第21回 日本消化器関連学会週間 ブレックファーストセミナー:内視鏡医の視点からみた CT Colonography

Satellite View~Canon Special Session : セミナー報告
2014.03.26

21回 日本消化器関連学会週間 ブレックファーストセミナー

低侵襲・効果的な最新の
消化器画像診断および
治療技術について

 

日時:2013年10月10日
場所:品川プリンスホテル
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社

座長
昭和大学横浜市北部病院
消化器センター
工藤進英 先生

最新のX線システムを用いた
ERCP関連手技の進歩

 

演者
秋田赤十字病院
消化器病センター
山野泰穂 先生 

消化器画像診断の領域で今、CT Colonography(以下CTCと略す)の意義と位置づけが俎上に上がっている。CTCにはどのようなメリットがあるのか、克服すべき問題点や課題は何か、大腸内視鏡とCTCの共存は可能であるのか、CTC導入によって大腸癌検診のフローはどのように変わりうるのか、最新の知見を交え大腸内視鏡医の立場からCTCのいまを概説してゆく。

【KEY SENTENCE】
●大腸内視鏡は、診断から治療まで一気通貫する効果的な消化器画像診断のツールである。
●大腸内視鏡検査は、一般の方の検査の受容性と、受診率の低さが問題である。
●CTCの有用性は、検査の受容性をベースにした高いスクリーニング能力にある。
●CTCで大腸癌を拾い上げることで、大腸癌死亡率減少への新たな道筋が拓ける。
●CTCと内視鏡は、お互いに役割を相補する共存共栄の関係にある。
●従来問題視されたCTCの検査被ばくは、最新技術によって大きく改善された。

はじめに
癌による本邦死亡者数は年間約35万人に達し、今や3人に1人が癌で亡くなる時代である。部位別の罹患数で見ると大腸癌は男性では胃癌に次ぐ第2位、女性でも乳癌に次ぎ第2位であり、大腸癌の早期発見、早期治療は社会的要請と言えよう。大腸の検査には、注腸X線バリウム検査、大腸内視鏡検査、大腸カプセル内視鏡検査、そしてCTCがある。それぞれの利害得失を理解して患者メリットを最大にする運用が必要とされている。

図1 大腸内視鏡の受容性に関する
一般の方へのアンケート(オリンバスメディカル
システムズ株式会社アンケートより)
図2 内視鏡の進歩
癌の表面構造と遺伝子発現の
関連を解析する研究が行われている

進化を続ける大腸内視鏡は診断と治療の有用な手段
内視鏡は唯一、目の前で病変を見ることができる検査である。拡大内視鏡と染色によって生検せずとも病変の性質を判断でき、早期癌と判断できればその場で治療を開始することができる。病変の病理組織像を捉えるバーチャルバイオプシーとしての有用性は、癌の鑑別や悪性度判定にとどまらず治療法の選択や治療評価など多様な情報を提供する。我々は、病理像からさらに踏み込んで、癌の表面構造と遺伝子発現の関連を科学的に解析する研究さえも行っている(図1)。大腸内視鏡は、病変の発見から遺伝子学的背景を反映した早期診断さらには治療までを一気通貫できる、まさに低侵襲で効果的な消化器画像診断のツールである。

大腸内視鏡検査が抱える課題は“患者の受診率”
臨床的なメリットに優れた大腸内視鏡検査であるが、一般の方の受け入れという視点から見ると様相が異なってくる。たとえば、一般の方4,623名を対象にしたインターネットアンケート調査によれば、大腸内視鏡検査を受けたことがない方が8割あり、そのメリットを十分説明したのちでも依然として8割が「将来も受けようと思わない」と答えている(図2)。このように大腸内視鏡では高い臨床的有用性と検査の受容性とのギャップが著しい。さて、大腸癌検診のファーストステップは便潜血反応検査である。2007年老人健康保険のまとめによれば、検診対象者10万人のうち検診受診者は2割弱の約1万5千人、一般的に便潜血陽性率は統計的に約8%であるから、便潜血陽性者は1,200人前後となる。ここから内視鏡検査を受けるのはその約6割の700人弱である。内視鏡検査に対する患者の「受けづらい検査、受けたくない検査」という心理が示唆される数字である。内視鏡検査の癌検出率は一般的に3%前後であるから結局、10万人を対象にした大腸癌検診で癌が見つかるのはたった21人ということになる。この現実のままでは大腸癌は減るどころか増え続けることが危惧される。費用対効果は最も高いとされる大腸癌検診であるが、検査の受診率、内視鏡検査の施行率を高めることは解決すべき重要な課題として受け止めなければならない。

