第46回日本膵臓学会総会ランチョンセミナー 講演1:膵上皮内癌の内視鏡的診断~現状と課題~

Satellite View~Canon Special Session : セミナー報告
2015.10.07

第46回日本膵臓学会大会ランチョンセミナー

マークのある画像は、クリックすると画像が拡大されます。
 

第46回日本膵臓学会大会ランチョンセミナー

膵疾患の内視鏡診断・治療
Update

 

日時:2015年6月19日
場所:名古屋国際会議場
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社

司会

 

手稲渓仁会病院消化器病センター
真口宏介先生

講演1 膵上皮内癌の内視鏡的診断
~現状と課題~

 

演者

 
JA尾道総合病院消化器内科
花田敬士先生

【KEY Sentence】
●膵癌の早期発見に関して膵上皮内癌を短期間で多数拾い上げるために、ERCP、EUSは必須の検査である。
●Ultimax-iのパルス透視は、低線量の低レートであってもERCP手技に十分な高精細画質が得られる。
●X線システムのアンダーチューブ方式と遮蔽を組み合わせることで、術者などスタッフの被ばくを減らすことが可能である。

 
膵癌が予後の悪いがんであることは良く知られている。早期発見から早期治療につなげていくことは非常に重要である。膵癌のなかでも、膵管内のみにとどまる膵上皮内癌はきわめて早期の状態であり、これをいかに短期間で多数拾い上げるかが、患者の予後を改善する鍵となる。早期診断にはERCPとEUSが欠かせない。ERCPとEUSが早期診断にどのように貢献しているかを、当院の経験とともに紹介する。
 

 
膵上皮内癌の早期発見が予後改善に繋がる
「科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン 2013」1)では、早期診断のコツとして、主膵管の拡張や嚢胞が間接所見として非常に重要であると説いている。またCQ1-7では、腹部超音波やCTで腫瘤がなくても、MRCPや超音波内視鏡(EUS)を施行し、限局的な膵管狭窄や尾側膵管の拡張など、膵管の所見で異常がみられた場合には、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を行って、膵液細胞診を複数回行うことが推奨されている。
 尾道医師会では、2007年から「膵癌早期診断プロジェクト」を立ち上げている。地域医療連携機関で、危険因子を複数有する症例を中心にスクリーニングUSを行い、膵管拡張、膵嚢胞を拾い上げたら、中核病院の外来診療でEUS、腹部CT、MRIを行う診断アルゴリズムを実施している。フォローアップになった症例は、地域連携パスを使って、中核病院・連携施設と情報を共有して患者を見守っていく、という体制を8年間続けている。その結果、平成19年1月1日~平成26年6月30日までの間に当院を受診された6,475例の膵癌疑いの症例から、膵上皮内癌が16例発見された。膵癌と診断された症例は399例であった(図1)。この早期診断プロジェクトの開始以来、当院の3年生存率・5年生存率ともに大幅に改善し、2008年時点で5年生存率は20%以上となった(図2)。地域医療において、早期症例の発見が生存率や予後の改善に繋がる手応えを感じている。
図1 尾道医師会における膵癌早期診断プロジェクトの成果
図2 尾道総合病院における膵癌生存率の推移

 

図3 当院の被ばく低減のための取り組み
アンダーチューブ方式をとり天板下を遮蔽することで、散乱線の影響を抑えて患者の被ばくを最小限に抑えている。Ultimax-iのパルス透視は、7.5fpsなどの低レートでもERCP手技に十分な高精細画質が得られる
図4 術者のX線防護
図5 ENPD下複数回膵液細胞診の成績
図6 膵上皮内癌の臨床像
ERCPで被ばく低減に役立つUltimax-iの低レートパルス透視
 この結果を踏まえ、膵癌の早期発見においては、特に膵上皮内癌をいかに短期間で多数拾い上げるかを追求したい。確定診断においてERCPは必須の検査である。当院での経験から、主膵管近傍に位置する上皮内癌は、主膵管が狭窄し、尾側膵管の拡張、分枝膵管の拡張もみられるといった所見が診断のきっかけになっている。
 当院は東芝メディカルシステムズ社製のFPD搭載CアームX線システムUltimax-i(アルティマックスアイ)を導入している。これはオーバーチューブ、アンダーチューブ方式のどちらでも検査をすることができるため、アンダーチューブ方式で、術者の下半身側(天板下)を鉛で遮蔽し、散乱線の影響を抑えて術者の被ばくを最小限に抑えている(図3)。もちろん術者自身も防護服を着用する(図4)。また、Ultimax-iは、1~15fpsまで、幅広く段階的なフレームレートのパルス透視が可能である。当院のERCP時には、パルス透視を7.5fpsなどの低いレートに設定し被ばく低減を図っている(図3)。特にUltimax-iのパルス透視は、低線量の低レートであってもERCP手技に十分な高精細画質が得られており、低レートパルス透視による検査は患者だけでなく、術者、介助者、看護師など全てのスタッフに対しての被ばく量を減らせることになるため、ぜひ活用を推奨したい。
 

