乳がん画像診断をよりスマートに。
日時:2013年11月8日
場所:京王プラザホテル
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社
座長
聖マリアンナ医科大学附属研究所ブレスト&イメージング先端医療センター
福田 護先生
演者
住友別子病院放射線部
加藤 勤先生
乳腺腫瘍の性状評価には乳腺MRI (以下MRMと略)が有用である。MRMでは腫瘍の血行動態画像化のために造影剤を使うダイナミックが有用であるが、造影検査はスクリーニングに適するとは言い難い。他方近年、Time-SLIP法に代表されるASL(arterial spin labeling)撮像技術を応用して、造影剤を使わずに血行動態を画像化できるようになった。最新のASL法を応用した非造影のMRMは、患者にやさしく検診などのスクリーニングに適した検査と言え、造影MRMで捉えきれない超早期の濃染を画像化する可能性も期待されている。今回、最新の3T MRI装置(Vantage Titan 3T、東芝メディカルシステムズ社製)で得られた経験をもとにして、非造影MRMの現状と将来展望を述べる。
【KEY Sentence】
●3T MRI装置の登場やTime-SLIP法などの新しい撮像法によって、非造影MRMの描出能が向上している。
●FASE法とTime-SLIP法を組み合わせることによって、腫瘍と血管を分離描出したFUSION像が得られた。
●現状の非造影MRMは、撮像シーケンス、撮像パラメータ、患者セッティング、月経周期などハード・ソフト両面で多くの改良の余地がある。
●課題を洗い出し改善方法を考察しながら、非造影MRMの検出感度の向上と幅広いスクリーニング検査をめざした臨床応用を探りたい。
はじめに
MRMは、米国放射線学会のカテゴリー分類であるBI-RADSに従って評価することが一般的である。BI-RADSでは造影検査における早期濃染の評価が重要と記されている。任意型検診が推奨されるハイリスクグループには、毎回造影剤を使用するため、侵襲性の高い検査となる。ここでもし、非造影で腫瘍の血行動態、特に早期濃染の状況が把握できれば、スクリーニング検査としてMRMの有用性が拡がるであろう。また最近、ダイナミックはできるだけ早い時相で撮像すべきという意見がある。超早期相を画像化できる可能性がある非造影MRMは、造影MRMで得られない有用な臨床情報が提供できる可能性がある。
非造影MMRの技術的アプローチと画像の特性
乳腺は体の表面に存在する臓器であるため、MRMは磁場不均一の影響を受けやすい。また内胸動脈など乳腺への流入血流は低流速であることが推測される。これらを考慮して今回は、高速Spin Echo法の一法であるFASE法とTime-SLIP法とを組み合わせることで非造影MRMを得た。図1cに示すようにFASE法を使った非造影MRMは乳腺内血管を良好に描出することができるものの、動脈と静脈が混在した画像が得られる。また腫瘍や背景乳腺も高信号を呈しやすい。そこで、動脈と静脈を分離描出して背景信号を抑制するため、Time-SLIP法の併用が必要となる。
図3 ASL-MRI(FUSION)の作成
図4 FASE+差分画像(レンダリング)のFUSION像