第72回 日本医学放射線学会総会ランチョンセミナー 26:講演1「3T MRIを用いた体幹部、末梢動脈領域の非造影MRA ─知っておかねばならない撮像原理と使い分け─」

Satellite View~Canon Special Session : セミナー報告
2013.07.31

第72 回 日本医学放射線学会総会ランチョンセミナー 26:講演2
 
 

日時:2013 年4 月14 日(日)
場所:パシフィコ横浜
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社

座長
広島大学大学院医歯薬保健学研究院
放射線診断学研究室
粟井和夫 先生

3T MRIを用いた体幹部、末梢動脈領域の非造影MRA
─知っておかねばならない撮像原理と使い分け─

 

演者
 
東北大学病院放射線診断科
大田英揮 先生
図1 Time-SLIP 法、
BBTI 変化による腎動脈描出の変化(MIP 画像)
代表的な非造影MRAシークエンス
 非造影MRAの代表的な撮像方法では、
①time of flight法(TOF)
②phase shift法
③fresh blood imaging法(FBI)
④true SSFP法
⑤time-spatial labeling inversion pulse法(Time-SLIP)等が臨床ではよく使用されている。本稿では、fresh bloodimaging法(FBI)、true SSFP法、Time-SLIP法を中心に、体幹部、末梢動脈領域における非造影MRAの撮像原理と目的ごとの使い分けについて、3T MRI装置にフォーカスを当てて説明する。
 
 1.Fresh blood imaging法(FBI)
 Fresh blood imaging法(FBI)は、fast spin echoを使って血液のコントラストを得る撮像法である。MR膵胆管撮影法(MRcholangiopancreatgraphy: MRCP)などではheavy T 2-weighted imageで水を強調した画像になるが、FBI法で使われるシークエンスは、short echo train spacing、short TEで、血液と実質臓器のコントラストがある状況で信号収集を行い、さらに心電同期の要素を加えていくものである。 拡張期は血流がさほど速くないため信号が取得されるが、収縮期は動脈内の血流が速くなるためflow voidが生じ、信号が低下する。すなわち、拡張期では動静脈とも描出されている画像が得られ、収縮期においては静脈優位の画像が得られる。それをサブトラクションすることで、動脈優位の画像が取得される。
 
 2.Time-SLIP法
 Time-SLIP法はtag pulseを印加することによって、任意の血管を描出する方法である。 観察したい領域に選択的なtag pulseを印加すると、背景信号と、撮像したい領域にあった血液の信号が抑制されるが、そこよりも上流にある血液の信号は抑制されないため、その血液が流入したタイミングを狙って撮像する手法である。背景信号が抑制され、なおかつ血管が描出される画像を撮像することが可能となる。 背景信号は、反転パルスを印加した後に、血液の信号がnullを超えて徐々に回復していく。したがって、背景信号を抑制するためにnullを超えるあたりで撮像すれば理想的であるが、それには流入してくる血液をどこまで待てるかバランスを考える必要がある。 図1は、待ち時間(BBTI)を変化させて撮像した画像である。短いBBTIだとnullの手前になるが、背景信号がまだ抑制されていない。1,500ms程度になると背景が抑制されている。さらにnullを超えていくと、背景信号は回復してくるが、末梢側の血管とのコントラストが不良になってしまう。腎動脈における実際の3TMRIを使ったTime-SLIP法では、約1,500msの待ち時間(BBTI)を取ることで、血管が良好に描出されることが多い。

3T MRIの特性
 上述の方法は、これまで1.5T装置でも十分に活用されていた。しかし3T装置を使用することでSNRは大きく向上し、さらにtrue SSFPを使ったTime-SLIP法では、inflow効果の増大、T1値の延長など、血管描出にとっては良い方向に作用する。一方でB1不均一は、特にFBI法で問題になる。SARの増大やsusceptibilityeffectの増大もデメリットとなる。 それを克服する方法の1つとして、東芝メディカルシステムズ製3T MRI装置「Vantage Titan 3T」にはMulti-phase Transmissionが搭載されている。Multi-phase Transmissionを用いることで、不均一なflip angleが是正されるため、画像ムラのない良好な画像を得られるようになり、SARの問題も軽減される。また、肺との境界になる肝臓の領域では磁場不均一によるbandingartifactが発生することが多いが、磁場調整を行いlocal shimを行うことによって肝臓の血管の末梢まで良好な画像を取得することが可能になる。
 

