SPECT検査の今:Nuclear Medicine Interview 04

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2014.03.27

Nuclear Medicine Interview 04

 
 
桑原康雄先生
福岡大学病院放射線部第2

 
11月の日本核医学会は脳核医学を一番に注力。盛況のなか閉幕。
 第53回日本核医学会学術総会は、2,100名を超える皆様にご参加頂けた。今回は脳に関するシンポジウムと特別講演には特に力を入れており、特別講演では、脳循環の世界的リーダーの1人である菅野 巌先生(放射線医学総合研究所)から、「脳核医学と分子イメージング‐ 核医学を目指す若い人へのメッセージ‐ 」のテーマで先生のライフワークである脳の研究に関するお話をうかがった。海外からの招待講演では、Ichise先生(コロンビア大学)より、現在注目を集めているアミロイドイメージングについて基礎から臨床まで詳細にお話頂いた。
 最近薬事承認された脳ドパミントランスポータ診断薬であるDaTSCANについては、10年以上前に日本で治験を行い、パーキンソン病と本態性振戦の鑑別ということで申請を行ったが、保険適用には至らなかった。現在認知症においてレビー小体型認知症とアルツハイマー病との鑑別に際しては、心臓の交感神経機能をみる123I-MIBGで行っているのが現状であるため、脳の直接の診断薬であるDaTSCANには非常に期待している。
 現在でも脳血流測定の最も標準的な方法は脳血流SPECTであると考えるが、脳核医学がさらに発展していくためには、DaTSCANのような、血流だけではなく、神経伝達機能といった特異的な機能をみる薬剤がさらに登場することが望まれる。
 
世界に認められたGCA-9300Aの後継機に大きな期待
 3検出器型SPECT装置GCA-9300Aは発売当初、世界一の性能と高画質を誇っており、それは現在でも変わらないと感じている。今回、その後継機にあたるGCA-9300Rが薬事承認され、機器展示において発表されたということで、非常に期待している。
 その理由は、高分解能・高感度であるため、短時間で高画質の画像が得られるからである。現在主流となっている2検出器型SPECT装置に比べ明らかに画質が優れ、現状に満足していないユーザのGCA-9300Rへの期待は大きい。
 DaTSCANの読影については、尾状核と被殻をきちんと区別して評価し、パーキンソン病と他の病気とを鑑別することが重要になってくる。DaTSCANと3検出器型SPECT装置による高分解能の画像により、より精度の高い診断できると考えている。また、2012年に行われた第7回核医学全国診療実態調査において骨検査や心臓検査等の多くの検査が減少した中で、脳血流検査は増加傾向にあり、DaTSCANが薬事承認されたことにより、脳の検査数はこれからも増加していくと考えている。今回、タイミング良く新しい薬剤と装置が薬事承認されたことは脳核医学のみならず核医学全体にとっても明るいニュースであり、今後の発展が期待される。
 核医学会が現在熱心に取り組んでいるのが学会のグローバル化への対応である。今大会のパネルディスカッションでは「国際学会のグローバリゼーションの中で何をすべきか?」のテーマで活発な議論が行われた。また、今回初めて日本核医学会総会において北米核医学分子イメージング学会(SNMMI)会長のDillehay先生とワシントン大学のMinoshima先生をお招きしてJSNM-SNMMIリーダーシップミーティングを開催した。海外からの、招聘講演としてはアメリカから3名、イギリスから1名、韓国から1名お招きした。また、今回は開催していないが、来年大阪で開催される核医学会では中国(C)・日本(J)・韓国(K) からなるCJKmeetingも併設される予定である。2年前に筑波で行われた同会では、中国・韓国・台湾などから約150名が参加されており、アジアや世界との連携をさらに進めていくことが大事だと考えている。
 日本の脳血流SPECT検査は、世界的にみても高いレベルにあり、GCA-9300Aのような性能の優れた装置が国内メーカで開発されたということに加え、画像処理や解析、特に統計画像解析が既に広く普及しているというのが日本の核医学の大きな特徴である。このような状況を背景に今後さらに脳核医学検査が進歩・普及することが期待される。