SPECT検査の今:CaceReport01:昭和大学病院

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2015.02.26

01……昭和大学病院
スピーディで効率的な頭部・心臓検査で
質の高い医療と収益性の向上に貢献するGCA-9300R

 
脳血流シンチ検査の増加に伴い専用のSPECT装置導入を模索していた昭和大学病院。
タイムリーに登場した東芝メディカルシステムズ株式会社の3検出器型SPECT装置GCA-9300Rを導入し、
どのようなメリットが得られたのだろうか。
 

昭和大学病院

〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8
TEL:03-3784-8000(代表)
診療科:呼吸器・アレルギー内科、リウマチ・膠原病内科、糖尿病・代謝・内分泌内科、腎臓内科、消化器内科、血液内科、腫瘍内科、循環器内科、神経内科、腫瘍内科、総合内科(ER)、感染症内科、緩和医療科、精神神経科、呼吸器外科、心臓血管外科、消化器・一般外科、乳腺外科、小児外科、脳神経外科、整形外科、リハビリテーション科、形成外科、美容外科、産婦人科、眼科、小児科、耳鼻咽喉科、皮膚科、泌尿器科、放射線科、放射線治療科、麻酔科、救急医学科、臨床病理診断科、歯科
病床数:815床

 

昭和大学病院放射線室  
高瀬 正先生
スループットと画質の向上を期待した3検出器型ガンマカメラの導入
 昭和大学病院はここ数年で核医学検査装置を更新し、汎用機のSPECT-CT装置1 台、SPECT装置2台に加え、2014年3月からSPECT検査に特化した装置としてGCA-9300Rを導入した。年間4,500件前後の核医学検査を施行している同病院では、そのうち約半数を脳および心臓のSPECT検査が占めており、特に脳血流シンチ検査は年々増加傾向にあった。また、従来の脳血流シンチ検査は2検出器の汎用機で実施されていたため、感度と分解能において必ずしも満足はしていなかったという。
 そのため、GCA-9300Rの導入を検討する際に、診療放射線技師である高瀬 正氏は「3検出器型ガンマカメラを導入してスループットを向上させれば、患者負担の軽減や病院の増収にも貢献できるのではないか。得られる画質が向上すれば、適切な診断にもつながり、低被ばく化にも貢献できるかもしれない」と考えたという。また、小児においても、GCA-9300Rを用いることによる日本核医学会のガイドラインに準じた検査の施行への期待もあったそうだ。
 
GCA-9300Rで検査時間は約10分短縮高画質・短時間を実感
 一方で、同病院では3検出器型ガンマカメラの使用経験がなかったため、実際に高画質・短時間という結果が得られるのか不安があったという。しかし高瀬氏は「従来よりも短い収集時間にもかかわらずGCA-9300Rで得られる画質の高さは想像以上で、2検出器装置で得られる画像とは大きな違いがあり、良い意味で戸惑いがありました」と導入当初の印象を話す。読影医が見慣れた画像を作ろう、という配慮で2検出器装置の画質に近い画像をGCA-9300Rで撮ろうとしていたが、GCA-9300Rの画質が非常に高く、なかなか合わせられず苦慮したという。逆にGCA-9300Rの画像に慣れれば、2検出器の画像では満足できなくなるかもしれない。
 高画質を支えるコリメータの選択については、同病院では一部の心筋SPECTもGCA-9300Rを用いて行っているため、検査に合わせてパラレルホールコリメータとファンビームコリメータを使い分けている。GCA-9300Rではコリメータの交換は手動になるが、実際の交換に要する時間は自動/半自動の装置とほとんど変わらず、高瀬氏によればむしろ手動で交換できる安心感もあるようだ。
 脳血流シンチの検査時間に関しては、用いるトレーサーの種類にもよるが、2検出器の収集時間が20~25分のところ、GCA-9300Rでは約15分の収集時間でより分解能の高い画像が得られるようになっている。検査時間の短縮により1日の検査の枠も増やすことができ、現在同病院では1日最大で6件、平均約4.5件の脳血流シンチ実施につながり、収益性の向上にも貢献している。

 
■GCA-9300R Imaging -昭和大学病院での症例
 

脳血流(ECD) 
収集条件・処理条件の詳細はこちら → http://greenwalrus5.sakura.ne.jp/wp/?p=43010
負荷心筋血流
収集条件・処理条件の詳細はこちら → http://greenwalrus5.sakura.ne.jp/wp/?p=43057
ドパミントランスポーター
収集条件・処理条件の詳細はこちら → http://greenwalrus5.sakura.ne.jp/wp/?p=43058

定量評価の精度が向上し医師からも高い評価
 GCA-9300Rの導入後、画質に関して読影医や臨床医からも高い評価を得ているようだ。大脳基底核や視床など脳深部までコントラスト・分解能が高い画像を得ることができるため、医師からは「重要部位の特定に繋がる診断が可能になるのではないか」という期待があるという。また、「画像が臨床所見と一致する」「臨床所見と画像で微妙な違いがあり判断が難しい、という例が減った」など、脳血流の定量評価の精度が向上したという医師からの評価もある。
 画像補正に関しては従来、2検出器でも散乱線補正や減弱補正を行っていたが、手間がかかり、補正精度を向上させるのが大変だったようだ。しかし、GCA-9300Rの減弱補正では自動輪郭抽出の精度が高く「手間が減りました。ほぼ100%の精度で処理できているので感心しています」と高瀬氏。
 最近ではダットスキャンR静注の検査も増えつつある同病院。脳深部の描出能がきわめて優れていると同病院での評価も高く、今後の鑑別診断や治療方針の決定などにも影響を与えそうだという。収集時間は約28分で行っているが「もっと短縮してきたい」と高瀬氏は意気込みを見せる。
 
