第78回日本循環器学会学術集会ランチョンセミナー:最新心血管画像診断のインパクト

Satellite View~Canon Special Session : セミナー報告
2014.07.23

第78回日本循環器学会学術集会ランチョンセミナー

最新心血管画像診断のインパクト
日時:2014年3月23日
場所:JPタワー
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社

座長

 

和歌山県立医科大学循環器内科
赤阪隆史先生

循環器診療の中でのMRI&CT検査の位置づけ

 

演者
 

心臓画像クリニック飯田橋
寺島正浩 先生

【KEY Sentence】
●心臓CTは冠動脈壁の性状評価に有用であり、早期に不安定プラークを発見することで急性冠症候群の発症予防につな
がる。
●320列ADCTによるCTAとCTPの組み合わせ検査で、血行再建術を必要とする血流低下を有する病変部を正確に同定
できる。
●CTによる非侵襲的心筋血流予備量比の測定(FFRCT)で、冠動脈狭窄が虚血を生じるか否かを判定することができる。
●心臓MRIの基準6断面の位置決めを全自動で行う世界初のソフトウェア・CardioLineの導入で検査時間が短縮された。
●遅延造影MRIは病理学的梗塞領域をよく反映し、壁深達度により心筋のバイアビリティを推定することが可能である。
 
近年、心臓CTでの320列ADCTなど検出器の多列化や、心臓MRIでの高速撮影技術の進歩は著しい。心臓CTは冠動脈狭窄検出において高い感度・特異度を有するほか、心筋血流やFFRなどの生理学的評価も試みられている。一方、心臓MRIは、非造影での心機能、冠動脈MRAならびに造影検査での心筋血流、遅延造影による心筋性状評価、造影検査での心筋虚血評価や心筋バイアビリティ評価などにおいて有用である。日本初の心臓特化型イメージングセンターとして4年間で19,000件を超える心臓CTおよび心臓MRI検査を実施してきた経験から、心臓CT、心臓MRIの循環器診療の中での活用法について概説する。
 

図1 LMTに高度狭窄が認められた症例
心臓CT情報からの冠動脈プラークの性状診断
 当院は心臓の画像診断に特化したクリニックで、2014年にCT装置は64列のマルチスライスCTから320列のADCT(面検出器型CT)に替え、MRI装置は1.5テスラMRIを追加導入し、現在CT1台、MRI2台体制で診療している。日本全体でも近年、画像診断件数で爆発的に増加しているのが心臓CTで、施行件数は2004年には2万7,000件だったが現在では延べ40万件近くに達している。また、心臓MRIも2009年に約2万件であったのが、2012年には約3万件と順調に施行件数が伸びている。
 最初に、心臓CTの有用性を示す症例を紹介する。65歳のタクシードライバーで、夜勤後に短い胸痛を感じるため受診し、当院へ紹介された。CTを撮ると左冠動脈の左前下行枝に高度な狭窄が疑われたが、石灰化が高度なため正確な判定は難しかった。そこで、360度の方向から血管内腔を観察したところ、左冠動脈主幹部(LMT)に高度狭窄が疑われたため(図1)、そのまま救急搬送された。病院にて心臓カテーテル検査を実施したところLMTに高度狭窄が確認され、大動脈内バルーンパンピング法およびステント留置術が施行された。このように、胸痛で虚血性心疾患が疑わしい人の場合、できるだけ早期にクオリティの高いCT検査を行うことで迅速に治療へ結びつけることが可能になる。
 最新の心臓CTに期待されているのが、CTによる冠動脈壁の性状評価である。早期に不安定プラークを見つけることができれば急性冠症候群の発症予防につながる。急性冠症候群の発症に関与するとされる不安定プラークの特徴として、血管の代償性拡大(positive remodeling)、CT値の低いプラーク(low density plaque)、孤立した小さな石灰化(spotty calcifi cation)という3つのファクターが報告されている1)
 さらに、CTの分解能が向上し安定した画像が得られるようになったことで、非石灰化・石灰化・ミックスという従来の冠動脈プラークの分類だけではなく、homogeneousで均一なのか、heteroで不均一なのか、napkin-ring signがあるのかといった分類も可能になっている。napkin-ring signがあると急性冠症候群の発症を予測できるとのデータもある。CTで単に狭窄を評価するだけではなく、プラークの性状診断に迫る試みが広がり、多くの情報知見が蓄積されることを期待している。

