第100回 日本消化器病学会総会ランチョンセミナー:消化管X線検査のポテンシャルを引き出す─現状の位置づけと今後の展開─

Satellite View~Canon Special Session : セミナー報告
2014.08.22

第100回 日本消化器病学会総会ランチョンセミナー

 

消化管X線検査のポテンシャルを引き出す─現状の位置づけと今後の展開─

日時:2014年4月24日
場所:東京国際フォーラム
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社

座長

 

東海大学
今井 裕 先生

 

演者
 
慶應義塾大学病院予防医療センター
杉野吉則 先生

 
【KEY Sentence】
●1M-DRに続く4M-DRの登場によって、消化管X線装置のデジタル化が本格的し、DRを使った検査が主流になった。
●空間分解能が非常に高いFPDが開発されて、CFSSやDRと同等以上に解像度の高いX線画像が得られるようになった。
●最新の間接変換方式FPDの空間分解能は直接変換方式とほぼ同等であり、濃度分解能は間接変換方式の方が優れている。
●FPD搭載Cアーム型撮影寝台によって多方向からの観察を行うことで、消化管の微細な病変の描出が可能になった。
●高濃度低粘性造影剤の使用は、微細な粘膜面がコントラストのよい鮮明な画像として得られるとともに粘液除去効果が高い。
 
 
 近年、消化管X線診断の領域では本格的なデジタル化が進んでいる。X線検出器の変遷としてイメージ・インテンシファイア(I.I.)/TV系と、100万画素CCDカメラを搭載したDR(1M-DR)、そして400万画素CCDカメラを搭載したDR(4M-DR)が開発され、フィルム/スクリーンを凌駕する鮮明な画像が得られるようになった。その後、平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)が登場し、解像度や検出量子効率の向上などX線画像診断はさらに進歩した。また、FPDを搭載したCアーム式寝台により、多方向からの透視・撮影が可能となっている。X線装置・検査法・撮影寝台・造影剤の各側面から、消化管X線診断の現状と可能性について述べる。
 

図1 1M-DRと4M-DRの比較(1999年)
4M-DRの登場でX線装置のデジタル化が本格化
 X線で早期胃癌などの消化器癌を確実に診断することを目標に、われわれはこの40年、X線装置・前処置・造影剤・検査法の開発・改良に取り組んできた。
 まず、X線装置についてだが、消化管のX線診断装置は1990年初頭まではフィルム/スクリーン方式による撮影装置(conventionalfi lm-screen system;CFSS)が主流を占めていた。1993年に、I.I./TVを用いた100万画素のデジタルラジオグラフィ装置(1M-DR)が開発され、消化管X線装置のデジタル化が進んだ。しかし、当時のDRは解像度の点ではCFSSに及ばなかった。その後、1999年に4M-DRが開発され、ようやくCFSSと変わらない精度で撮影することが可能になった。図1は未分化Ⅱc胃癌症例の画像における1M-DRと4M-DRとの比較だが、後者は拡大しても輪郭がシャープであるのがわかる。このあたりから消化管X線装置のデジタル化、とくにDRを使った検査が主流になってきたと考えている。

