戸畑共立病院[MRI]Image Report Case 1 転移性脳腫瘍

Satellite View~Canon Special Session:Innocent Story~ありのままの医療を求めて Archives
2014.05.07

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フローアーチファクトを克服して転移性脳腫瘍を高精度に診断する。

 
3テスラMRIは、血流やCSFなど生体の動きによるアーチファクトが弱点といえる。動きに強い撮像法と条件設定の最適化によって、微小な転移巣をより確実に検出できるようになった。3テスラ本来の有用性を日常臨床に活かす工夫がそこにある。
 
■病歴:60歳代女性
肺癌で加療中に眩暈、ふらつきを認めた。精査目的にて造影MRI施行となった。
 
■検査目的
転移性脳腫瘍を含めた器質的疾患の有無、鑑別診断や病変の進展範囲を評価する。
 
■読影医コメント
脳腫瘍のMRIにおいて、病変分布や部位、サイズ、数、内部性状を正確に評価し、可及的速やかに診断することは適切な治療方針や予後予測に肝要であり、画像診断の担う役割は重要である。3T MRIは高いSN比を生かし詳細な評価が可能であるが、造影剤を使用した中枢神経系の検査において、血液のT1短縮効果による強いフローアーチファクトが診断や治療方針決定の妨げとなることをしばしば経験する。体動補正技術「JETAIR法」を併用したT1強調撮像法により、明確に微小病変の有無や腫瘍進展範囲の把握が可能となり、治療方針の決定に有用であった。
 
■検査担当技師コメント
転移性脳腫瘍の診断には造影検査の有用性が高い。しかし造影剤を使用すると、血液のT1値短縮によるフローアーチファクトが顕著となり、診断の妨げとなる。また、検査中の体動による画質劣化は、患者さんの協力が得られない場合避けることが難しい。そこで、体動補正技術であるJET法で患者さんの体動アーチファクトを抑制する。さらに造影剤で上昇した血液信号を抑制するため、low flip angle 条件で撮像を行った。low flip angleによって低下した病変コントラストの改善策としてIR(Inversion Recovery)法を併用する(当施設では以上の手法と条件設定の組み合わせをJETAIR 法と呼んでいる)。JETAIR 法によって3T MRI装置本来の高いSN比による高画質な画像を、常に安定して提供できるようになった。
 
シーケンス名:FSE+7.5_jet
TR/TE:2600/30msec
TI:1100msec
FA/FL:90/90deg
blade数:40
Slice thickness:5.0mm
FOV:22×22cm
Matrix:272×272
撮像時間:3’34”



造影T1強調像 JETAIR法あり
造影T1強調像 JETAIR法なし

通常の造影T1強調像では、後頭蓋窩領域に静脈洞由来のフローアーチファクトを強く認め、病変の進展範囲に関して判然としない。一方、JETAIR 法併用したT1強調像では、後頭蓋窩領域における静脈洞由来のフローアーチファクトの抑制を認め、転移性脳腫瘍の存在が明らかである(赤矢印)。
 

造影T1強調像 JETAIR法あり

静脈洞由来のフローアーチファクトが抑制され、病変が明瞭に描出されている。