320列ADCTによる心臓の生理学的評価の試み
 従来のCTは形態診断のための検査だったが、近年、320列ADCTによる生理学的診断の試みが進んでいる。国際マルチセンタースタディCORE320(血管の閉塞評価とどの閉塞が心臓への血流供給を妨げているかを同定し、CTの診断制度を評価する初めての前向き多施設共同臨床試験)では、320列ADCTによる非侵襲的な冠動脈CTアンギオグラフィ(CTA)と心筋CTパフュージョン(CTP)の組み合わせ検査が血行再建術を必要とする血流低下を有する病変部を正確に同定することが立証された。
 どのような患者にCTパフュージョンを試すかなどプロトコルの整備が必要だが、今後われわれの施設でも心筋虚血を評価するための心筋CTパフュージョン検査を導入していこうと考えている。
 また、通常は心臓カテーテル検査で測定する冠動脈灌流量をCTデータから計算し、血行動態をシミュレーションする試みもなされている。CTによる非侵襲的心筋血流予備量比の測定(FFRCT)だ。FFRは冠動脈狭窄のよい生理学的指標だが侵襲的手技を要する。FFRCTは非侵襲的CTにより、狭窄が虚血を生じるか否かを判定することができる。まだ問題点はあるが、CTを撮影するだけでFFRという生理学的なパラメータが得られる点には注目したい。
 

図2 心臓MRI:フルスタディ
図3 CardioLineによる位置決め(positioning)
心臓MRIに必要な基準断面を自動的に検出するCardioLine
 心臓MRIについては、われわれが通常行うのは図2に示したフルスタディである。これは非造影の基本的な検査のパッケージとなっており、造影する場合には心筋パフュージョンの撮影を追加することが多い。もちろん、すべての症例で全パッケージを実施するわけではなく、疾患によってカスタマイズしている。
 当院では東芝のMRIを導入しているが、便利な機能の一つはCardioLineである(図3)。これは、心臓撮像の基準6断面の位置決めを全自動で行う世界初のソフトウェアだ。従来法では、断面の決定や検査時間の延長が術者によって左右されていたが、CardioLineによってワークフローを簡素化できる。操作はきわめて簡便だ。事前に、指定のマルチスライス条件と必要な各断面を登録しておく。検査時には自動的に6断面が計算されてウインドウが起動し、ワンボタンで心臓断面の位置決めが終了する。心臓MRIの問題点の1つは基準断面設定が煩雑で時間がかかることだったが、CardioLineを使用すればスキャンタイムは従来の2~3割ほど短縮できる。この素晴らしい技術を使うことで、これからさらに心臓MRIの検査時間は短縮されていくものと思われる。
 