図2 4M-DRとFPDの比較(2002年)
図3 バーガーファントム
最新の間接変換方式FPDは直接変換方式の限界解像度とほぼ同等に
 2000年になると、新しいX線検出器としてFPDが登場した。I.I.と比較したFPDの利点は画像を見れば一目瞭然だ。図2は浅いⅡc型早期胃癌だが、FPDの画像は非常にシャープになっている。矩形チャートで空間分解能を比較すると、FPDではベースのノイズがきわめて少ない。さらに、CFSSとDR、FPDの空間分解能を比較するとFPDはCFSSとほぼ同等であり、そこに画像処理を加えるので画像はさらに鮮明になる。
 FPDはさらに進化し、X線をデジタル信号に変換する方式の方向性も変わってくる。FPDは蛍光体(シンチレータ)を使用するか否かにより大きく「直接変換方式」と「間接変換方式」に分かれる。
 直接変換方式は、アモルファスセレン(a-Se)によりX線の強弱を直接電気信号に変換し、これをTFT(薄型トランジスタ)スイッチで読み取る。そこからの出力信号は電流信号に変換され、デジタル信号になる。一方、間接変換方式は入射したX線はまずヨウ化セシウム(CsI)シンチレータで光に変換され、光の強弱がTFTに読み取られ、同様に最終的にデジタル信号に変換される。
 初期のFPDは直接変換方式であり、非常に評価が高かった。光の変換を介さないので、光の散乱がなく空間分解能が高い。しかし、当時FPDは消化管X線撮影だけに使うのではなくテレビ寝台での血管造影などにも使われ、透視画像を用いる頻度が多くなった。直接変換方式はS/N比が低いため低線量の透視画像ではきれいに見えないというデメリットがあった。また、製造工程が難しく量産化に向かない、撮影室の温度管理なども難しいといったマイナス要因もあった。これに対して間接変換方式は、空間分解能では直接変換方式に劣るものの、S/N比が高いため低線量の透視画像でもきれいに見える。さらに、製造に特殊技術が必要であるものの量産化が可能で、環境制限が少ないというメリットがあった。コントラスト比に関しては直接変換方式と間接変換方式は同等だった。
 その後、間接変換方式のFPDの改良が進められた。ポイントはCsIシンチレータの成膜技術の進化だった。CsI シンチレータ膜はファイバー状の細い柱状結晶から成るが、この構造の改良により検出量子効率が改善するとともに、光の散乱を抑え込むことで空間分解能も向上した。この改良された間接変換方式と直接変換方式のFPDで、X線チャート(X-Check)ファントムとバーガーファントムを用いて空間分解能と濃度分解能を測定するテストを行った。その結果、最新の間接変換方式FPDは、空間分解能チャートの撮影では、直接変換方式の限界解像度とほぼ同等だった。とくにバーガーファントムでは、S/N比の高い間接変換方式の方がコントラスト分解能に優れていた(図3)。こうして間接変換方式のデメリットがほぼ解決され、FPDは間接変換方式が主流となっていく。
図4 連続撮影の有用性(DR)
図5 0 Ⅱc+Ⅱa SM3
消化管におけるデジタル装置の利点は「連続撮影」と「リアルタイム画像表示」
 X線装置のデジタル化は多くの利点をもたらした。まず、撮影線量の軽減である。デジタル装置はX線の情報量を信号に変える効率が高いため、撮影線量が少なくてすみ、患者の被曝線量が減る。撮影線量が軽減されると、とくに消化管の場合は撮影時間が短縮できてブレが少なくなる。また、画像処理が可能なため診断しやすい画像が得られるというメリットもある。
 私がとくに有用性を感じているのは「連続撮影」の機能である。連続撮影を使うことでタイミングを逃さずに撮影できるし、造影剤の付着状態が違った画像が簡単に撮れるために多くの情報が得られる。
 さらに、「リアルタイム画像表示」も有用だ。検査中に病変を発見できるので無駄な被曝をさせずにすむし、簡単に撮り直しができるので撮影の失敗がなくなる。とくに検診で非常に重宝するのは、検査中の追加撮影であり、リアルタイム画像表示はうってつけである。追加撮影により検査中に病変を発見できる率が高くなる。
 一方、消化管におけるデジタル装置には欠点もある。DRでは空間分解能が低く、視野の大きさが変わると分解能も変わる。とくに、大きな視野で全体を見たときには空間分解能が落ちてしまう。また、画像の滲みこみがあり、撮っているときにハレーションのような体外からの線がDRの画面に入り込むとコントラストが落ちてしまう。しかし、FPDではこの問題は解決されている。また、装置によってはダイナミックレンジが狭いが、これは画像処理を活用することで修正できる。もう一つの問題は低濃度域でのS/N比の低下である。たとえば椎体と骨陰影などが重なると、低濃度に白っぽくなり、S/N比が悪いため、微細な濃度差が見えなくなる。
 デジタル装置を使うには、利点を生かして欠点をカバーする検査法が必要になる。とくに、前述した連続撮影とリアルタイム画像表示というメリットを最大限に生かすべきである。たとえば食道癌の場合、DRでは造影剤を口に含ませて飲ませた瞬間を連続撮影し、画像を確認できるため、CFSSでは診断できなかった微細な病変も検出しやすくなる。また、食道癌では造影剤の通過の早い部位などの細かい病変は診断が難しいが、連続撮影は細かな病変を発見するのにも有用である。
 食道を連続撮影で撮ると、バリウムの付着状態の違った画像が撮影できるとともに、壁の伸展度合いの変化もあらわすことができるため、粘膜ひだの状態がよく観察できるようになる。その変化を読んでいくのがポイントで、ひだの辺縁や輪郭などの形状を連続した画像で観察すれば病変のある箇所を指摘できる。ようするに、連続撮影で陰影斑とひだの変化を追いかけることで、ヨード染色による内視鏡検査を行わないとわからなかった微細な病変も発見できる(図4)
 リアルタイム画像表示の利点を示したのが図5だ。これはSM3の食道癌だが、撮った写真を見直すと一瞬では気づきにくい陰影斑が見える。そこで、食道左後壁をバリウムが通るようにして撮影すると病変部位がきれいに描出される。

