第41回 日本磁気共鳴医学会大会ランチョンセミナー:Vantage TitanTM 3Tによる 頭部の最新の血管・血流イメージング

Satellite View~Canon Special Session : セミナー報告
2014.02.14

第41回 日本磁気共鳴医学会大会ランチョンセミナー

3T MRIにおける最先端技術

 
日時:2013 年9 月20日(金)
場所:アスティとくしま
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社

座長
 
神戸大学大学院
医学研究科内科系講座 放射線医学分野
杉村和朗先生

Vantage TitanTM 3Tによる
頭部の最新の血管・血流イメージング

 

演者

東京逓信病院放射線科部長
杏林大学放射線科客員教授
土屋一洋 先生

最新の3TシステムVantage Titan 3T(東芝メディカルシステムズ社製、以下Titan 3T)を使用した頭部の血管および血流イメージングに関する有用性を、症例画像と臨床エビデンスで紹介する。これらの多彩な最先端アプリケーションを目的に応じて適切に使い分けることで、中枢神経系のMRI診断の精度向上と適応拡大が可能になると考えられる。
 
KEY Sentence
●3D-TOF法では、1.5T装置で過大評価傾向がある狭窄や閉塞性病態を正確に評価できる。
●高分解能のMRDSAは、血管性病変の血行動態の可視化と脳腫瘍の悪性度判定に有用である。
●ASL法は有用な検査法であるが、病的な血行動態によって生じるアーチファクトやDSC法とのミスマッチに注意すべきで
ある。
●Time-SLIP法を発展させたASL-MRA法は、閉塞性血管障害における側副血行の評価に有用である。
●FSBB法によって、外側線条体動脈(LSA)など微細脳血管の描出が可能になった。
●HOP-MRA法は撮像時間を延ばさずに、TOF法とFSBB法のMRAを同時に得ることができる。
●頭蓋内血管の血管壁イメージングによる閉塞性病変やBAD(branch atheromatous disease)の診断の進歩が期待される。
 

図1 髄膜腫のMRDSA(時間分解能0.6秒、whole MIP)
腫瘍内部の強い濃染像と周囲の脳表静脈(青矢印)が
明瞭に描出されている。
図2 髄膜腫のMRDSA(時間分解能0.6秒、partial MIP)
中硬膜動脈の分枝(赤矢印)が
流入動脈となり腫瘍を濃染している。
図3 悪性神経膠芽腫のMRDSA(造影剤半量投与)
強く不均一な濃染像と、
深部静脈の早期出現(青矢印)がみられる。
図4 神経膠芽腫のDSC法(残りの半量投与)
腫瘍の充実部分のCBVが上昇しており、
悪性度の高さを裏付けている。
図5 左中大脳動脈閉塞のASL-MRA法
TOF法では描出されない側副血行の
詳細な状況が描出されている。
図6 もやもや病STA-MCA吻合術後のASL-MRA法
TOF法に比べ狭窄や側副血行の評価に有用で、
DSAやSPECTとの相関も良好であった。
図7 もやもや病のFSBB法
FSBB法にて外側線状体動脈(LSA)が明瞭に描出されている。
図8 海綿状血管腫+静脈奇形のFSBB法
血管腫のみならず周囲に合併した静脈奇形が
明瞭に描出されている。
図9 右中大脳動脈M1閉塞後再開通の血管壁イメージング
M1の壁肥厚が描出されている。
図10 左BAD(branch atheromatous disease)発症10日後
TOF-MRAでは狭窄を認めないが、血管壁イメージングでは
偏在性のプラークと推測される信号が認められる。
描出能が向上した3D-TOF MRAによる過大評価を抑えた精確な診断

 3T MRIにおける3D-TOF MRAの高画質化は既知の事実である。これは、SN比の上昇とT1緩和時間延長によるTOF効果増大と背景信号抑制が理由である。この結果、末梢血管の描出能に優れ、また近位部の血管も非常に強い信号を得ることができる。たとえば1.5T装置で描出された動脈瘤の場合、3T装置では動脈瘤の存在診断はもちろん、瘤の形態の細部がより明瞭に観察できる。また1.5T装置では欠損にみえた中大脳動脈が、Titan 3Tで開存が明らかになった例を経験するなど、1.5T装置で過大評価される傾向にある狭窄や閉塞性の病態が、Titan 3Tではより正確に評価ができるという印象を持っている。
 
