第36回 日本脳神経 CI 学会総会ランチョンセミナー LS-2 :脳神経領域におけるCT、MRの新展開 ~320列面検出器CTと3テスラMRの最先端臨床応用~

Satellite View~Canon Special Session : セミナー報告
2013.06.30

第36回 日本脳神経 CI 学会総会 ランチョンセミナー LS-2

脳神経領域におけるCT、MRの新展開
~320列面検出器CTと3テスラMRの最先端臨床応用~

 

日時:2013 年2 月23 日( 土)
場所:広島国際会議場
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社

座長

社会医療法人禎心会病院脳卒中センター
谷川緑野先生

中枢神経領域におけるVantage Titan 3T の有用性
~より価値ある検査を目指して~

 

演者

社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院中央放射線部
笹尾 明先生

図1 1.5T 装置とVantage Titan 3T の画像比較
図2 ASL の原理
図3 60 歳 女性 髄膜腫の症例
図4a Bulk flow imaging で髄液の流れを確認
図4b 術後の様子
図5 51 歳 男性 髄膜腫の症例
図6 86 歳 女性 膠芽腫の症例
図7 85 歳 男性 脳膿瘍の症例
図8 FSBB 法による画像
図9 膠芽腫の症例
はじめに
 3T MRIは、従来の1.5T MRIに比べて高い信号強度により高画質・時間短縮が期待できることから、近年、急速に普及してきている。しかし現状の日常臨床では、3Tの高いパフォーマンスを十分に活用するための撮像法整備・ルーチン検査化は容易ではない。
 当施設では、2011年10月、東芝メディカルシステムズ製3TMRI Vantage Titan 3Tを導入し、日常臨床を基本とした撮像法の改善を行っている。今回、比較的短期間の使用経験ではあるが、ASL(Arterial Spin Labeling)の臨床応用、脳脊髄液のBulk flow imaging、MRS(MRスペクトロスコピー)、および当院と熊本大学で共同研究を行っている位相差強調像という新しい画像処理技術について取り上げ、中枢神経系の臨床画像の供覧を中心に3T MRIの臨床的有用性を報告する。
 
3T MRI装置の特徴
 3T MRI装置は、まずS/Nが高いということが利点としてあげられる。一方、欠点としては、撮像時の音が大きいことと、発熱しやすいシーケンスがあり、SAR(比吸収率)の制限がかかりやすいということがあげられる。また、RF磁場(B1)不均一の影響、ケミカルシフトの影響、磁化率効果の影響が大きくなり、T1緩和時間が延長するという、利点にも欠点にもなりうる特徴がある。
 Vantage Titan 3Tは、静磁場(B0)の均一に加え、RF磁場(B1)不均一の影響を補正する“2ch、4portのMulti-phase Transmission”が搭載され、3T MRIの最大の弱点ともいうべき画像の不均一性が改善された。また、ガントリー開口部71cmという開放的な検査空間“Pianissimo機構”による撮像音の軽減など、検査の質を担保して、さらに患者にやさしい環境が実現されている。
 図1に、1.5T装置による画像とVantage Titan 3Tによる画像の比較を示す。この症例は一過性脳虚血発作で入院し、当日に1.5T装置で撮影したものを、Vantage Titan 3Tでフォローした画像である。1.5T装置で狭窄様にみえた部分が、Vantage Titan3Tでは明瞭に描出されており、狭窄ではないことが示唆される。
 

非造影MR灌流画像(ASL)
 灌流画像には、造影剤を使用したDynamic SusceptibilityContrast (DSC)法というT2やT2*効果を利用した従来の方法と、最近開発されたArterial Spin Labeling(ASL)法がある。ASLは、血液に磁化を与えてそのT1値の変化を画像化するもので、3Tになって画質が向上し臨床応用が進められてきた。灌流画像の分類としては、CT-perfusionやMRI-DSC法など血管内の血流を反映する非拡散系灌流画像と、Xe-CTやASL、SPECT、PETなど脳組織内の血流も直接観察できる拡散系灌流画像の2つに、大きく分けられる。
 ASLの大まかな原理を図2に示す。まずControlの画像を撮像し、次いでラベリングした後の画像を取得しそれを差分することで、灌流の情報が得られるというものである。ここでは、先に述べているT1緩和時間が延長するということが非常に重要になってくる。それは、ラベリングした血液の信号(主にT1値の変化)持続時間が延長するということと同義であり、ラベリングした場所から離れた部分での灌流情報を得ることができるからである。ただし、3T MRIでは、RF penetrationの低下という、RF波が対象物の中心部まで届きにくいという欠点がある。しかし、その欠点も頭部ではさほど強くは現れない為十分有用な画像になっていると思われる。
 ASLには、ラベリングパルスを印加し続けて撮像するContinuousASL法と、パルス状にラベリングパルスを印加するPulsed ASL法の2種類がある。前者では高いSNRが得られるがSARも高くなり、後者ではSNRが比較的低くなるがSARも低く抑えられることが特徴で、東芝メディカルシステムズの「ASTAR」と呼ばれるASLはPulsed ASL法に分類される。
 図3に症例を示す。髄膜腫が頭頂部にあるが、ASLでは、脳実質部より腫瘍部での灌流が上昇しており、富血管性腫瘍であることが一目でわかる。
 T2強調像で撮影すると矢印で示した部分に灌流していく静脈の拡張が描出されている。後述のFSBBという東芝メディカルシステムズ独自の方法で撮影すると、その血管がさらに強調されてみえる。
 
