SPECT検査の今:Special Interview 日本メジフィジックス株式会社

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2014.03.27

日本メジフィジックス株式会社

 

製品企画第一部部長
太田信一氏
担当部長
渡辺清貴氏
マネジャー
村田彰宏氏
「ダットスキャン静注」の登場までの経緯
 ドパミントランスポーターシンチグラフィ製剤であるダットスキャン(本剤)は、2000年にEUでパーキンソン症候群の適応で承認が下りたのを皮切りに、2006年にレビー小体型認知症が適応となった。アメリカでは2011年にパーキンソン症候群と本態性振戦の鑑別として承認され、本邦では医療上の必要性が高い未承認の医薬品として開発要請があり臨床試験を行い、薬事承認されたという経緯である。本剤が先行して発売された欧米では、新たな知見を示す論文が多数発表されている。
 
検査適応について
 パーキンソン病の場合、問診によって自覚症状や神経所見を確認し、経過観察や抗パーキンソン病薬による改善を確認することで診断される。基本的に頭部MRI検査は、他の疾患との鑑別診断に用いられる。本剤は中脳黒質ドパミン神経の脱落(SDD)というパーキンソニズムの原因となる病変を直接画像化できることが特徴である。これは、病変を直接診ることができるという点でも、診断上のインパクトは大きいと考えている。
 第53回日本核医学会学術総会のランチョンセミナーでは、米国で本剤の経験が豊富なワシントン大学の蓑島 聡先生から、使用経験をご講演いただき、読影のポイントをまとめて頂いた。 これまで海外と比べて本邦では、脳血流SPECT検査自体は比較的多く行われているが、パーキンソン病に関しては典型的な所見は少ないとされているためあまり活用されていなかったが、本剤は多くの先生方に興味を示して頂いているようである。
 さて本剤はレビー小体型認知症への適応も認可された。DLBの鑑別診断はこれまで非常に困難であったが、本剤がDLBの診断に寄与できるのではないかと考えている。さらに、国際的なDLBの臨床診断基準にドパミントランスポーターシンチグラフィの記載があり、今回の薬事承認を機に本邦でもさらに注目が集まるのではないだろうか。まだエビデンスは少ないが、より早期の診断や経過観察、または臨床研究テーマとして検討されていくのではないかと考える。今後のデータの蓄積によって、本剤のもつ様々な可能性があるのではないだろうか。
 
今後の展開と世界への発信
 本剤を用いた検査では、線条体という小さな部位をみるため、東芝メディカルシステムズから販売開始の発表があった「GCA-9300R」は、脳深部の解像度に優れており、先生方の期待は大きいと考える。
 蓑島 聡先生に本剤の日本での治験のデータに関する印象を伺ったところ、米国よりも日本の方が画像を作成する技術的なレベルが高いというお言葉を頂いている。優れたポテンシャルを有する日本の核医学関連医師・技師からクオリティの高い研究データが世界に発信されることを期待されていた。今、脳血流SPECTの技術的、臨床的な経験が豊富な日本からの報告は、世界から求められているのではないだろうか。
 本剤は、今までみることのできなかったSDDを評価することで、パーキンソン症候群やレビー小体型認知症の診断に寄与することが期待される薬剤である。将来を担う若手医師や診療放射線技師の方々にとって、本剤は多くの可能性に満ちており、たくさんの方々に興味を持って頂けるものではないかと考えている。弊社も、本剤を先生方とともに日本で育てていきたいと考えている。