第54回 日本核医学会学術総会・第34回 日本核医学技術学会総会学術大会ランチョンセミナー:心臓マルチモダリティ時代における心臓核医学の役割とEBM

Satellite View~Canon Special Session : セミナー報告
2015.03.31

第54回 日本核医学会学術総会・
第34回 日本核医学技術学会総会学術大会ランチョンセミナー

心臓マルチモダリティ時代における心臓核医学の役割とEBM

 

日時:2014年11月7日
場所:大阪国際会議場
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社

座長

 

横浜市立大学大学院 医学研究科 放射線医学
井上登美夫 先生

 

 

演者
 
社会福祉法人函館厚生院 函館五稜郭病院 循環器内科
中田智明 先生

【KEY Sentence】
●心臓マルチモダリティ時代において、検査の目的は形態的評価から機能的・定量的評価に変わりつつある
●従来の冠動脈CTや冠動脈造影(CAG)だけではリスク層別化が不十分な可能性がある
●PETを用いた心筋血流イメージング(MPI)に機能情報を加味することによりリスク層別化の精度向上が期待される
●心筋gated SPECTを用いて心機能および心筋血流を同時に評価することにより、患者アウトカムにつながる判断材料を臨床医に提供することが可能である

 
近年、冠動脈疾患の治療手技が進歩し、治療選択肢も増えてきた中で、非侵襲的な画像診断もさまざまな進化を遂げ、その役割も単に病名診断だけでなく、重症度判定やリスク層別化、予後判定などに広がりを見せている。非侵襲的かつ心筋虚血の評価が可能なモダリティとして期待が集まっているPETやSPECTなどの心臓核医学検査の有用性や課題について、これまでのエビデンスを確認するとともに、マルチモダリティ時代における活用方法を紹介する。
 
形態的評価から機能的・定量的評価へ

 マルチモダリティ時代において、臨床ニーズに合った画像診断法として成立するためには、診断用医薬品、装置、解析手法、画像化技術などが臨床応用されてから、それが本当に臨床に役立つかどうかが検証されなければならない。加えて、非侵襲的な画像診断の進歩により、検査の目的は単に診断名をつけるためのものではなく、重症度や治療効果の評価、予後判定においても役割が期待されている。さらに、検査の簡便性、迅速性、診断精度、侵襲性、経済性などの要素も重要であり、最終的には患者アウトカムにつながるような有用性を示すエビデンスの確立が求められる。
 この20~30年で冠臓脈疾患に対する治療手技の進歩がみられ、さらに治療選択に至るまでには、病名の診断だけでなく病態診断、重症度診断、リスク層別化といったプロセスをたどるようになってきた。そのような流れの中で、視覚に頼る形態的な冠動脈造影(CAG)の限界も叫ばれ、定量的冠動脈造影(QCA)が定着してきた。実際に、CAGにおいて視覚的に評価した狭窄率とQCAで解析した狭窄率を比較した結果、視覚的評価では狭窄を過大評価していることが少なくないというデータも示されている1)。また冠動脈CTによる視覚的評価とQCAの比較においても、CTの陰性予測値は90~100%と非常に高い一方で、陽性予測値は50~90%とばらつきがあり、形態学的評価にはバイアスがかかりやすいことが示唆されている。
 日本で行われたJ-COMPASS試験では、狭心症疑いの患者に対して最初に心筋血流イメージング(MPI)を実施した場合に血行再建術に至る頻度を1とすると、最初に冠動脈CTを実施した場合にはその頻度が1.6倍になり、最初にCAGを実施した場合には5.36倍になることが示されている2)。さらに、最初にCAGを実施した場合には、MPIや冠動脈CTを実施した場合と比較して多くの主要な心イベント(MACE)が発生したこともわかっている。これらのデータから、従来の冠動脈CTやCAGでは患者のリスク層別化が適切になされていない可能性があることが示唆された。
 