図2 3T MRI における頸部頸動脈   a│b
a: 3D TOF、 b: Time-SLIP 法(true SSFP)
図3 症例:60 歳代女性、大動脈炎症候群で加療中
図4 症例: 70 歳代男性、右腎動脈狭窄
Time-SLIP 法(true-SSFP) にて、右腎動脈起始部の
狭窄、及び両側腎動脈の末梢側が描出されている。
図5 AVS 前の非造影MRA:右副腎静脈   a│b
a: FASE によるMPR 画像。
線状構造が確認できる(矢印)
b: 右副腎静脈造影。
FASEで認められる線状構造に一致している(矢印)
図6 症例:60 歳代男性、前腕シャント不全
図7 症例:40 歳代女性、ベーチェット病
各領域への応用
 
 1.頸部頸動脈
 頸部の血流速度は比較的速く、血管走行は頭尾方向であるため、inflow効果は十分に得られる。そのため従来から、2D・3D問わずTOF法による非造影撮像は臨床で多く活用されている。図2aは3T MRI装置で撮影した3D TOF画像、図2bはTime-SLIP法(true SSFP)による画像である。頸部頸動脈は非常にbandingartifactの出現しやすい部位であるが、local shimを調整することで良好な画像を得ることができる。さらに、TOF法では撮像にかなりの時間を要するが、Time-SLIP法(true SSFP)では1分以内で撮像が完了する。この点は特筆すべきメリットであろう。
 
 2.腎動脈および副腎静脈: 非造影MRAが役立つ二次性高血圧の画像診断
 臨床で常に意識しておきたい二次性高血圧症の原因疾患としては、腎血管性高血圧や原発性アルドステロン症が挙げられる。 腎血管性高血圧は、腎動脈の狭窄が原因で高血圧を来す病態であるため、画像診断においては腎動脈の詳細な評価が必須である。解剖学的特徴としては、深部に存在し、周囲に水の信号がある。血流速度は比較的速く、血管走行は左右方向に分岐するため、TOFでは良好な画像は得られにくい。また、呼吸による移動がある。これらを考慮すると、良好な画像を得るには呼吸同期併用のTime-SLIP法が適している。
 図3は、60歳代女性、大動脈炎症候群で加療中の症例である。単純CTでは全周性の石灰化が認められ、大動脈炎症候群の慢性期と考えられる。さらに、この患者は腎機能が低下しており、腹部エコーでは両側腎動脈起始部の血流速度上昇が疑われていた。eGFRは16mL/min/1.73m2と低値であるため、造影剤の使用は躊躇される。Time-SLIP法で撮像すると、左右の腎動脈に有意な狭窄は認められなかった。しかし詳細に観察すると、大動脈に軽度狭窄があり、大動脈内の流速変化が腹部エコーでの腎動脈の血流速度上昇という偽陽性の結果を招いたのではないかと考えられた。
 図4は、70歳代男性、治療抵抗性高血圧の症例では、腎エコーでも狭窄が疑われたが、Time-SLIP法で撮像すると、右腎動脈起始部の有意狭窄が認められ、左右の末梢側も比較的良好に描出された。狭窄部、及び両側腎動脈分枝の形態ともにDSAとTime-SLIP法では良好に一致しており、Time-SLIP法はインターベンションの術前評価法として有用と考えられた。 原発性アルドステロン症は比較的若年層に好発する疾患で、患者数は国内で約400万人存在すると推定されている。腎機能低下症例も多いため、非造影イメージングは非常に重要である。代表的な病因はアルドステロン産生腺腫と特発性副腎皮質過形成で、ともにCTやMRIなどの断層画像では鑑別が難しい。したがって、鑑別診断にはAVS(副腎静脈サンプリング検査)が必須となる。 左副腎静脈は左腎静脈に環流、右副腎静脈は下大静脈に環流することが多い。ただし、右副腎静脈は短く細いためカテーテル挿入が困難な場合が多く、AVS実施前には非造影MRA画像(図5)で脊椎レベル、静脈の合流パターンや向きなどを評価していくことで、カテーテル挿入の成功率を改善することができる。
 