専用機として最適化された装備が患者にやさしい検査を実現
 GCA-9300Rには頭部検査のために最適化された装備が搭載されている。投光器は、患者を寝かせてセッティングをする時点であらかじめ再構成の断面を決めることができる。これにより、誰が位置合わせをしても高い再現性が得られるようになる。また、ヘッドレストの位置も調整可能で、頭の傾きや顎の上げ下げなどの細かい補正も容易なため、位置合わせにかかわる手間が低減されている。高瀬氏によれば、「高齢者の患者も多く、円背の方や細かい体位変換をする際に腰の痛みを訴える方も少なくないため、ヘッドレストで枕の高さを調整して投光器で位置合わせができるということは、患者さんにとってもわれわれにとっても重要なこと」だという。
 また、3検出器が近接された状態で配置されているヘッドドームを用いることにより、患者の頭部を配置してすぐに検査を開始することが可能になっている。2検出器型のガンマカメラでは、むき出しの状態の検出器を検査ごとに患者に近づけてから収集を行う必要があり、また一度ローテーションさせて患者に検出器が当たらないことを確認してから収集を開始しなければならない。そうした一手間が不要になったということだ。そして、「安心して検査できた」という患者からのフィードバックもあるように、2検出器に比べると収集時に患者に与える圧迫感が少なくて済む可能性がある。
 最低地上高46cmという寝台の低さも患者に優しい設計と言える。実際に脳血流シンチを受ける患者は高齢者や車椅子使用者、あるいは杖を使用している方なども多く、10cmほどの高さの違いでも患者にかかる負担が軽減できていることは想像に難くない。

 
■専用機GCA-9300Rならではのポイント
 

投光器
患者を寝かせてセッティングをする際に、あらかじめ再構成の断面を決めることができ、容易な位置合わせに一役買っている。
ヘッドドーム
2検出器に比べると、検出器が触れることもなく、収集時に患者に与える圧迫感が少ないと好評。3検出器とヘッドドームが近接しており、患者の頭部がガントリに入ればすぐに検査を開始することが可能。

ヘッドレスト
頭の傾きや顎の上げ下げなど微調整ができ、位置合わせの手間が軽減されている。「位置合わせを楽にできるということは、患者と診療放射線技師の両方にとってメリットが大きいです」(高瀬氏)。
寝台
寝台の高さは最低地上高46cm。「高齢者、車椅子使用者、杖を使用している方などには、10cmほど低いだけでも寝台への乗り降りは楽になります」(高瀬氏)。

 
心筋SPECTにおける可能性アーチファクトの少なさがポイント
 現在、同病院でGCA-9300Rは頭部検査を優先的に施行しているが、心筋SPECT 検査も行われている。GCA-9300Rと汎用機との使い分けを模索している最中だというが、GCA-9300Rによる心筋SPECTの評価は上々のようだ。特に画質に関しては、GCA-9300Rでは3検出器で360°収集しているため、2検出器特有の11時方向に見られるアーチファクトが目立たないという。また、心臓を検査するうえで、「肝臓など他の臓器への集積による影響も2検出器ほど多くは見られない」という読影医からの評価もある。収集時間に関しても、15分程度で十分診断が可能な画像が得られるという。一般的には2検出器で180°収集する方がコントラストが高いといわれているが、実際の読影にあたってはコントラストよりもアーチファクトが気になるという意見も少なくないようであり、3検出器によるアーチファクトの少なさが、今後心臓領域でも広く活用されていくうえでのポイントになるのかもしれない。
 
他の部位へも可能性を拡げるGCA-9300R
 核医学検査においても被ばくの問題を避けては通れないが、低被ばくにこだわるあまりに適切な診断ができないような画像になっては元も子もない。その点について高瀬氏は、「被ばく線量と得られる画像のバランスは重要な課題で、きちんと物理評価をして考えていく必要があります。その意味で、3検出器の場合には画質を担保しながら低投与量を実現できる可能性をもっています」と期待を覗かせる。
 さらに高瀬氏は、「まだ症例数は少ないが、3検出器型ガンマカメラを用いた脳循環予備能検査において、2検出器の場合と同じ薬剤投与量でコントラストがついた画像が得られる手応えをつかんでおり、さらに経験を積んでいきたい。まだ構想段階だが、ドパミントランスポーターシンチの正常者データベース構築に向けて検討を進めていきたい」と意気込みを語っている。
 GCA-9300Rの導入により、同病院では、初期から検査時間の短縮と患者負担の軽減、画質の向上といったメリットが得られていることが見えてきた。今後はさらに3検出器型ガンマカメラの活用が広がる可能性もあるため「脳・心臓以外の臓器に対応したソフトの登場が待たれる」と高瀬氏は、臨床のニーズを反映したソフトウェアの充実に期待を寄せていた。
 
 
(本記事は、RadFan2014年11月号付録からの転載です)