図1 可逆的重症心筋虚血による機能的障害

PETを用いた心筋血流評価

 これまでの冠血管形態評価では、冠動脈の狭窄は把握できるが、必ずしも心筋虚血を証明できるというものではなかった。心臓の機能的な異常を評価するうえでは心筋血流予備能を評価する必要があり、その方法としてカテーテル検査による心筋血流予備量比(FFR)や冠血流予備能(CFR)の算出、PETやSPECTによるMPIが用いられていた。PETを用いた薬剤負荷による血流予備能の評価では、アデノシンやジピリダモールなどの負荷により、若年健常者では安静時の4~5倍の冠血流予備能がみられる。図1に示す症例では、ジピリダモール負荷により、前壁、中隔、心尖部に至る広範で可逆的な虚血があり、かつ一過性虚血性左室拡大(TID)がみられるとともに左室駆出率(Ejection Fraction)の低下がみられた。このような特徴を有するケースはハイリスクパターンと考えられ、その後のCAGでは重症3枝病変が確認された。
 PET・SPECTの定性的心筋血流画像では、たとえば3枝病変すべてに虚血状態がある場合に一様に描出されてしまい、いわばBalanced Ischemiaのようなかたちで過小評価される可能性がある。ただし、そこに機能情報を加えると、多枝病変でも診断精度を向上させることが可能になっている。冠動脈狭窄と15O-H2O PETによる心筋血流予備能の関係についての海外での検討では、狭窄が強くなればなるほど冠血流予備能が低下することが示されている3)。また、冠動脈狭窄があまり強くない場合でも冠血流予備能が低下していることもあるため、血流予備能の評価は重要である。
 PETによる心筋血流評価の有用性には疑いがないが、いくつかの問題点もある。一つは、13N-Ammoniaや15O-H2O、82Rbなどのトレーサを用いるため、合成装置あるいはサイクロトロンが必要となることである。また、15O-H2Oは画像化が難しいという問題もある。そして、喫煙や肥満、心肥大、高血圧、脂質異常症など影響する因子が多いため、ばらつきが多いという問題もある。

図2 症例 72歳、男性
LADに対してPCIを施行された維持透析患者の自験例
図3 解析ソフトウェアを用い
て血流予備能を示す指標を取得することが可能
SPECTを用いた心機能・心筋血流評価

 心筋血流SPECTに関しては、AHA/ACC/ASNC、日本循環器学会などの各種ガイドラインにおいて、ClassⅠの記載として虚血の証明、心筋生存性の評価、あるいはリスクの層別化、治療後のアウトカムの推測に関して有用であるとされている。そして現在ではセグメント解析法を用いて心筋セグメントの集積度をスコア化する半定量評価が行われるようになっており、それに基づいたリスク層別化に関するエビデンスも示されている4)。また、心筋虚血の範囲が10%以上の場合にはインターベンション治療を施行しないと予後が改善しないことを示唆するデータもある5)。逆に虚血の範囲が小さければPCIをしても予後が変わらず、むしろ予後が悪化するケースもあるため、このようなリスクの層別化は非常に大事である。
 72歳、男性、以前LADに対してPCIを施行された維持透析患者の自験例を示す(図2)。これまでに心不全、慢性腎不全、心筋梗塞、心臓弁膜症の既往歴がある。この症例においてアデノシン負荷心筋Gated SPECTを施行したところ、前側壁、後側壁にかけて、あるいは下壁にかけて、かなり高度な集積低下が認められた。そして内腔が拡大しており、不完全であるがfill inがあるため、心不全も疑われた。安静時と負荷時の心機能データを見ると、負荷時には一過性にEVEFが低下して内腔が拡大し、ESVやEDVは上昇していた。さらに心筋生存性もあることから、まさに多枝病変のハイリスクパターンであることがわかる。
 また、さまざまな解析ソフトウェアを用いることにより、負荷時の虚血スコア(SSS)や虚血の範囲などの血流予備能を示す指標を導き出すこともできるため、リスク層別化や予後予測に役立つものと考えられる(図3)
 SPECTにおける相対的心筋虚血表示法では、多枝病変で虚血の程度が同じ場合、Balanced Ischemiaとしてうまく病変を検出できないことがある。そして、最重症病変の虚血が最も良く表示されるため、他の病変が過小評価される可能性がある。また、運動負荷の場合には最大負荷量は最重症病変によって規定されるため、相対的に軽症の病変が過小評価される恐れがある。そのため、Gated SPECTにより一過性虚血性内腔拡大や負荷時の一過性LVEF低下など機能指標を評価することで診断精度を向上させる工夫が必要である。
 マルチモダリティ時代において、臨床ニーズに即したEBMを構築し、個々の患者におけるリスク評価に基づいた治療選択が実現できるようにしていくことが求められるだろう。

 
<文献>
1) Yamauchi J et al:Vitamin D receptor is not essential for extracellular signal-related kinase phosphorylation by vitamin D(3) in human Caco-2/TC7 cells.Biosci Biotechnol Biochem 76:1588-1590,2012
2) Yamauchi T et al:Optimal initial diagnostic strategies for the evaluation of stable angina patients: a multicenter, prospective study on myocardial perfusion imaging, computed tomographic angiography, and coronary angiography.Circ J 76:2832-2839,2012
3) Uren NG et al:Relation between myocardial blood flow and the severity of coronary-artery stenosis.N Engl J Med 330(25):1782-1788,1994
4) Berman DS et al:Comparative prognostic value of automatic quantitative analysis versus semiquantitative visual analysis of exercise myocardial perfusion
single-photon emission computed tomography.J Am Coll Cardiol 32:1987-1995,1998
5) Hachamovitch R et al:Comparison of the short-term survival benefit associated with revascularization compared with medical therapy in patients with no prior
coronary artery disease undergoing stress myocardial perfusion single photon emission computed tomography. Circulation 107:2900-2907,2003
 
 
(本記事は、RadFan2015年2月号からの転載です)

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