 3.末梢血管、透析シャント
 透析シャントにおける血流の特徴としては、吻合部で反転する血流が挙げられる。TOF法ではこの反転していく血流をとらえることがなかなか難しい。図6に、60歳代の男性の前腕シャント不全の症例を示す。図6aのタイミングでは、橈骨動脈、尺骨動脈、骨間動脈いずれも末梢側が不鮮明である。BBTI(待ち時間)を少し遅らせると吻合部が描出され(図6b)、末梢側の橈側皮静脈もみえるようになった。さらにタイミングを遅らせるとより明瞭になってくるが(図6c)、吻合部への逆行性の血流ははっきりしない。Time-SLIP法による画像からは順行性の血流があるのではないかと推察される。DSA(図6d)では、橈骨動脈の末梢部にヘアライン状の高度狭窄がはっきり認められる。
 下肢の末梢血管の特徴としては、頭尾方向に広範囲であること、血流速度は頸部や腎臓などに比べるとそれほど速くないこと、近接する動静脈の分離が必要になることがなどが挙げられ、サブトラクションを利用したFBI法が非常に有用である。
 40歳代女性、ベーチェット病の症例において、MDCTおよびFBI法による2 station撮影を行った画像を図7に示す。左膝窩に動脈瘤が認められ、右の膝窩動脈および下腿3分枝の近位側に閉塞が認められる。CTアンギオと比較しても、側副路の描出も含め、かなり一致して血管の解剖が観察できる。ごく一部、左の腓骨動脈がMRIでは高信号に写っているが、造影CTでは描出されていない。このような違いも時々みられることがある。

今後の展望
 NSFの問題などにより、非造影MRAの重要性は高まっている。特に腎機能不全の症例は年々増えており、腎機能の悪い患者では造影剤の使用が躊躇されるため、非造影シーケンスの積極的な活用を推奨したい。
 ただし、シーケンスによっては検査時間が長時間にわたり、身体を動かすこともできず負担の大きい検査になる場合もある。少しでも検査時間を短縮するために、Vantage Titan 3Tには下肢FBIの自動撮像機能が搭載されている。マニュアル撮像時は、サブトラクション画像を得るために最適フェーズを自分で選択する必要があるが、自動撮像機能ならこれを自動化することができる。自動撮像であれば撮像時間は9分、総検査時間は15分弱程度となり、MDCTと同等か、より短い撮像時間・検査時間で終了することができる。この新しい技術は今後さらに、実際の症例で評価していく必要がある。
 大動脈弓部3分枝は、3T MRI検査でよく遭遇するartifactが強く難しい領域の1つである。解剖学的にも、縦横方向の血管走行がある、肺(空気)が存在する、複雑な体表(肩)の形態といった問題点があり、弓部3分枝を、両側鎖骨下動脈を含めて良好に描出するのが難しい。胸部大血管についても、空気の存在、広範囲撮影が必要な点など条件設定が難しい領域である。しかし現在では3TのMRIの特性を生かし、撮像法を工夫することで、多くの領域で良質な非造影MRAを撮像できるようになってきた。Fast spinecho系のFASEを使ったTime-SLIP法によって、選択的に肺動脈優位の画像を撮像する、あるいは胸部大動脈全体を撮像することも可能になってきている。解剖学的特徴、病態に基づいて各種の非造影MRA法を使い分けていく際に、本稿が一助となれば幸いである。

 
 
(本記事は、RadFan2013年7月号からの転載です)

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