膵液細胞診における内視鏡的経鼻膵管ドレナージ(ENPD)
 膵癌に対する膵液細胞診の有用性については多くの文献がある。Nakaizumiは「上皮内癌8例中4例は分枝膵管に限局しており、唯一の診断法は膵液細胞診である」としている2)。また、Ikedaらは、上皮内癌診断におけるバルーンERPによる分枝膵管の描出と膵液細胞診の有用性について報告している3)。これらのことから、膵管の1本1本を吟味するとともに、複数回の細胞診による正確な診断が必須要素になるものと考える。
 当院の、限局的膵管狭窄・尾側膵管拡張20例に対する、内視鏡的経鼻膵管ドレナージ(ENPD)下での複数回膵液細胞診を行った報告では、overnightの留置、平均5.3回の細胞診を行い、感度100%、特異度83%、正診率95%という成績であった4)。各種膵疾患に対するENPD下複数回膵液細胞診の有用性については、良好な成績が多数報告されている5、6)
 当院の膵液細胞診における検体採取法と標本作成法は次の通りである。まず、EUSとMRCPを行って、細胞診の適応となる①主膵管の限局的な狭窄(または尾側膵管の拡張)のある症例、②分枝膵管の拡張がみられる症例を拾い上げる。その結果抽出された対象69例に対して83回のENPDを留置している(2007年12月~2014年6月までの期間)。ENPD時には5Frのα型カテーテルを、先端が狭窄を越えるように留置し、翌日までに経時的に最大6回、新鮮膵液約2mLを採取。これを氷冷した容器に入れて直ちに細胞診に提出。22%牛血清アルブミン液を1滴加えて混和し、冷却遠心分離機にて1000G、3分間遠心を行う。沈渣を剥離防止コートされたスライドガラスに全量塗抹して湿固定をして、パパニコロウ染色を行う、という流れとなる。
 その結果は、対象69例のうち陽性が23例、陰性46例であった(図5)。陽性23例のうち22例ががんであり、Stage0が13例、Stage1が5例、Stage2が2例であった。一方、細胞診では陰性となった46例のうち、画像診断でがんの潜在を強く疑う、あるいは主膵管狭窄が高じて食事のたびに閉塞性の膵炎を起こす、といった理由で手術を希望した方が3例あり、手術の結果はStage0が2例、Stage1が1例であった。当院では現在も継続して評価を続けているが、2007年12月~2014年6月までの期間における正診率は94%、感度88%、特異度97%という成績であった。留置後の合併症としては、アミラーゼが正常値の3倍以上上昇した例が10%(7/69)、留置後に腹痛のために抜去した例が7%(5/69)みられた。腹痛は、膵管自体が細いことに由来するものと思われるため、早めに膵液を採取してから抜去している。全例とも保存的に軽快している。
 ここまでの検討で発見した膵上皮内癌は16例であった。臨床像の内訳を図6に示す。男性9例、女性7例。契機になったのは主膵管拡張が10例、主膵管拡張と嚢胞を併発しているのが5例であった。部位は膵体部が最も多く(11例)、局在は主膵管と分枝にまたがっている例が最も多かった(10例)。細胞所見からは、PanIN-1B、PanIN-2と比べると膵上皮内癌では核の細胞の不規則・重積配列がみられ、核の大小不同も多くみられる。また、クロマチンの異常も膵上皮内癌に特に多くみられる所見である。これらの特長を押さえることで、細胞診で膵上皮内癌を確実に診断することができる。

