第21回 日本消化器関連学会週間 ブレックファーストセミナー
日時:2013年10月10日
場所:品川プリンスホテル
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社
近年、胆・膵領域では、疾患の早期発見と内視鏡技術の進歩により、ERCP関連手技を実施するケースが増えている。これを背景に、本稿では胆・膵内視鏡医が望む理想的なX線の在り方を考察し、当センターで使用しているC アームX 線システム(Ultimax-i、東芝メディカルシステムズ社製)による症例画像と使用状況の実例を紹介する。
【KEY SENTENCE】
●ERCP関連手技件数の増加に伴い、X線室での処置や治療が増えている。
●術者の被ばくを減らすためには、アンダーチューブ方式のX線システムが有利である。
●見たいところを確実に見るためには、CアームのX線システムが有用である。
●高度で安全確実な手技を実現するには、「ガイドワイヤーやステントが見える透視像」が重要である。
●複数の画像を同時に見られるマルチモニタは、内視鏡治療の現場で役に立つ。
●内視鏡医が望む理想のX線室の一層の普及が望まれる。
「見える透視像」が有用であったERCP関連手技の実例
高性能なFPD:Flat Pand Detectorとさまざまな画像処理技術によってUltimax-iの画像は高い画質を提供してくれているが、とくに、その透視像の画質がいかに重要か、実際の症例で具体的に紹介する。
・症例1 ENGBD 胆嚢管嵌頓結石
安全確実なERCPを行うためには、ガイドワイヤーの先端を透視像で確認しながら実施することが肝要である(図8a)。胆嚢管にカテーテルとガイドワイヤーを誘導する場合、特に注意を要するのは胆嚢管穿孔である。この症例では拡大画像において、ガイドワイヤーがUターンしながら胆嚢に入ってゆく様子がきちんと見える(図8b)。ガイドワイヤーの位置と動きを目で見て確認することで胆嚢管穿孔のリスクを回避できた。ERCPではまず、「見える透視像」であることが重要なのである。
図8 ENGBD 胆嚢管嵌頓結石(透視像)
・症例2 大腸癌肝転移による胆管複数箇所狭窄に対するメタリックステント(EMS)留置
中部胆管に変位を伴う狭窄が存在し、その上流にも狭窄がある(図9a)。左胆管はまったく造影されていない。そこで左胆管に0.025インチのガイドワイヤーを誘導し(図9b)、カテーテルで造影した。次に、中部胆管の変位を伴う狭窄部から右胆管にガイドワイヤーを通してゆく必要があるが、入り口を探ることが困難であった。そこで、バルーンカテーテルを用いてガイドワイヤー先端の動きを調整し狭窄部を通過させた(図9c)。次に右胆管狭窄部をバルーンで拡張した(図9d)。0.025インチという細いガイドワイヤーでも動きが明瞭に見える。そののち、左胆管に対して1本目のメタリックステントの先端位置を確認しながら留置した。さらに右胆管に対して、左胆管に置いていたガイドワイヤーを抜き、目印のガイドワイヤーを見ながら新たなガイドワイヤーをメッシュの間から通していった。この際もガイドワイヤーの先端がきちんと見えることが非常に重要である。右胆管へ2本目のステントを留置し、左右の肝門部胆管狭窄に対するメタリックステント複数本の留置に成功した。
ちなみに我々が以前使用したことのあるほかのX線システムでは、0.025インチのガイドワイヤーの先端が全く見えなかったが、Ultimax-iでは明瞭に見ることができる。この症例のような複雑な手技に関しては、高性能なX線システムでなければ処置や治療を成功させるのは難しいと考える。
図9 大腸癌肝転移に伴う胆管複数箇所狭窄に対するEMS留置(透視像)
まとめ
X線室での内視鏡的診断および治療件数が増加している。そのような状況のなか、外科的な手術室や血管造影室と同様に、内視鏡室内に高画質低被ばくのCアームX線システムをはじめとした内視鏡医が望むX線室の設備充実が望まれる。あるいは内視鏡医が常時使用できる専用のX線室を備えるなど、積極的に環境を整えることで、低侵襲で効果の高いERCP関連手技が、今後さらに発展、普及してゆくことを期待したい。
(本記事は、RadFan2014年1月号からの転載です)