遅延造影MRIは心筋バイアビリティ評価に有用
 冠動脈のMRAは最近急速な進歩を遂げており、当院でも施行する機会が多い。冠動脈MRAの撮像法として一般に行われるのは心臓全体の高分解能3D画像を撮影するWhole-Heart Coronary MRAである。CTでは診断困難な冠動脈高度石灰化例などでも冠動脈狭窄を描出でき、proximalに関してはかなりの精度で診断できる。分解能の問題があるのでdistalまではわからない場合もあるが、陰性的中率(NPV)が高いので臨床の場でとくに冠動脈疾患の除外診断に有用である。
 当院で心臓MRIを施行する症例を疾患別に見ると、約半数が虚血の疑いだ。次に多いのが、心電図異常を伴うことの多い左室肥大、肥大型心筋症、さらに拡張型心筋症、サルコイドーシス、心筋炎、不整脈原性右室心筋症、アミロイドーシス、腫瘍と続く。
 これらの診断に際して非常に有用なのが、ガドリニウム造影剤投与10~15分後にT1強調画像を撮る遅延造影(Late Gadolinium Enhancement法:LGE法)である。遅延造影は、病理学的梗塞領域をよく反映し、空間分解能が高いので心内膜下や右室の梗塞巣も正確に描出することが可能だ。虚血は内膜から起こってくるので、壁深達度により心筋のバイアビリティを評価することができる。 具体的な診断方法は、内膜からの壁深達度がどの程度かで評価する。深達度が50%を超えると、その部位での心筋バイアビリティが極端に低下すると判断される。ただし、一つの断面からだけでは判定できないので、いろいろな方向からの断面を撮ることで、実際に50%を超えているかどうかを注意深く評価することが重要になる。 遅延造影のメカニズムは次のとおりである。ガドリニウム造影剤は血中から細胞外液に分布するが、正常な心筋の場合、細胞外液腔はあまり広くなく、血流も保たれているので心筋に取り込まれない。しかし、急性心筋梗塞を起こしたり、炎症により心筋細胞が壊れたりしていると血流が低下し、普通は流入しないガドリニウムが心筋細胞の中へ入っていき、プーリングにより排出が遅延する。また、心筋細胞が消失してScar(瘢痕)が形成され線維化が起こった場合も、プーリングが起こって遅延造影で異常心筋が描出される。したがって、遅延造影だけでは、急性病変で炎症が起こっているのか、その部位がScarになって線維化しているのかを判別するのは難しく、われわれはT2強調画像による心筋浮腫を組み合わせて診断することが多い。
図4 冠動脈MRA
図5 DCMのガドリニウム遅延造影
遅延造影MRIによる虚血および非虚血性心疾患の診断の実際
 遅延造影MRIによる診断例について2例呈示する。
 1例目は67歳、男性。心電図でR波が消失し紹介された。心臓前壁中隔の動きが悪い。遅延造影を撮影すると、壁内深達度が50%を超えていた。ただ、多断面で見ると、一部は内膜側にとどまっているので正常心筋が残っており、回復可能だと判断される。これを裏付けるために冠動脈MRAを撮像した。左冠動脈前下行枝で信号が途絶していた(図4)。これは冠動脈MRAによる有意狭窄の典型的な所見で、アンギオやCTの狭窄所見とは少し違う見え方をするので評価には慣れが必要だ。虚血の様子はPerfusion MR検査で灌流欠損を観察するが、その際、rest-perfusionとstress-perfusionの両方を同期させて見比べながら虚血の有無を診断することが重要である。
 なお、さまざまな疾患によって心筋が受けるダメージは違うので、それぞれ遅延造影画像の見え方も異なる。2例目は非虚血のケースで57歳、男性である。もともとDCMがあり、大動脈弁閉鎖不全症と心不全の疑いで検査受診した。左室肥大も高度であり、遅延造影で撮影したところ、心筋中層のライン状の増大が認められた(図5)。これはDCMに特徴的なmid-wall enhancementの所見であり、組織に線維化が起こっているものと思われる。この遅延造影で見られる線維化は予後と関連があり、DCMにおける独立した予後規定因子として有用との報告もある。
 心臓CT、心臓MRIの新しい技術の導入によって心疾患の診断精度は格段に上がった。今後、これらの新しい心血管画像診断法を若い医師のトレーニングや循環器専門医のキャリア教育の中に組み入れていくべきではないかと考える。
 
<文献>
1) Motoyama S et al: Multislice computed tomographic characteristics of coronary lesions in acute coronary syndromes. J Am Coll Cardiol.50(4): 319-326, 2007

 
(本記事は、RadFan2014年5月号からの転載です)

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