図6 残胃 0 Ⅱc 12mm T1(SM2)1)
図7 L Less 0 Ⅱc 15mm T1(SM2)1)
図8 交互変換より回転のほうが洗浄効果がある
Cアーム搭載の撮影寝台により多方向からの消化管の観察も可能に
 X線検査において、これまで撮影寝台の改良についてはあまり重視されてこなかった。われわれは2000年よりFPD搭載Cアーム型寝台を使用している。Cアームは患者の体位変換による負担が少なく、オーバーチューブとアンダーチューブを切り換えることができるので任意の方向からの透視・撮影が可能である。管球を少し振るだけで被検者の角度が変えられ、広い範囲を描出することができる。
 Cアームの活用により、Ⅱc(表面陥凹)型、早期癌など微細病変の診断精度が向上した。とくに、造影剤をきれいに付着させて撮影する(図6)、観察しにくい箇所の病変を正面像としてとらえる(図7)、といったことが可能になった。
 なお、FPDをCアームに搭載しても20°以内であれば画像の劣化はほとんどない。斜入による撮影は消化管撮影には非常に有用である。頭尾方向の回転は、とくに横胃に有効であり、病変の長径や噴門・幽門からの距離測定がしやすい。左右方向の回転は幽門前部の病変の描出に優れる。このようにCアームを任意の方向に振ることによって、従来では撮影できなかった画像が得られるため微細な病変の診断も可能になった。
 
高濃度低粘性造影剤は「粘膜の描出能」と「粘液除去効果」に優れる
 X線で微細な病変を観察するには造影剤の改良も不可欠だった。1990年台前半にわれわれの提案で国産の高濃度低粘性造影剤が作られた。それに伴って検査法も進化した。高濃度低粘性造影剤の最大のメリットは「粘膜の描出能」に優れていることで、微細な粘膜面がコントラストのよい鮮明な画像として得られる。また、低粘性で流動性・拡散性に優れているので、胃全領域を二重造影像で描出できる。
 さらに、早期癌発見のためには粘液除去が重要となるが、高濃度低粘性造影剤は「粘液除去効果」が高く、微細な所見も描出できることがわかってきた。早期癌発見を目的として従来のバリウムで二重造影を行うには、何度も体位を交互に変換しなければ粘液を除去できず、表面陥凹などの病変を描出するのに手間がかかった。だが、高濃度低粘性造影剤を使えば簡便に二重造影像を得ることができる。
 体位変換による粘液除去の方法については、試行錯誤を繰り返した結果、粘液除去には交互変換よりも回転の方が洗浄効果のあることがわかった。とくに、右側臥位方向360°で3回転の体位変換を行って、観察する面に薄く造影剤を溜めるとⅡc型早期癌が明瞭に描出される(図8)

「基準撮影法」の登場と今後の展開
 消化管X線検査における高濃度低粘性造影剤の使用は、スクリーニング検査においても癌の存在診断のみならず質的診断も可能にした。それに伴って、撮影方法も二重造影像を主体とする撮影体位に移行した。われわれは「基準撮影法」(NPO法人日本消化器がん検診精度管理評価機構)を提示した。日本消化器がん検診学会では、二重造影像主体の撮影法普及のために「新・胃X線撮影法ガイドライン」を発行している。基準撮影法に準拠して、その基本は、高濃度低粘性バリウム造影剤を使用し、粘液を除去するような体位変換として360°すくなくとも3回転を最初に行うこと、二重造影により胃全域を盲点なく撮影し、腹臥位前壁撮影では圧迫用フトンの使用を原則とすること、である。基準撮影法は簡単に習得できて効率よく検査ができる方法であり、これをマスターすることで検診のレベルの底上げを目指す。
 近年、デジタル装置の普及に伴ってフィルムを使わないモニター診断が盛んに行われるようになった。モニター診断にあたっては、デジタルの良さを生かすための撮影方法を工夫する必要がある。まず、読影しやすい撮影の流れを把握すること。そして、実際に画像を見るときにはできるだけ拡大して表示し、疑わしいときはさらに拡大あるいは白黒反転して見る必要がある。モニター診断では、モニター機器によって解像度や色調、性能、劣化具合などが違うことを考慮しなければならない。さらに、読影者と画像を作る人間が別であること、画像の作りこみがアナログであること、PACS側で画像が補正されていることがあるなどにも注意すべきだ。基本的には読影端末側での画像の微細な調整が必要である。
 また、施設内検診での消化管検査は内視鏡の比重が増えつつある。しかし、内視鏡とX線では守備範囲が違うことを認識しなければならない。内視鏡は微細な所見を得るのに適しているが、X線は広い範囲を描出することができるので病変部位や全体像がよくわかる。X線には消化管壁の厚さや側面像を映すことができる利点もある。CTなどに比較すると、X線は動的な変化や微細な所見が診断できるとともに、検査中に手を加えることも可能だ。消化管検査は、X線、内視鏡、CTといった複数のモダリティによる情報を集めることで診断精度が向上するものと考えている。

 
 
<文献>
1) 杉野吉則ほか: 新しい画像検査・診断法と今後の展開─胃X線検査における平面検出器(FPD)を搭載したCアーム式装置の有用性. 胃と腸39(12): 1572-1582, 2004
 
 
(本記事は、RadFan2014年6月号からの転載です)

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