透析エコーの実践と評価
飯田橋春口クリニック
春口洋昭 先生
はじめに
かつて、約15年前の超音波検査では、VA合併症の診断においてBモードの画質は発展途上で、カラー画像においてグラフトの静脈吻合部の内膜肥厚がやっと評価できるような状況であった。しかし近年の技術進歩により、Bモードの画質は大きく改善し、血管内部が明瞭に評価できるようになった。さらに従来のカラードプラだけでなくAdvanced dynamic fl ow(ADF)を用いることで、診断の質が向上してきている。治療の場面でも超音波ガイド下PTA(経皮的血管形成術)は積極的に実施されており、超音波検査の有用性はさらに広がっている。
狭窄部位および穿刺部位と血流量、血管走行の関係性
狭窄部を知る方法
狭窄病変の治療
閉塞に対する治療
瘤の観察ポイントと治療法
VA合併症は、脱血不良、脱血不能、静脈圧上昇などの透析で生じる症状と、静脈高血圧症、スチール症候群、瘤、痛み、感染など患者に生じる症状に大きく分けることができる。動・静脈瘤については、吻合部の瘤なのか、それ以外の部位なのかということは治療を考える上で非常に重要である。そして、血管壁が残っている真性の瘤か、穿刺によって生じる血管壁を持たない仮性の瘤に分類される。仮性の瘤ができる原因は、穿刺孔からの出血による血腫形成に基づくものが多く、止血不良などでも一瞬のうちに生じることがある。また人工血管であっても止血不良により小さな瘤が形成され、その瘤が重なって大きな瘤が生じることもある。
超音波検査での瘤の観察ポイントとしては、瘤のサイズ、壁在血栓の有無、壁石灰化の有無、吻合部瘤の流入動脈がどうなっているか、瘤前後の狭窄病変、皮膚から瘤の血管前壁までの距離などが挙げられる。手術法はグラフトで置換する方法やパッチを当てる方法、血管壁を直接縫合する方法などが用いられる。
静脈高血圧症の観察ポイントと治療法
スチール症候群の観察ポイントと治療法
最後に
VA合併症はさまざまあるが、超音波検査を行う前にまず、なぜそのトラブルが起きたのかを考え、マッピングができる程度の理学所見を取ることが大切である。その上で超音波検査で確認していくことが重要であり、それにより効率的で正確な診断が得られ適切な治療につながると考える。