第40回 日本放射線技術学会秋季学術大会ランチョンセミナー6:次世代CT、MRIによる イメージングイノベーション

Satellite View~Canon Special Session : セミナー報告
2013.01.31

第40回日本放射線技術学会秋季学術大会 ランチョンセミナー6

次世代CT、MRIによる
イメージングイノベーション

 
日時:2012 年10 月5 日(金)  
会場:タワーホール船堀   
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社

座長
 
東京女子医科大学病院
江島光弘先生

下肢MR Angiographyの検査が変わる!
Non-ECG-Prep法によるEasy FBI
~非造影MRAの新たなる展開~

 

演者
 
社会医療法人共愛会 戸畑共立病院 画像診断センター
山本晃義先生

はじめに
 従来、下肢の非造影MR Angiography、すなわち造影剤を使用しないFBI法により血管検査を行ってきたが、このような撮影方法の歴史的背景、およびECG-Prepを必要としないFBI検査を可能にした、新しいNon-ECG-Prep法であるEasy FBIについて解説したい。
 

図1 FBI検査におけるアーチファクトの発生原因と対策
FBI法の開発および発達の歴史
 1996年にFBI法の開発が開始され、1998年には臨床に応用されはじめた。FBI法は動脈および静脈の両者を描出できるが、動脈のみの血管診断はできなかった。そこで当時は、どのようにして動脈だけを抽出するかに研究の主眼が置かれており、動静脈分離が実現したのが2000年であった。ちょうど同じ頃、ECGPrep法が使用されるようになった。これは心臓周期の拡張期また収縮期の時相を決定するための手法で、この手法が大きく発展していく。また2000年にはt-SLITという手法も開発され、これは2002年にTime-SLIPという名称に変更されている。同時に、造影剤を使用せずFBI法により肺の血流を描出するPhase Subtractionの開発が試みられた。本法は2Dから3Dへと発展し、これに伴い主幹動脈は明瞭に描出できるようになったが、末梢の血管はまだ十分な画像が得られなかった。そこでFlowSpoiled FBIの開発が始まった。
 2001年からは、これらを非造影で行うNon-CE(Non-ContrastEnhancement)MR-DSAの開発が開始され、2004年には、従来2Dで行っていた非造影による血流の撮影を3Dで行うFlowMotion FBIが開始された。このころになるとFBIはかなり発達し、Flow AdjustedやPhase Adjusted FBIが行われるようになった。2007年頃にはFBI法が一般に広まったが、画質は十分とは言い難かった。そこでFBI- Naviというソフトウェアが開発され、その結果、血管描出の成功率がかなり上昇した。
 0.5Tで初めて撮影したFBIの下肢全体の血管像は、非造影であることをなかなか信じてもらえないほど良好に描出されており、当時としては非常にショッキングな画像であったようである。我々は0.5Tで研究を開始し、現在は3Tを使用して下肢血管、腹部の血管、肺血管、門脈、静脈、頭頸部の血管像などの非造影FBIの研究を行っている。
 実際の臨床では、2005年、当院において狭窄率50%を超えるASO患者を対象に、造影CTとFBIの血管描出能を比較し、両者の精度がほぼ同等であることを報告している。さらに2007年の日本磁気共鳴医学会大会において、FBI撮影におけるアーチファクトの発生原因と対策に関して発表し、アーチファクトの原因として、骨盤領域での腸管の蠕動運動、膀胱での生理的な運動、さらに患者の体動が最も多くみられることを報告した(図1)。この結果より、腸管の蠕動運動や膀胱の生理的な運動は抑えることは不可能であるものの、体動を抑えることでアーチファクトを低減できることが明らかとなった。
 さらに2010年になると、Easy FBI(Auto-ECG)の開発が開始された。
図2 delay timeの選択違いによる血管描出の相違
FBI法の問題点
 ところがFBI法は経験値による差が大きく、FBIに熟練した診療放射線技師と、経験の少ない不慣れな診療放射線技師とでは画質の差を生んでしまうことがわかってきた。実際のFBI撮影を行う前に、時相の異なるECG-Prepを撮影し、その画像から、もっともよいFBI画像が得られる時相を予測するが、たとえばheartrateが非常に速い症例では時相の選択は非常に困難で、ときに誤った選択をするという事態が発生する。たとえばある若い診療放射線技師はdelay time 500msという時相を選択した結果、一部の血管で欠損が生じ、700msで撮影し直して良好な画像を得ている(図2)。またやはりheart rateの速い症例において、500msでの撮影では右の大腿動脈が描出されていなかったため、700msで撮影し直したところ、大腿動脈は明瞭に描出されたものの他の部分が十分に描出されない、といったことも起こっている。非造影なので撮り直しは可能であるものの、患者の拘束時間を考えるとやはり1回でよい画像を撮影することが望まれる。場合によっては、多少delay timeの選択を間違えただけで、ミスレジストレーションのアーチファクトが多数出現した画像ができてしまうこともある。
 このように、現時点でのFBI検査においては、患者の体動による背景信号の抑制不良に加え、ECG-Prepでの最適時相の選択ミスがもっとも大きな問題となる。被験者の体動の問題に対しては患者の固定方法の工夫により解決できるが、ECG-Prepの時相の選択は、完全にオペレーターの経験や知識に依存しているため、これまでは現場の経験値を増やす以外に解決法がなかった。