脳脊髄液動態画像(Bulk flow imaging)
 Bulk flow imagingの原理は、まず撮像断面のすべての信号を抑制して、次にその関心領域の信号のみを回復させる。そして、その回復した部分に存在する液体の高信号成分や信号回復部周囲の抑制された低信号成分が移動する動きを画像化する手法であり、Time-SLIP ASL法の一環として開発された。
 図4aは先天性の水頭症の症例である。Bulk flow imagingで矢印で示した部位の脳脊髄液の流れを確認したところ、中脳水道にはほぼ流れがみられず、橋前槽には流れがみられたため、第三脳室底部を開窓する手術が施行された。図4bはその術後で、Bulk flow imagingでは開窓部に脳脊髄液の流れがみられ、信号回復部の中には周辺部からの低信号液体の流れ込みもみえる。またT2強調像では、矢印の部位に脳脊髄液の流れによると思われるジェット状の信号がみられる。
 
1H-MRSの臨床応用
 1H-MRSとは、生体内に含まれる水素原子核の状態を調べる方法で、有機化学の分野では、一般的な手法である。人体を構成しているのは水(60~70% )、タンパク質、脂質、無機塩類、金属元素、代謝関連物質(アミノ酸、核酸、糖類など)などで、無機塩類、金属元素以外はほとんど1Hを含んでいるため、理論上は大部分が撮像可能であるが実際は信号が小さく評価は難しい。それぞれの物質には、その化学構造内における1Hの位置によって特有の共鳴周波数があり、その共鳴周波数を基準物質TMS(テトラメチルシラン)の1Hから得られる単一周波数を0ppmとして相対的に表すことができる。本稿では中枢神経がメインであるので、対象となる代表的な物質としては、神経細胞に含まれているNAA(N-アセチル アスパラギン酸)、細胞膜の成分であるコリン、エネルギー代謝や細胞密度に依存するクレアチン(この3つは中枢神経病変のMRSでよく検討項目とされる)があり、さらに嫌気性代謝の指標となる乳酸(Lac)や壊死、細胞の破壊などを表す指標となる脂肪(Lip)などがある。健常脳のMRSでは、NAAが高く、コリン、クレアチンが低くなる。
 図5の症例は髄膜腫であり、腫瘍内に神経細胞が含まれていない為NAAの信号がなく、隣接した部分に信号があるようにみえる。これはグルタミン酸やグルタミンからの信号と思われる。一方、コリンの信号は高くなっており、腫瘍の細胞密度が高いことが示唆される。図6は膠芽腫の症例で、NAAの信号低下と、コリンの著明な信号上昇を認める。NAAの信号が残っているということで、神経由来の細胞が関心領域内に混在していることがわかる。
 図7は脳膿瘍の症例で、T2強調像および造影後T1強調像だけでは脳膿瘍であるという判定はなかなか難しいが、MRSでは、NAAの高磁場側(右側)にアラニンと乳酸の信号がみられ、膿瘍の可能性が高いと診断し、手術にて膿汁の排出がみられた。
 
FSBB(Flow Sensitive Black Blood)法と位相差強調像
 最後に、FSBB法と位相差強調像について説明する。FSBB法は、図8に示すようにT2*強調像のような画像が得られるが、BlackBloodで血管をさらに黒く描出することができる。かなり遅い血流まで描出することができ、もやもや血管や細い静脈の構造なども明瞭に描出することが可能である。また、このシーケンスでは弱いMPGパルスを印加していることが特徴である。
 図9は膠芽腫の症例で、FSBBで得られた画像から位相差強調画像化法(PADRE)を使用し合成したものである。実際の撮像としてはFSBBを撮像するだけで、あとはコンピュータ上で位相情報を使用し画像を作成するのであるが、左は血管が強調される画像、右は神経走行が強調される画像である。血管が強調される画像では、腫瘍周囲で拡張した静脈と思われる小さな血管構造が明瞭に描出されている。また神経走行が強調される画像では、健常側の視放線は明瞭に全ての走行が描出されているのに対して、腫瘍が浸潤していると思われる部分では視放線が途絶している。この現象は、視野が1/4欠損しているという症状によく合致していると思われる。
 
 以上、比較的短期間ではあるが、3T MRIの使用経験をもとに中枢神経系の臨床画像を供覧し、その臨床的有用性を報告した。

 
 
※早速のご対応、用法・用量に関連する使用上の注意(抜粋) ・肝細胞癌に対する局所療法との併用について、有効性及び安全性は確立していない。

 
 
(本記事は、RadFan2013年6月号からの転載です)

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