空間分解能が向上したMRDSAは腫瘍の血行動態の視覚的評価を可能に

 MRDSAの時間分解能を0.8秒として、空間分解能(再構成マトリクス)を1.5T装置の236×256からTitan 3Tで512×512へと向上させる検討を行った1)。Titan 3Tの高分解能MRDSAが有用であった髄膜腫の例を示す。スラブ全体のMIPで腫瘍内部の強い濃染像と周囲の脳表静脈を良好に観察できる(図1)。さらにスラブの一部をpartial MIPすると、拡張した中硬膜動脈の分枝が流入動脈となり腫瘍を濃染する様子も観察できる(図2)。高分解能MRDSAは、腫瘍の血行動態の詳細情報をもたらす有用な手法といえる。我々は、脳腫瘍の血行動態を精度よく把握するためのスキームとして、MRDSAとDSC(dynamic susceptibilitycontrast)法の同時施行の有用性を報告した2)。まず造影剤半量にてMRDSAを行い視覚的な血流状態や血行動態の情報を得る。残りの半量でDSC法を施行し半定量的情報を得て、最後に造影T1強調像を撮像する。悪性度の高い膠芽腫の例では、造影剤半量投与で得られたMRDSAでは強く不均一な濃染像および深部静脈の早期出現がみられ、vascularityを視覚的に評価できた(図3)。後半の半量投与によるDSC法では腫瘍の充実部分のCBVが高くなっており、悪性度の高さを裏づけることができた(図4)。
 
ASL法は、病的な血行動態に起因するアーチファクトや低灌流の誇張描出に注意

 ASL(arterial spin labeling)はトピックスとして有用性が議論されているが、本稿ではそのピットフォールを提示したい。これには側副血管など流れの遅い血管から強い信号が発生するvascular artifactと呼ばれる現象がある。また血流速度が著しく低下している場合や、側副血行路を介して血行が向かう部位では、ラベルした血流が十分に撮像スラブ内に到達できず、その結果、低灌流域が誇張される傾向がみられる。また脳腫瘍では、病態の違いや撮像の条件に起因してASL法とDSC法の視覚評価に乖離が生じる場合があり、症例を重ねてさらなる検討を加える必要がある3)
 
ASL法とTime-SLIP法を融合させた新たな発想の“ASL-MRA”法

 非造影MRA手法のTime-SLIP法を血流動態描出に使う試みは従来からなされているが、これを積極的に応用して、血管の形態描出に用いたのがASL-MRA法である。ASL法と同様に、描出したい部分にtagを加え、tagなし画像とをサブトラクションしたのちMIP処理を行う。データ収集は3Dで行い、labelingdelay timeを変え撮像することで主幹動脈から末梢領域の詳細まで描出することができる。左中大脳動脈閉塞の例では、TOF法で描出しえないであろう側副血行の詳細が描出され良好な評価が可能であった。これはTitan3Tの高いSN比によって信号が末梢部まで保持されるためと考えられる(図5)。本手法を用いた狭窄閉塞性疾患に対する検討が報告されている4)。もやもや病のSTA-MCA吻合術後の例では、TOF法に比べてASL-MRA法では著明に末梢信号が保持され、狭窄の状況や側副血行の評価に有用であった。またDSAやSPECTとの相関も良好であった(図6)。ASLMRA法は、無侵襲であること、TOF法に比べ末梢分枝の描出および側副血行やバイパスの評価に優れるという利点がある。他方、撮像時間が比較的長いこと、delay timeを選択しなければならないこと、毛細血管以降のレベルが不十分であることが今後の課題といえよう。これら利点と課題を踏まえた現段階の臨床応用として、血管奇形における存在診断の精度向上や経過観察、閉塞性血管障害における側副血行の評価、腫瘍性病変の血流評価などがある。
 
微細な脳血管を非造影で描出するFSBB法はLSA描出や血管奇形病変に威力を発揮

 FSBB(flow-sensitive black blood)法は、磁化率強調のコントラストをベースにdephasingパルスを付加して微細な血流信号を積極的に低下させる手法である。FSBB法によって外側線条体動脈(LSA)が良好に描出されるようになった。内頸動脈から中大脳動脈の近位部に狭窄が認められる類もやもや病の例では、FSBB法でLSAが明瞭に描出されている(図7)。海綿状血管腫の例では、血管腫のみならずFSBB法で血管腫およびその周囲に合併した静脈奇形と導出静脈が明瞭に描出されている(図8)。
 
