第72 回 日本医学放射線学会総会ランチョンセミナー 26:講演2
日時:2013 年4 月14 日(日)
場所:パシフィコ横浜
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社
3T MRIの特性
上述の方法は、これまで1.5T装置でも十分に活用されていた。しかし3T装置を使用することでSNRは大きく向上し、さらにtrue SSFPを使ったTime-SLIP法では、inflow効果の増大、T1値の延長など、血管描出にとっては良い方向に作用する。一方でB1不均一は、特にFBI法で問題になる。SARの増大やsusceptibilityeffectの増大もデメリットとなる。 それを克服する方法の1つとして、東芝メディカルシステムズ製3T MRI装置「Vantage Titan 3T」にはMulti-phase Transmissionが搭載されている。Multi-phase Transmissionを用いることで、不均一なflip angleが是正されるため、画像ムラのない良好な画像を得られるようになり、SARの問題も軽減される。また、肺との境界になる肝臓の領域では磁場不均一によるbandingartifactが発生することが多いが、磁場調整を行いlocal shimを行うことによって肝臓の血管の末梢まで良好な画像を取得することが可能になる。
今後の展望
NSFの問題などにより、非造影MRAの重要性は高まっている。特に腎機能不全の症例は年々増えており、腎機能の悪い患者では造影剤の使用が躊躇されるため、非造影シーケンスの積極的な活用を推奨したい。
ただし、シーケンスによっては検査時間が長時間にわたり、身体を動かすこともできず負担の大きい検査になる場合もある。少しでも検査時間を短縮するために、Vantage Titan 3Tには下肢FBIの自動撮像機能が搭載されている。マニュアル撮像時は、サブトラクション画像を得るために最適フェーズを自分で選択する必要があるが、自動撮像機能ならこれを自動化することができる。自動撮像であれば撮像時間は9分、総検査時間は15分弱程度となり、MDCTと同等か、より短い撮像時間・検査時間で終了することができる。この新しい技術は今後さらに、実際の症例で評価していく必要がある。
大動脈弓部3分枝は、3T MRI検査でよく遭遇するartifactが強く難しい領域の1つである。解剖学的にも、縦横方向の血管走行がある、肺(空気)が存在する、複雑な体表(肩)の形態といった問題点があり、弓部3分枝を、両側鎖骨下動脈を含めて良好に描出するのが難しい。胸部大血管についても、空気の存在、広範囲撮影が必要な点など条件設定が難しい領域である。しかし現在では3TのMRIの特性を生かし、撮像法を工夫することで、多くの領域で良質な非造影MRAを撮像できるようになってきた。Fast spinecho系のFASEを使ったTime-SLIP法によって、選択的に肺動脈優位の画像を撮像する、あるいは胸部大動脈全体を撮像することも可能になってきている。解剖学的特徴、病態に基づいて各種の非造影MRA法を使い分けていく際に、本稿が一助となれば幸いである。
(本記事は、RadFan2013年7月号からの転載です)