CCT2013 ランチョンセミナー最新心臓MRIによる低侵襲画像診断の活用

Satellite View~Canon Special Session : セミナー報告
2014.03.28

CCT2013 ランチョンセミナー

患者にやさしい循環器医療の実践

日時:2013年10月18日
場所:神戸国際展示場
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社

座長

 

国家公務員共済組合連合会虎の門病院
山口 徹 先生

最新心臓MRIによる低侵襲画像診断の活用

 

演者
 
草津ハートセンター循環器科
渡邉哲史 先生

近年、低侵襲で早期に虚血を検出する心臓MRIの活用が期待されている。本稿では、虚血性心疾患に対する最新心臓MRIの有用性と、1.5T装置(東芝製Vantage Titan)を用いた実際の検査の流れを紹介し、心臓MRIのさらなる普及への課題について言及する。

【KEY Sentence】
●心臓MRIは、多くのエビデンスを有し、心筋虚血診断に有用なモダリティである。
●精度よく手軽に虚血を捉える心臓MRIは、適切なPCI施行の的確な判断に有用である。
●低侵襲で被ばくがない心臓MRIは、術後のフォローアップ検査に有用である。
●有用性の高い心臓MRIの普及を妨げている理由は、検査時間の長さと操作の難しさである。
●「CardioLine」は、検査時間を短縮し、心臓MRIの普及を後押しする。
 
はじめに
 日本循環器学会2009年発行の冠動脈病変の非侵襲的診断法に関するガイドラインには、「本邦の普及度を考慮すれば」安定狭心症診断の第一選択はSPECTと冠動脈造影CTであり、心臓MRIは下流に記述されている。また循環器検査の年次推移を見ると、冠動脈造影CTが爆発的普及を示す一方、心臓MRIは一桁少ない検査数で推移している。他方近年の心臓MRIの有用性エビデンスの充実と、撮像技術の発達は目覚ましいものがある。被ばくがなく低侵襲であるというメリットをも有する心臓MRIの高い有用性の割には、普及が伴っていない。
 

図1 心筋虚血を証明することの重要性
COURAGE trialのサブスタディで、
虚血を証明した上で血行再建すれば
生命予後が改善することが示された。
有用性が高いのに普及が進まない理由
 心臓MRIの有用性として、SPECTやPETと同等の診断能を有すること、局所心筋血流予備能(FFR)と高い相関を示すこと、心筋バイアビリティや予後予測が可能、などがここ10年間の研究や臨床経験で明らかになっている。これらの有用性が大規模研究や多数のエビデンスを通じ認知されているにもかかわらず、心臓MRIの普及が進まない理由は、操作が難しく検査時間がかかる、手間の割に収益が低い、CAGやPCI件数の増加につながらない、MRIそのものが循環器内科医になじみが薄い、などが考えられる。
 
心臓MRIがもっと普及してよい理由
 周知であるがDEFER StudyやFAME Studyによって、中等度冠動脈狭窄へのステント留置は予後を改善しないことが示されている。また安定狭心症患者におけるCOURAGE Trialでは狭窄を拡げるだけでは生命予後を改善しないことが示唆されている。しかし、同研究の核医学によるサブスタディでは、心筋虚血を証明した上で血行再建を実施すれば有意に生命予後が改善するとされている(図1)。意義の少ない不要な治療を回避し、医療費高騰を抑制するために、インターベンション治療の適応決定を患者毎に適正に行なうべき時代になった。そのために必要な心筋虚血の診断を、より精度よく手軽に行いたいという検査のニーズが高まっている。心臓MRIの普及が期待されるゆえんである。
 
虚血の証明に心臓MRIを
 冠虚血が起こると数十秒の間に灌流障害、代謝障害、拡張障害、収縮障害が起こり、その後心電図に変化が現れ、症状が出現し、虚血が持続したままであるといずれ梗塞、瘢痕に陥る。このIschemic Cascadeと呼ばれる一連の流れにおいて、MRIはごく初期の段階をとらえることができる。これを踏まえた2012年のAHA/ACCF合同ガイドラインでは、安定虚血性心疾患において負荷Perfusion MRIがクラスIIaやクラスIに位置づけられるなど、心筋虚血診断における心臓MRIの位置づけは、確実に高まっている。
 
