第21回 日本乳癌学会学術総会ランチョンセミナー:「高分解能超音波」と「MRI」を用いて乳腺画像を読み解く

Satellite View~Canon Special Session : セミナー報告
2013.09.30

第21回 日本乳癌学会学術総会ランチョンセミナー

「高分解能超音波」と「MRI」を用いて
乳腺画像を読み解く

 
日時:2013 年6 月28 日( 金)
場所:アクトシティ浜松
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社

座長
 
社会福祉法人三井記念病院
乳腺内分泌外科
福内 敦 先生

乳房MRIの基礎の基礎

 

演者
 
がん研有明病院画像診断部
五味直哉 先生

乳房MRI 検査に求められるもの
 MRI の有用性としては、まず高コントラスト分解能、すなわち白・黒がはっきりしていること、次に出血、石灰化、高濃度蛋白などの生化学的情報が得られること、任意の撮影断面で撮像できること、X 線被ばくがないこと、さらに病変の検出感度が高いことなどが挙げられる。一方、MRI の欠点としては、撮像時間が長い、体動や呼吸性移動に弱く、アーチファクトが入りやすい、石灰化が造影されない、ペースメーカーや金属、閉所恐怖症など対象患者に制限がある、疾患の特異度が低い、などが挙げられる。
 乳房MRI 検査においては、両側同時撮像を行うため、DynamicMRI に対応した乳房専用コイルが必要であり、たとえば左と右で大きく乳房の形状が異なる症例にも対応できる性能が要求される。また脂肪抑制画像や、Dynamic などは乳房MRI 検査には必須の項目として挙げられる。乳房MRI における撮像または検査のプロトコールとしては、脂肪抑制T2 強調画像、T1 強調画像、Dynamic、高分解能T1 強調画像および拡散強調画像などが用いられるが、その中でも基本となるのが、脂肪抑制T2 強調画像、T1 強調画像、Dynamic である。当院では昨年、東芝メディカルシステムズのVantage Titan 3T を導入したが、本装置はこれらの条件を満たすものであり、従来、脂肪抑制不良により乳房の高精細な画像の描出は難しいとされていた3T においても、高性能な描出が可能となった。
 

図1 T2 強調画像
図2 症例3 粘液癌
T2 強調画像
 脳のT2 強調画像においては、水の多い部分、たとえば脳脊髄液は白い高信号として、水の少ない部分は黒い低信号として、さらに皮下脂肪などの脂肪は白い高信号として描出される。脂肪抑制という処理を施して、脂肪を黒い低信号として描出されるよう
にすると、乳腺はやや白い~白い、脂肪・筋肉は黒い、嚢胞、壊死、粘液、浮腫は白い信号として描出される(図1)。本手法により撮影した症例を紹介する。
 
 ■症例1 乳管内乳頭腫
 乳管内乳頭腫の症例では、T2 強調画像で嚢胞における液体貯留部分が白く描出され、Dynamic では、その液体貯留部分の中に突出する乳頭状病変部分が、早期相より濃染される。このような嚢胞状腫瘤は、T2 強調画像で白く描出される代表的な病変である。
 
 ■症例2 良性葉状腫瘍
 良性葉状腫瘍症例においては、左乳房の粗大な腫瘤は、間質がT2 強調画像で白く描出され、Dynamic では緩徐に濃染される。このように粘液浮腫状の間質は、T2 強調画像では白く描出される。
 
 ■症例3 粘液癌
 粘液癌の症例では、マンモグラフィで左乳房に濃度勾配を伴わない分葉状の腫瘤が認められ、超音波画像では、皮下脂肪と同程度のエコーレベルの腫瘤が認められた。粘液癌は、T2 強調画像では著明に高信号に描出されるのが特徴である。Dynamic では粘液の中に癌胞巣、腫瘍血管が浮いているような病理組織(図2)を反映して辺縁部からゆっくりと造影されるという特徴がある。T2 強調画像では、粘液は白く描出される。
 
 ■症例4 二次性炎症性乳癌
 局所進行乳癌に認められる二次性炎症性乳癌の症例では、乳房の変形とともに皮膚に発赤が認められる。マンモグラフィでは、粗大な腫瘤と、浮腫を伴った皮膚および梁柱の肥厚が認められる。T2強調画像では、浮腫を伴って肥厚した皮膚、靭帯が白く描出される。
 
 ■症例5 中心部に線維化を伴った硬癌
 線維化を伴った症例で、T2 強調画像において白く描出される部分と、その内部の黒く低信号に描出される部分とがある。白く描出される部分はDynamic の早期相から強く造影されるが、黒く描出される部分は、早期相ではあまり造影されず、後期相で緩徐
に造影される。このように線維化はT2 強調画像で黒く低信号に描出される。
 
T2 強調画像のまとめ
 T2 強調画像は、水が白く描出されるのが特徴である。乳腺疾患においては、嚢胞性腫瘤、変性、壊死、浮腫、粘液浮腫状の間質、粘液などが白く描出される。その一方で線維化部分は黒く描出される。
図3 T1 強調画像
図4 症例6 生検による血腫
図5 症例7 DCIS
図6 症例10 硬癌
図7 症例12 粘液癌
図8 症例13 同時両側乳癌
T1 強調画像
 T1 強調画像では、水は黒く低信号に、脂肪は白く高信号に描出される。乳腺は脂肪の中で靭帯によって支えられている構造をもっていて、T1 強調画像では白く描出される脂肪の中に、乳腺はやや白く、筋肉は黒く描出される。脂肪抑制処理をかけると乳腺を取り囲む脂肪は黒く描出され、その中に乳腺がやや白く描出される。嚢胞、壊死は黒く描出される。また血腫はT1 強調画像で白く、高信号に描出される。造影剤を用いたDynamic MRI はT1 強調画像を基本とした撮像シークエンスである(図3)
 乳房MRI 撮像シークエンスでは、その大半が脂肪抑制パルスで脂肪を打ち消す処理を行って撮像する脂肪抑制を用いた撮像方法である。従来の脂肪抑制法は、1 発の脂肪抑制パルスで脂肪の抑制が不完全であることがあったが、脂肪抑制パルスを2 発打つことによって、より完全に脂肪を抑制することが可能となった。東芝では2 発の脂肪抑制パルスで撮像時間を延長せずに高い脂肪抑制効果を得る方法が採用されている。
 