CTCの意義は大腸癌スクリーニングの受診率向上にある
大腸内視鏡検査のもうひとつの課題は、診療にあたる消化器内視鏡医のマンパワー不足である。一例を見てみよう。平成19年度の検診対象者は全国で推定約3,500万人であったが、このうち大腸内視鏡検査が行われたのは保険診療集計上約330万件である。大腸内視鏡専門医は国内推定約1万人であるから、検診対象者約3,500万人のすべてを内視鏡でスクリーニングするとしたら、内視鏡医が1人あたり年間1,000件を施行したとしても、全ての検査を終えるのに3年半もかかってしまう。対象者に効率よくスクリーニングをかけて、大腸内視鏡検査にスムーズに導く新たな道筋が必要とされる所以である。このスクリーニングの役割に最も適した検査として期待されるのが、CTCなのである。

図3 CTCのメリット
死角のないvirtual endoscopyが簡単に得られる
図4 図3のCTCで指摘された病変を
大腸内視鏡で確認した
図5 CTCで示された隆起所見
図6 図5の病変を大腸内視鏡で確認した
図7 CTCの利点

大腸癌スクリーニング検査としてのCTCの利点
スクリーニング検査としてのCTCには具体的にどのようなメリットがあるのか、整理しておこう。

・検査の受容性が高い
前処置や肛門からの送気は必要であるが、一般的な内視鏡検査と比較すれば患者の負担は少ない。現在は送気に炭酸ガスを使うことで検査終了後の膨満感も短時間に軽減されるようになった。検査に対する患者の抵抗感が少なく受容性が高まると思われる。

・検査数をこなす能力が高い
撮影は腹臥位と背臥位で行うが、患者1人あたり10~15分で検査が終了する。得られた画像データはデジタルデータで残るので観察や解析を検査施行後にじっくり行える。時間を有効に使って多くの対象者を効率よく検査できる。

・内視鏡医の立会いが不要
医師と患者が同じ時間と場所を共有する必要がないこともメリットである。内視鏡医はCTCの検査オーダーを出すだけでよい。診断は必ずしも検査の場で行う必要がないので、遠隔地からの診断を活用することも可能である。

・習熟せずとも容易に診断できる
ワークステーションの扱いに慣れれば、初学者でも簡単にvirtual endoscopy画像を作成することができる(図3)。内視鏡と違って死角のない画像で観察できるので経験の少ない研修医でも「ここに何かある」と指摘できる。内視鏡で確認してCTCによる診断が正しいことを確認した例を当院でも多数経験している(図4)

・病変の描出能力が高い
CTCで描出された小さな病変を内視鏡で確認できた例を示す(図5、6)。CT装置の進歩のおかげでかなり細かい病変を診断することが可能になりつつある。また内視鏡の挿入困難例や高度狭窄症例でも検査が容易に行える。周辺の血管構築、リンパ節、周囲臓器な
ど腸管以外の情報が得られることもCTCのメリットである(図7)

CTCへの懸念、課題、その解決策
患者や内視鏡医から見てメリットの多いCTCであるが、決して万能ではない。解決や改善が期待される課題と問題点に触れておこう。

・放射線被ばく
検査被ばくが問題である。患者が被ばくに対してセンシティブになっている本邦では、CT装置の低被ばく性能は避けえない問題として認識すべきで、受診率向上にも関係する重要なファクターとなろう。現在では、最新の被ばく低減技術 AIDR 3Dによって注腸X線バリウム検査の半分以下の被ばく量で済む。腸管だけであれば1ミリシーベルト以下、すなわち胸部レントゲン2枚撮影程度の低線量でCTCを実施できる。

・前処置と腸管拡張の維持
前処置の標準化が必要であるが、昨今は食事に造影剤を混ぜ残渣をサブトラクション処理するtagging法が主流である。炭酸ガスの送気装置の薬事承認が得られたため、腸管拡張の維持の問題はほぼ解決されている。