当センターでは心臓MRIが確固たる地位を築きつつある
 現状では虚血性心疾患診断の第一選択が冠動脈造影CTであることに疑いはないが、当センターでは冠動脈造影CTの不適合患者、たとえば若年女性患者、造影剤アレルギーや腎不全患者に心臓MRIを施行している。高度石灰化等で冠動脈CTの判定が困難な場合にも負荷MRIを施行する。症例を重ねるに連れて、心臓MRIは虚血性心疾患を診断するモダリティとして確固たる地位を築きつつあるという印象を深めている。
将来的には急性冠症候群、安定狭心症、非虚血性心疾患のいずれにおいても心臓MRIで評価をしたいと考えている。
図2 虚血性心疾患の検査プロトコル
壁運動や逆流の評価、心機能諸量の測定、
冠動脈狭窄の評価、心筋虚血評価、
Viabilityと梗塞瘢痕の評価に至るまでを
1回の検査でサマライズできる。
当センターの心臓MRI撮像プロトコル
 虚血性心疾患診断を目的とした当センターのMRI検査プロトコルを紹介する(図2)
 まず非造影のシネMRIで左室壁運動評価や左室内腔評価、血液の逆流評価を得る。次に、非造影T2強調像である“Edema Scan”で早期の虚血による心筋浮腫を描出する。Edema Scanで得られた高信号領域と、遅延造影による心筋梗塞巣および瘢痕壊死像とが一致するなどEdema Scanは心筋梗塞診断に有用性が高い。続いてWhole heart MRCAを使ってCTに迫る鮮明な冠動脈を非造影で描出する。CT同様にVolume Rendering像、Curved MPR像を用いて冠動脈の狭窄を評価する。そののち、ATP負荷にてガドリウム造影剤を投与する心筋負荷Perfusionを使い、虚血の詳細を診断する。最後に遅延造影を撮像して心筋のViabilityと梗塞壊死巣を診断する。
図3 検査時間の平均実測値
非造影検査で平均23分、フルスタディで平均47分。
従来に比べて大幅な検査時間短縮を実現している。
図4 検査時間を短縮する最新技術「CardioLine」
心臓MRI検査に必要な断面設定を、ほとんど瞬時で
自動的に装置が行ってくれる。
検査時間の短縮と操作性が心臓MRIのカギを握る
 当センターで心臓MRIが確固たる地位を築きつつある背景を考察する。キーポイントは検査時間の短縮であろう。当センターでは、シネMRIと冠動脈撮像とで平均23分で検査を終える。負荷Perfusionと遅延造影を加えたフルスタディでも平均47分である(図3)。従来に比べ大幅な検査時間短縮を実現している。心臓MRIの検査は、撮像断面の決定に要する位置決め操作の時間が全体の時間の大きな割合を占める。すなわち、位置決めに要する時間が短縮できたことが検査時間の短縮に直結している。また心臓MRI検査に慣れない操作者でも、熟練者と変わらない検査の質を確保できているという点も、ありがたい。これらを実現できた理由はVantage Titanに搭載された心臓位置決め支援機能「CardioLine」である。位置決め撮像が終了すると同時に「CardioLine」ウィンドウ(図4)が開き、ほぼ瞬時に次に撮像すべき6断面が自動的に位置決めされる。再現性の高い位置決めが短時間で行えるため、経験が少ない操作者でも効率よく検査を進めることができている。
 
患者への配慮も心臓MRI普及の重要な要素
 Vantage Titanの特長は患者開口径71cmという検査空間の広さにある。大柄な方でも撮像が可能で、検査中の圧迫感も少ない。また高速撮像を頻繁に用いる心臓MRIでは撮像騒音が患者にストレスを与えることが少なくないが、聴感90%以上の静音効果があるPianissimo機構で低騒音化が図られている。受信コイルは次世代技術を採用したMulti-sized elementsで、心臓の撮像領域を高いSN比で均質にカバーできる。患者にやさしい検査環境の改善は、心臓MRI普及の重要な要素と言えるだろう。 

心臓MRIの有用性が発揮された症例
 当センターの症例経験をもとに、最新の心臓MRIの成果を紹介する。
 
1. 急性心筋梗塞術後のフォローアップ検査が有用であった例
 61歳男性。前壁の急性心筋梗塞症を発症し左冠動脈前下行枝6番にDESによる血行再建術を施行、その6 週間後のフォローアップMRI検査である。シネMRI( 図5a)で中隔から前壁への広範な壁運動低下が認められる。負荷Perfusionの負荷時画像にて前壁中隔に低信号領域を認め、安静時画像で低信号が消失している(図5b)。血行再建後に心筋虚血が残存している状態であると判断できた。
 

図5 急性心筋梗塞術後のフォローアップ(61歳男性)

 

a シネMR(I HR88bpm)。
中隔から前壁にかけて広範な壁運動低下を認める。
b 負荷Perfusion。負荷時に低信号領域(矢印)が認められ、安静時に消失する。
血行再建後も心筋虚血が残存している状態と判断された。

 
2. 冠動脈造影CT(64列)の過大評価を正しく判断できた例
 64歳女性。非典型的胸痛で来院。心筋梗塞の濃厚な家族歴を有する。64列CTの冠動脈造影(図6a)において左冠動脈前下行枝6番に75%の狭窄を認めたが、判断しづらい画質であったためMRIを施行。シネMRI(図6b)では壁運動異常がなく、冠動脈MRAでも狭窄は認めらない。負荷Perfusion(図6c)でも虚血所見が得られなかったことから、冠動脈造影CTの過大評価と判断した。CAGでも有意狭窄は認められず、現在経過観察中である。冠動脈造影CTのピットフォールを補い、診断の精度を高めることができた例である。
 