最適な時相が自動選択されるEasy FBI
 先述したFBI-Naviは最適なdelay timeを判定するためのソフトウェアである。横軸にR波からのdelay time、縦軸にsignalintensityをとり、動脈にROIを設けることにより、delay timeごとに信号強度が変化したグラフが得られ、その中から最適なdelay timeを選択することができる。収縮期、拡張期別にdelaytimeを選択することによりECG-Prepの画像が得られる、非常に便利なソフトウェアである。それでも人間の目は経験則に依存し、選択を失敗する場合もある。そこで、ECG-Prepを必要としないEasy FBIが開発された。本法により、経験年数に依存せず、従来法に匹敵する明瞭な画像が得られるようになった。
 Easy FBIの実際の検査においては、Locator、Map撮像に続き、心電図読み込みを行うだけで撮像を開始することができる。従来のECG-Prepによる方法と比較すると、非常に簡便である。
 

図3 ECG-PrepとEasy FBIの画像の比較(健常ボランティア)
図4 経験年数の違いによるdelay timeの決定時間の比較結果
図5 delay time決定に要する時間の比較結果
Easy FBIにより得られた画質の評価
 1.5TのMRIを使用しEasy FBIを行った経験を示す。まず下肢血管における撮像時間は、従来のFBIでは患者が装置に入ってから出てくるまでの時間は、ボランティア7例の平均で27分26秒であった。一方Easy FBIでは21分で、6分ほど短縮された。6分の短縮は患者にとっては非常にメリットが大きいと考えられる。また描出能をA:中枢血管・末梢血管が明瞭に描出されている、B:中枢血管の描出は明瞭であるが末梢血管の描出が一部不明瞭である、C:中枢血管・末梢血管の描出が一部不明瞭な部位がある、D:中枢血管・末梢血管にボケが見られて不明瞭な部位がある、の4段階で、診療放射線技師3名が評価した。その結果、Aの評価がもっとも多く、両検査でほぼ同程度であった。実際の画像を比較しても、ほぼ同等な画像が得られている(図3)。なお、当院では10年以上FBIを行っているが、自分の目でdelay timeを選択した画像よりも、Easy FBIの画像が勝っていた例が2、3例あった。
 また当院において、ボランティア5名を対象として、従来法であるECG-PrepとEasy FBI法の描出能の比較を行った。画像評価は、FBI検査の経験が1 ヶ月~ 7年の診療放射線技師10名を経験年数別に、A:1年未満(4人)、B:1~5年未満(4人)、C:5年以上(2人)の3群に分けて比較した。まず収縮期時相のdelaytimeの幅をみると、Easy FBIを使用したボランティア5名の間で差はほとんどみられなかった。一方、目で見て判断する必要のあるECG-Prepでは、A群ではかなり選択したdelay timeのばらつきが大きく(図4)、診療放射線技師間で画質の差が生じることが示唆された。拡張期時相では、経験が1年未満では、ECGPrepにおいて選択したdelay timeのばらつきがかなり大きくなっている。また経験が1~5年未満では、従来法とEasy FBI の結果はほぼ同じであったが、delay timeの選択にはやはりばらつきが認められた。一方、経験が5年以上では、Easy FBIと従来法の結果はほぼ同じで、Easy FBIはECG-Prepと同等もしくはそれ以上の結果を出せるようになったと考えられた。
 一方、delay timeの決定に要する時間を比較すると、ECGPrepでは、経験が1年未満では5分ほどかかっている。また経験が1~5年未満では4分、経験が5年以上でも3分ほどと、意外に時間がかかっている。一方、Easy FBIは迷う時間がないため、いずれの診療放射線技師もほとんど時間を必要としなかった(図5)。この点が、ECG-PrepとEasy FBIとの決定的な違いと考えられた。
図6 ASOを疑われて検査を行った臨床症例(左図:動脈像、右図:静脈像)
Easy FBIにより撮影した臨床例の提示
 実際の症例をEasy FBIで撮像すると、heart rateが65bpmのASOが疑われる症例において明瞭に血管は描出された。EasyFBIと、従来法であるECG-Prepとを比較したところ、heartrateが75bpmとかなり速い症例でも、Easy FBIで得られた画像は従来法とほぼ同等であった。図6に示すようにEasy FBIで、動静脈分離の動脈画像を撮像すると、静脈のみの画像も得られ、いずれの画像も明瞭に描出されていた。heart rateが80bpmと速い症例においても、collateralも明瞭に描出され、閉塞部位も同定可能であり、ソフトウエアの完成度の高さがうかがわれる。またheart rateが75bpmの左総腸骨動脈閉塞症例において、下腿だけでなく腹部までの撮影を試みたところ、腹部から下腿までの血管はすべて明瞭に描出された。さらに上方の胸部の動脈から下肢の血管までを撮影したところ、1回目の撮影では胸部において良好な画像が得られなかったため、自身の目でdelay timeを選択して再度撮影し直し、明瞭な画像を得ている。このようにdelaytimeをマニュアルで再設定することも可能である。


まとめおよび将来の展望

 Easy FBIを用いることにより、下肢血管全域の検査時間を従来法に比べ3割程度削減することが可能であった。また経験年数に依存せずに検査することが可能であり、画質は従来法とほぼ同等であった。なお、Easy FBIは、PaceMakerという名称で商品化される予定である。 今後の課題としては、不整脈症例に対するソフトウェア上での対応、時間短縮、描出不良の際の対策、さらに全身非造影MRAの検査法への適応が挙げられる。例えば、ボタンひとつで血管の検査が可能となるようなシステムができれば、将来、全身の血管ドックも可能になるであろう。

 
 
(本記事は、RadFan2013年1月号からの転載です)

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