 ■症例6 生検による血腫
 生検による血腫を認めた乳癌症例では、非造影T1 強調画像で結節状の血腫が白く描出され、造影T1 強調画像では、造影された腫瘍が血腫の内側に描出されている(図4)。Dynamic における時間- 信号曲線では、腫瘍部分は悪性を示すrapid-washoutpatternを呈している一方、血腫は高信号のまま信号強度は変化していない。
 
 ■症例7 非浸潤性乳管癌(DCIS)
 左乳頭分泌を主訴に来院した非浸潤性乳管癌では、造影前のT1強調画像で血性分泌を反映していると思われる拡張乳管が白い樹枝状の高信号域として認められた。またDynamic では、拡張乳管の周囲に結節状の病変が描出された。このDynamicから、造影前の画像を差し引いたサブトラクション画像を作成すると、より明瞭に乳管内病変の広がりを確認することができる。さらに造影前のT1 強調画像からMIP 画像を作成すると、あたかも乳管造影を施行したかのような、樹枝状の口径不同の拡張乳管が認められ、Dynamic 早期相のMIP 画像では口径不同の拡張乳管の周囲、もしくはその末梢に、区域性に広がる、非浸潤性乳管癌の病変が描出された(図5)。動画にすると、乳管と病変との関係が理解しやすい。手術標本では、T1 強調画像で白く描出されていた拡張乳管周囲に、Solid-papillary、cribri-papillary type のDCIS が広がっていた。
 
造影剤を使用したDynamic MRI
 当院では、Dynamic については、30、70、300 秒の3 相の撮像を行っているが、時間? 信号曲線は、病変によりさまざまなパターンを呈する。Dynamic では造影剤は、血流に乗って病変まで到達後、腫瘍血管外へ漏出し病変の間質へ移動した造影剤の濃度を造影効果として描出するもので、この造影効果を規定するのは、血流、血管透過性、間質の状態などである。
 
 ■症例8 充実腺管癌
 充実腺管癌の症例では、早期相(70 秒)で腫瘍全体が強く造影された。時間-信号曲線を描いてみると、rapid-washout-patternであり、充実腺管癌のように間質の少ない腫瘍では、典型的な悪性パターンを示すことがわかる。
 
 ■症例9 硬癌
 硬癌でも、やはり早期相で強く造影されるが、腫瘍の間質を反映して時間-信号曲線はrapid-persistent-pattern を呈している。
 
 ■症例10 硬癌
 本症例では、辺縁部にリング状の造影が認められ、線維化を伴っていると考えられる中心部は早期相では造影は弱く後期相で強く造影された。時間-信号曲線を描くと、外側はrapid-persistentpattern、中心部の緩徐に濃染される部分はmedium-persistentpattern
を呈しており(図6)、同一腫瘍の中でも、構築の違いにより造影パターンに差が出ることがわかる。
 
 ■症例11 葉状腫瘍
 本症例では、T2 強調画像において粘液浮腫状の間質が白く描出され、Dynamic では緩徐に濃染された。時間? 信号曲線を描くと、なだらかに立ち上がるパターンを示し、粘液浮腫状の間質に造影剤がゆっくりと漏出していく状況が、時間-信号曲線に反映されることがわかる。このようなパターンは良性疾患に多く、良性パターンと呼ばれている。
 
 ■症例12 粘液癌
 本症例はエコーレベルが高く、後方エコーが増強する典型的な超音波像を示す。T2 強調画像では白く描出される。時間-信号曲線では、粘液中の癌病巣が多い部位は比較的急峻な立ち上がりがみられ、その後漸増するパターンを示すが、粘液の中にほとんど癌病巣がみられない部位ではごく緩徐に濃染される(図7)。このように粘液癌は、Dynamic MRI でも特徴的な所見を示す。
 
 ■症例13 両側乳癌(MRI 検出病変)
 両側Dynamic を撮影することにより、両側の乳房の詳細な画像所見を得ることができる。本症例では左乳癌の術前検査として施行したMRI のDynamic で左乳房内に多発する浸潤癌が認められ、また対側右C 領域に小さな結節が認められた。この対側の小結節の時間-信号曲線はrapid-washout-pattern を呈していてMRI 上悪性の可能性が示唆された。
 本症例では、横断画像の情報をもとに、再度超音波を施行した(2nd look US)。丹念に超音波で検索し、スクリーニングの超音波では指摘しないような小さな低エコー域がMRI で検出された小結節に相当すると判断して穿刺吸引細胞診を実施(図8)した。結果は悪性で同時両側乳癌と診断した。近日中に手術が行われる予定である。

まとめ
 乳房MRI 画像をいかに読み解くかをテーマとして、新規に導入したVantage Titan 3T を使用し、どのプロトコールを用いて、どのような画像が得られるか、またその画像をどのように解釈すべきかについて解説した。各疾患の特徴を知り、T1 強調画像、T2 強調画像、Dynamic MRI の所見を、症例により組み合わせて診断を考えることが重要と考えられる。

 
 

(本記事は、RadFan2013年5月号からの転載です)

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