HOP-MRA法は、TOF法のメリットとFSBB法の有用性を一度に得られる効率的な手法

 HOP(hybrid of opposite contrast)-MRA法は、3D-TOF法の高信号からFSBB法の低信号を差分することで微細血管の信号を強調するというコンセプトである。撮像時間の延長を避けるためダブルエコーで撮像している。第1エコーを使って3D-TOF法に近い画像、第2エコーを使ってFSBB法の画像を得るが、frequency-weighted subtractionを適用するなどの工夫を加えて、より明瞭な画像が得られるようになった。もやもや病の症例では、TOF法でほとんど描出のない末梢や遠位部の血管を詳細に描出することができた。
 主幹血管の狭窄や閉塞の病態描出およびバイパス手術後のフォローアップにおけるHOP-MRA法の臨床的有用性が近年報告されている5、6)
 
閉塞性血管疾患やBADの病態解明への新たなる試み“頭蓋内血管壁イメージング”

 Titan 3Tで試みられている頭蓋内血管壁イメージングについて紹介する7、8)。撮像シーケンスは高分解能の2D-SE法またはdual echoFSE法を使用している。撮像断面は中大脳動脈M1の長軸に直行するオブリーク断面で壁を評価する。右中大脳動脈M1閉塞後再開通の例では、血管壁イメージングにおけるM1の壁肥厚が描出されている(図9)。TOF-MRAでは狭窄を認められない左BAD(branch atheromatousdisease)発症10日後の例では、血管壁イメージングで偏在性のプラークと推測される所見が得られている(図10)。頭蓋内血管壁イメージングは、従来撮像プロトコルでは描出しえない閉塞性血管疾患の病態を解明する有用な手法として今後に期待できる。さらなる症例の蓄積と臨床的検討を進めていきたい。
 
結語

 中枢神経系の診断に有用なTOF-MRA、MRDSA、ASL法、ASL-MRA法、FSBB法、HOPMRA法といった新しい先端的なアプリケーションに関する撮像技術の概要と臨床エビデンスについて、Titan 3Tの経験を中心に紹介した。これら各手法の特長を活かした適切な使い分けによってその有効性が発揮されることを期待したい。また頭蓋内血管壁イメージングは、閉塞性血管の病態を詳細に解明する有用な手法として、さらなる症例検討を重ねて有用性を探っていきたい。
回覧

 
<文献>
1) Tsuchiya K et al: High-resolution time-resolvedcontrast-enhanced MR angiography of braintumors at 3T. American Society of Neuroradiology,June4-9, 2011, #501
2) Tsuchiya K et al: Consecutive acquisition oft i m e – r e s o l v e d c o n t r a s t – e n h a n c e d M Rangiography and perfusion MR imaging withadded dose of gadolinium-based contrast agentaids diagnosis of suspected brain metastasis.Magn Reson Med Sci 12: 87-93, 2013
3) Tsuchiya K et al: Comparison of cerebral blood fl owon perfusion MRI by using arterial spin labeling anddynamic susceptibility contrast in brain tumors.第72回日本医学放射線学会学術集会, 2013
4) Tsuchiya K et al: Value of noncontrast MRdigital subtraction angiography using arterialspin labeling in the diagnosis of occlusivediseases of major intracranial arteries. PaperO-108, 51th. Annual Meeting, ASNR, 2013
5) Tsuchiya K et al: Hybrid of opposite-contrastmagnetic resonance angiography of the brainby combining time-of-flight and black bloodsequences: its value in moyamoya disease. JComput Assist Tomogr 34: 242-246, 2010
6) Tsuchiya K et al: Postoperative evaluation ofsuperficial temporal artery-middle cerebralartery bypass using an mr angiographytechnique with combined white-blood and blackbloodsequences. J Magn Reson Imaging 38:671-676, 2013
7) 高橋沙奈江ほか: 頭蓋内主幹動脈のプラークイメージングの撮影条件の検討. 第41回日本磁気共鳴医学会大会, 2013
8) 五明美穂ほか: 中大脳動脈M1狭窄における頭蓋内プラークイメージングの初期臨床応用. 第41回日本磁気共鳴医学会大会, 2013
 
(本記事は、RadFan2013年12月号からの転載です)

会員ログイン
メディカルアイ

Facebook始めました!
このページの先頭へ戻る