技時間の短縮に繋がると考える。

 
 

おわりに
 EUS関連手技について手技のコツを中心に概説した。InterventionalEUSは、どの手技もおおよそ①描出、②穿刺、③ガイドワイヤー留置、④拡張~ステント留置のステップで成されている。1つ1つのステップについてコツとリスクを把握し、確実に進めていくことが、安全な手技につながると考える。

(本記事は、RadFan2015年12月号からの転載です)