図6 冠動脈造影CT(64列)の過大評価例(64歳女性)

a 冠動脈造影CT(64列)。
左冠動脈前下行枝6番に75%の狭窄所見あり。
 

b シネMRI (HR82bpm、SV19.4mL、EF58.9%、EDV33mL、ESV13.5mL)。
壁運動に異常は見られない。
c 負荷Perfusion。虚血所見は得られず、
冠動脈CTの過大評価と判断できた。

 
3. PCI合併症の急性心筋梗塞を指摘できた例
 63歳女性。急性冠症候群。右冠動脈1番100%狭窄病変に対するPCIの治療歴あり。残存狭窄の左冠動脈前下行枝7番、9番にそれぞれDESを留置したが、9番から分枝する小側枝がjailされ閉塞した(図7a)。PCI後に胸部圧迫感が残存しCPKも上昇。PCI施行の翌日のシネMRIでは、壁運動低下は明らかではなかったが、Edema Scan(図7b)で対角枝の灌流域の前壁に浮腫像を認めた。遅延造影(図7c)で対角枝領域に梗塞像を認め、PCI合併症による心筋梗塞と診断できた。
 

図7 PCI合併症による急性心筋梗塞を指摘できた例(63歳女性)

a PCI術後に9番から分枝する小側枝がjailされ閉塞。
 

b 左:Edema Scan。
右:シネMR(I HR78bpm、SV42mL、EF50%、EDV83.3mL、ESV41.7mL)。
壁運動低下は明らかではないが、
Edema Scanにて対角枝の灌流域の前壁に
浮腫像(矢印)を認めた。
c 遅延造影(Gadolinium造影剤投与3分後)。
対角枝領域に梗塞像(矢印)を認め、
PCI合併症による急性心筋梗塞と判断した。

 
4. 陳旧性心筋梗塞のRCA-CTO施行を適切に判断できた例
 47歳男性。陳旧性心筋梗塞症例。右冠動脈1番100%慢性完全閉塞病変を認め、7番100%梗変責任病変に対してPCIを施行、MRIでRCA-CTO術前評価を行った。シネMRI(図8a)では前壁中隔および下壁に壁運動低下を認めた。負荷Perfusion(図8b)では、梗塞領域である前壁に低信号領域を認め、下壁にも安静時画像にて低信号領域を認める。以上より持続的な慢性虚血が存在すると判断し、RCA-CTO施行に踏み切るエビデンスとなった。遅延造影(図8c)では前壁から心尖部にかけて心筋梗塞像を認める。心臓MRIでもたらされた虚血情報が治療方針の決定に活用された例である。
 

図8 陳旧性心筋梗塞のRCA-CTO施行を適切に判断できた例(47歳男性)

a シネMR(I HR86bpm、SV64.5mL、EF44.8%、EDV144mL、ESV79mL)。
前壁中隔および下壁に壁運動低下を認める。
 

b 負荷Perfusion。前壁および下壁に安静時で低信号領域(矢印)を認め慢性の虚血と判断された。
RCA-CTO術施行を決めるエビデンスとなった。
c 遅延造影(Gadolinium投与後7分後)。
前壁から心尖部にかけて心筋梗塞像を認める。

 
5. 虚血を証明することでPCI施行を決定できた例
 76歳女性。LAD狭心症にて緊急PCI後、回旋枝15番に99%狭窄が残存した例。
PCI術後(図9a)に認められた15番の狭窄による虚血の有無の確認のため心臓MRIを施行。負荷Perfusion(図9b)にて後壁に低吸収域を認め、同灌流域の虚血が確認された。症状もあったため後日のPCI施行を判断した。心臓MRIで虚血の状況を把握することで、治療方針を的確に決定しえた例である。
 

図9 虚血を証明することでPCI施行を決定できた例(76歳女性)

a PCI透視像。
LAD狭心症にて緊急PCI施行後、回旋枝15番に99%狭窄が残存した状態であった。
b 負荷Perfusion。後壁に低信号領域(矢印)を認め同灌流域の虚血が確認されたため、後日のPCI施行が決まった。

 
まとめ
 心臓MRIは1回の検査で心疾患の状況を把握できることから、EBM実践という点でも最適なモダリティであろう。また個々の患者の心疾患の自然史をサマライズする有用な検査である。なかでも心筋虚血の診断を精度よく手軽に行えることは、PCIの適切な実施に際して有用である。また低侵襲性で被ばくがないことを活かして術後のフォローアップ検査にも有用性が高い。これまでは検査時間と操作の難しさから一般の臨床現場に普及が進まなかったが、技術の進歩によって課題は克服されつつある。心疾患の画像診断の有益な一員として心臓MRIのさらなる普及が期待される。
 
(本記事は、RadFan2014年2月号からの転載です)

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