・読影の効率を上げる仕組み
CTCでは通常1症例につき15~20分程度の読影時間がかかる。どのように効率よく読影してゆくかも課題である。たとえば昼間は集中的に撮影を行い夜間に集中して読影を行うスタイルは如何であろうか。

・読影者の確保
読影者のマンパワー確保が大きな課題である。診療放射線技師に一次読影を任せる、産休や諸事情で病院勤務が難しい医師に在宅で読影してもらう、などの策が考えられる。

・読影と診断の精度管理
診療放射線技師や在宅医のマンパワー活用には、これらの方々に対する読影と診断の精度管理が課題となる。症例検討会や研修会、あるいは認定制度を作ることで、一定以上の読影の質を担保、維持する仕組み作りが必要であろう。

・腹部画像診断に関する知識不足
CTCは腸管以外の情報も豊富に得られる。内視鏡医は腸管については熟知しているものの総合的な腹部画像診断はやや敷居が高い。患者メリットのためには、垣根を越えたチーム医療、たとえば放射線科医との緊密な協力体制も必要になるであろう。

・表面型病変に対する描出能の限界
すべての早期癌をCTCで見つけられるわけではない。我々の検討では、高低差が2mm以下の表面型病変の検出は困難である。描出能の向上は今後の課題であるが、デジタル技術の進化と医師との協力のもとに創意工夫すれば、発展の可能性は十分期待できる。

・情報の組み合わせで診断精度を上げる
CTCの将来性を示唆する一例として我々の施設の研究成果をご紹介する。経口腸管洗浄剤を使用した前処置の際に腸管内にたまる洗浄液を集め、複数の遺伝子のメチル化を調べ、そのスコアリングとCTC画像を組み合わせることで、CTだけでは指摘しづらい小病変を指摘する試みである。多様な情報を組み合わせることでCTCの描出精度向上が実現できるのではないかと期待される。
内視鏡とCTCは共存共栄の関係にある
CTCは検診未受診群を検査の俎上に上げ、手術で助かる大腸癌を拾い上げることに可能性を求めるべきである。「検診を受けてくれない」、「内視鏡検査を受けてくれない」方々を内視鏡検査に導くためにCTCを用いるのである。例えば下血のある患者に対して、負担の少ないCTC検査を受けて頂き疑わしい所見をわかりやすい画像として提示する。そうすれば次の段階の大腸内視鏡検査のインフォームドコンセントが得やすくなり積極的に内視鏡検査へ誘導できるであろう。CTCと大腸内視鏡は対立排除し合うものではなく、相補的に役割を分担し合うものである。CTCの検査数が増えることで大腸癌を効率よく拾い上げられ、その結果内視鏡検査数も増える、言わば共存共栄の関係にある。

図8 大腸癌検診のフローの変化 a│b
a 従来の大腸癌検診の流れ
b CTCを加えたこれからの大腸癌検診の流れ
CTCを一員に加えた大腸癌検診の新たな戦略
CTCと内視鏡の共存関係を大腸癌検診の流れに位置付けてみよう。現状の大腸癌検診は便潜血反応検査で陽性反応が出た場合、次の選択肢は内視鏡検査である(図8a)。これからは、患者の負担が少ない低被ばくのCTCを便潜血検査と内視鏡検査との間に置く(図8b)。便潜血陽性者にCTCを実施し病変を拾い上げる、あるいは検診対象者が直接CTCを受ける流れを創り、そこから積極的に内視鏡へと導入する。CTCを大腸癌検診の流れの中に戦略的に位置づけることで、大腸内視鏡医のメリットを生み、なによりも患者自身のメリットとなり、そして大腸癌死亡率を減らす社会的要請に応える新たな流れを創り出すべきであると考える。

まとめ
大腸内視鏡医の目標は、大腸癌で亡くなる方を1人でも減らしたいということである。本邦の大腸癌死亡率は増加傾向にあり、社会的問題になろうとしている。大腸癌の死亡率を下げるには早期発見・早期治療が重要であるが、そのためにはCTCを積極的に導入し、検診から精査までの戦略転換を図ることが必要である。

(本記事は、RadFan2014年1月号からの転載です) 

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