CアームX線システムを用いた胆膵内視鏡治療Update
日時:2014年5月15日
場所:福岡国際会議場
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社
座長
愛知県がんセンター中央病院
山雄健次 先生
演者
愛知県がんセンター中央病院
原 和生 先生
【KEY Sentence】
●Interventional EUSを行ううえでは、さまざまな装置や器具などの環境を整えることが大切である。
●手技を安全かつ正確に行うためには鮮明な透視像のCアームX線システムが不可欠である。
●手技の都合上、アンダーチューブ方式でFPDを患者から離して検査を行うこともあるが、Ultimax-iは問題なく鮮明な画像を表示してくれる。
●偶発症が起こり得ることを認識し、備えをしておくことが大事である。
Interventional EUSは近年注目を浴びている最新の手技である。しかし偶発症の発生頻度が高いことも報告されている。手技を安全かつ確実に行うためには、鮮明な透視像が得られる環境、処置具の準備、手技の習熟が必要である。本稿では、当センターで使用しているFPD搭載CアームX線システム(Ultimax-i、東芝メディカルシステムズ社製)による実際の症例を示しながら、Interventional EUSの有用性と注意点についてまとめる。
図3 CアームX 線システムUltimax-i( 東芝メディカルシステムズ社製)
超音波内視鏡下胆管十二指腸吻合術(EUS-CDS)
十二指腸から胆管にステントを留置する手技である。図4ではアンダーチューブ方式を用いている。針の操作をするためFPDを患者から少し離し、空間を作って処置を行う(図4a)が、FPDが患者に密着していなくとも、Ultimax-iはX線画像の見えやすさが変わらない。またFPDの移動はFPDカバーについているスイッチで簡単に操作できるため(図4b)、非常に簡便である。19G針を用いて十二指腸から肝外胆管を穿刺し、胆管造影を行った後にガイドワイヤを胆管の深部に挿入する。この際、ガイドワイヤが見やすい透視像が正確な手技を進めるために必要である(図5)。実際の手技ではEUSの画像を中心に観察しつつ、随時Ultimax-iの透視像も確認しながら手技を進める。瘻孔を拡張後に、最後に金属ステントを挿入するが、肝門部にステントがかからないように注意が必要であり、この際には鮮明な透視像が要求される。
図4 処置風景
a FPDを患者から少し離して処置を行う場合も、画像の見えやすさは変わらない。
b FPDの移動はカバー手前のスイッチで簡単に操作できる。
図5 透視像 EUS-CDS(EUS-guided choledochoduodenostomy)
a ガイドワイヤ挿入後に通電ダイレータで拡張する。
b スコープを抜きながらステントを留置する。
超音波内視鏡下肝胃吻合術(EUS-HGS)
EUS-HGSを行う際は食道穿刺を防ぐために全例で最初に食道胃移行部にクリップを打つ。食道穿刺は重篤な偶発症の危険性があるため注意を要する。胃内からB2またはB3を穿刺するが、B2からの穿刺は経食道穿刺になってしまうことが多い。胆管穿刺、胆管造影後にガイドワイヤを胆管深部へ挿入する。この時のガイドワイヤ操作が手技の成否を決めるポイントといっても過言ではない。手技の成功のためには、鮮明な透視像が必要不可欠である(図6a)。穿刺後は、カテーテルを用いて瘻孔を拡張し、最後にNiti-S 6mm 10~12cmを留置している(図6b)。6mm径ステントを留置することで、区域性胆管炎の予防、口径差による肉芽形成の予防を心がけている。
このような手技では、時に重篤な偶発症の可能性がある。超音波内視鏡ガイド下経十二指腸胆道ドレナージ(EUS-BD)が実施された240例を解析したデータでは、成功率が90%近くある一方で偶発症が30%近く発生したことが報告されており1)、EUS-BDはメリットも大きいがデメリットも少なくないという認識をもつことが大事である。偶発症を避けるためにも、まずは装置や器具などの環境を整えることが何より大切だと考える。
図6 透視像 EUS-HGS(EUS-guided hepaticogastrostomy)
a 胆管を造影してガイドワイヤを挿入する。
b 内視鏡を使って留置したステントの位置を変える。
超音波内視鏡的胆管ドレナージ(ランデブー法)
図7に示すのは、膵体部癌で肝門への浸潤・閉塞が見られる進行度の高い症例である。黄疸も併発していたため、内視鏡的胆管ドレナージを行った。当センターでは、ERCPはワイヤーガイデッド・カニュレーションで行っているが、肝門部で胆管が泣き別れになっており、ガイドワイヤの左肝管への誘導に難渋した症例である(図7a)。
このような場合は、EUSランデブーのよい適応である。B2またはB3の胆管穿刺、胆管造影後にガイドワイヤを挿入する。ここでもガイドワイヤ操作が手技の成否を決めると言っても過言ではない。胆管の穿刺部位によっては、スコープと刺入部が重なり、針先とガイドワイヤの確認が困難な場合がある。胆管穿刺されている状態で患者さんを動かすことは危険を伴うため、Ultimax-iのCアームを用いて最適な画像を得るように心がける(図7b)。それでも、針の角度が悪く、ガイドワイヤの深部挿入が難しい場合には、ひとつのルートにこだわり過ぎず、再穿刺することも考慮に入れておくとよい。
ランデブー法も必ずしも安全とは言えない。ダイレクト法に比べると、狭窄突破が難しい症例があるため成功率が劣るうえ、偶発症も10%以上発生するという報告がある2)。それぞれの手技には、一長一短があることを理解していただきたい。
図7 透視像 内視鏡的胆管ドレナージ(膵体部癌、肝門浸潤、閉塞性黄疸)
a 胆管の形状から、ガイドワイヤの挿入が困難。
b Cアームの角度付けにより、ガイドワイヤの視認性が向上し、手技が容易になった。