EUSと病理所見の対比からみえる膵上皮内癌の特長
 膵上皮内癌のEUS所見と病理所見を対比する際、当院では、主膵管のEUS所見、主膵管周囲のEUS所見、そして、癌がなかった部位の膵実質病理組織所見と、癌部周囲の病理組織所見について評価を行っている。この度の検討で発見した膵上皮内癌16例について評価したところ、主膵管のEUS所見では94%(15/16)で主膵管狭窄がみられた。この狭窄はMRCPでも十分に描出可能であった。また、狭窄の膵管壁に高エコー帯がみられる例が81%(13/16)あった。主膵管周囲のEUS所見では、淡い低エコー所見を示す例が56%(9/16)でみられた。また、10~11mm大の低エコー腫瘤として描出され、術前診断でcT1相当の浸潤癌と診断した例が18%(3/16)みられた。非癌部頭側の膵組織では、脂肪沈着を散見するのみで、13%(2/16)ではEUSで早期慢性膵炎と診断していた。また、尾側の膵組織は81%(13/16)に慢性膵炎に合致する所見がみられた。癌部周囲の病理組織所見では、全例において腺房脱落、炎症、線維化がみられた。また、44%(7/16)で脂肪細胞・組織の沈着が認められた。
 症例を提示する。症例1(図7)はEUSで膵体部の頭側に低エコー所見がみられ、当初はcT1相当の浸潤癌と診断した。ENPD下複数回膵液細胞診から癌が検出されたため、膵体尾部脾切除術を行った。病理像では、癌部周囲の腺房の脱落、炎症、脂肪沈着といった上皮内癌の特長が認められ、EUSの低エコー所見とも一致していた。非癌部の病理像も、頭側にはわずかな脂肪組織の沈着、尾側は一定の慢性膵炎の所見がみられた。症例2(図8)は膵管狭窄が2か所認められ、ENPD下複数回膵液細胞診から腺癌を検出。EUSでは境界が低エコー、中心部がやや高エコーな腫瘤性病変と思われた。しかし術後病理診断の結果、EUSで腫瘤に見えた部分には異常はなく、膵管内にのみ上皮内癌が発生していた。EUSが示していた中心部の所見は、炎症と線維化であった。また、この症例は多発しており、PanIN-2が腫瘍を取り囲むように存在し、尾側にも上皮内癌が存在した。こちらも同様に非癌部の病理像では、頭側は脂肪細胞が散見され、尾側は一定の慢性膵炎がみられた。

図7 症例1
図8 症例2
 
おわりに
 以上、当院での経験から得られた知見をまとめると、膵上皮内癌においては、EUS所見では膵管の狭窄はほぼ全例でみられ、狭窄の周囲の組織をみると、少なからず炎症と線維化が認められていた。また、一定の割合で脂肪沈着があり、非癌部は多くのケースで慢性膵炎がみられている。主膵管の拡張、嚢胞性病変、分枝の拡張などもしばしば認められる。また、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に関連している所見やPanIN-1、2の多発も特徴的にみられる。背景膵は、慢性膵炎、脂肪沈着が一定頻度みられる。これらの知見については、いまだ議論の余地があると考えるが、特徴的な所見をふまえ、ERCP、EUSを駆使して膵癌の早期発見を目指していきたい。

 
 
<文献>
1) 日本膵臓学会膵癌診療ガイドライン改訂委員会(編):科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン 2013.金原出版,東京,2013
2) Nakaizumi A et al: Effectiveness of the cytologic examination of pure pancreatic juice in the diagnosis of early neoplasia of the pancreas. Cancer 76(5):750-757, 1995
3) Ikeda S et al: Diagnosis of small pancreatic cancer by endoscopic balloon-catheter spot pancreatography: an analysis of 29 patients,Pancreas 38(4):e102-113, 2009
4) Iiboshi T et al: Value of cytodiagnosis using endoscopic nasopancreatic drainage for early diagnosis of pancreatic cancer: establishing a new method for the early detection of pancreatic carcinoma in situ. Pancreas 41(4):523-529,2012
5) 木村公一ほか: ENPDチューブ留置での連続膵液採取による細胞診の小膵癌診断への有用性の検討.日本消化器病学会雑誌 108(6):928-936, 2011
6) Mikata R et al: Clinical usefulness of repeated pancreatic juice cytology via endoscopic naso-pancreatic drainage tube in patients with pancreatic cancer. J Gastroenterol 48(7):866-873,2013

 

(本記事は、RadFan2015年9月号からの転載です)

会員ログイン
メディカルアイ

Facebook始めました!
このページの先頭へ戻る