第42回 日本IVR 学会総会ランチョンセミナー 講演「Angio-CT  ―使いこなしてますか?―」

Satellite View~Canon Special Session : セミナー報告
2013.08.31

第42回 日本IVR 学会総会ランチョンセミナー

 
日時:2013 年5 月17 日( 金)
場所:軽井沢プリンスホテル
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社

座長
 
愛知県がんセンター中央病院
放射線診断・IVR部
稲葉吉隆 先生

Angio-CT
 ―使いこなしてますか?―

 

演者
 
国立がん研究センター
中央病院放射線診断科
荒井保明 先生
図1 Angio-CT
はじめに
 Angio-CT は血管造影をしながらCT 画像を撮影することができる複合モダリティである。現在では血管の異常や腫瘍の検出・診断だけでなく、IVR において欠かせない装置になっており、高度な血管系・非血管系インターベンションをサポートしている。また近年の技術革新により撮像時間が短縮され、低線量化を図りながらも高解像度を実現し、患者だけでなく医療者への負担も少ないものに進化している。
 Angio-CT の開発の発端は、松井 修先生がRadiology に掲載されたCTAP とCTHA により極めて正確に肝臓の腫瘍が診断できるという論文である1)。1992 年に稼働を開始したAngio-CT はAngio のユニットとCT のユニットに分かれたシンプルなつくりで、宙づりのimage intensifier があり、テーブルの中にあるジェネレーターからX 線が照射されるという仕組みであった。当時の血管撮影では、フィルムを用いて腹腔動脈造影で12~13 枚の連続撮影をして、自動現像機で現像が上がってくるのを待って、次のステップを決めていた。Angio-CT を使ったインターベンションにおいてはCTAP、CTHA で小さな病変がよくわかり、当時はきわめて画期的であった。そして、天板が動くため、患者を運ばなくて済むのが最大の利点であった。現在Angio-CT は日本国内で150 台近くが稼働しているが、最近はMRI やCT の性能も上がっているため、必ずしもCTAP が一番とは言えないが、当時は圧倒的な診断能力を示していた。
 現在当院で使用しているAngio-CT は、CT 部分が直径90cmのLarge bore を持つ16 列CT である。もちろんCT-fluoroが可能で、FPD のDSA 装置とC アームも備えている(図1)
図2 腹膜の腫瘤性病変
図3 膵頭十二指腸切除術後
図4 肋骨転移例
図5 難治性腹水
図6 腎癌
図7 門脈血栓症
図8 膵炎による門脈閉塞
図9 位置関係
図10 バルーンを目標に挿入
図11 下大静脈シャント
穿刺の際に常に深さの情報は必要か?
 Angio-CT の台の上でnon-vascular の針の穿刺を行う際には、一般的には3 次元空間のX、Y、Z 軸の情報が必要である。以前は肺生検などでX 線のfluoro だけで行い、X、Y 軸の2 次元( 平面) で腫瘍を見ながら、あるいは動かないように患者に息止めをしてもらいながら針を刺していた。ただ、穿刺がヒットするためには深さ(Z 軸) という条件が必要であり、この3 つの情報が集まって的確な腫瘍の穿刺が可能となる。最近ではコンピュータの処理速度も上がり、すぐ3D 画像が確認できるようになったが、本当にこのZ 軸、深さの情報は常に必要なのかについては改めて考えてみる必要がある。
 一番単純なのは肺生検で、真正面から刺した場合でもある程度慣れていれば、指先の感覚で対象に当たったことがわかるため、Z 軸の深さ情報がなくても、手の感覚、勘、aspiration といったテクニックを使うことで適切な穿刺が可能である場合は少なくない。したがって、時間やコスト、被曝量を勘案して、必要最小限の情報で穿刺を行うという姿勢も大事ではないかと考える。今のCT 装置は3D の情報を簡便に提供してくれる。この3D 情報は穿刺された針と腫瘍との位置関係を正しく把握するためには確かに優れているが、我々はあまりにもこの3D 情報に頼り過ぎているのではないだろうか。
 人体の中のターゲットに針を刺すことが困難な理由には、方向の間違い、奥行きの間違い、体動、という3 つの要素がある。一方、人体の中には物差し、目盛り、基線といったものが存在しない。特に呼吸性移動など、対象が動くことは穿刺の困難さを大きく増す要因である。しかし、もし、体の中に基線をつくることができれば、穿刺はずっと容易になる。一般に体の中で基線となり得るのは骨で、これが使える領域は比較的簡単に穿刺を行うことができる。一方、基線をつくるテクニックが存在する。いわゆるTandem 法である。まず、ヒットしなくても良いので針を1本刺し、これを基準に、1cm 上を平行に刺す、あるいは1cm深く刺す、または少し傾斜をつけて刺すなどの方法である。Tandem 法の利点の1 つは、対象が動いた場合に基準の針も一緒に動いてくれることである。
 
Tandem 法を用いた穿刺技術
 Angio-CT を用いたI VR における最も大きな利点は、C T とX 線両方の画像情報を必要なときに適宜使えることである。Tandem 法を使った技術をいくつか紹介する。
 図2 は腹膜の腫瘤性病変に対する生検である。まず21G 針を少し浅めに刺して基線とした。CT での確認によりX 線の透視下で背骨寄りに平行に刺せば腸を刺すことなく、確実にヒットすることがわかる。
 図3 は、膵頭十二指腸切除術後に、空腸と膵管の縫合部分が外れてしまった症例である。ドレーンから膵液が出て、血管も破綻し、動脈出血もあったため、膵管にカテーテルを入れることになった。膵管は拡張していないが、ドレーンから造影剤を入れたところ、うっすらと膵管が確認できるようになった。1 本目の針はX 線透視下で大体の方向を予想して挿入したが外れていた。しかし、この基線が膵管と同じCT 平面上にあることがわかったため、真上からこの基線の上を角度を浅くしてなだらかに挿入すれば、いずれ必ず膵管に当たることが想定できた。穿刺針から膵管内にガイドワイヤーを入れ、チューブを挿入し、腸管のほうから引き出して膵管と空腸をつないだ。最終的にはこのチューブも抜去することができた。
 Angio-CT を使った穿刺のポイントとして、X 線のfluoro がリアルタイム性、正確性という点では抜群だという事が挙げられる。時間のかかる3D 画像を作成することばかりに頼る必要はなく、患者の体に基線をつくることが大事である。Angio-CT で基線を用いた穿刺を行う上では、Tandem 法を使うことが基本である。
 Angio-CT の有用性には、CT と単純X 線のコンビネーションを極めて容易に行える点も挙げられる。図4 は痛みの強かった肋骨の転移例で、肋骨は曲がっているためX 線だけでの穿刺は難しかったが、CT を使えば針が対象に当たっていることは一目瞭然であった。RFA を行った結果、VAS が7 から0 になり痛みは消失した。
 図6 は術後に発生したリンパ漏の難治性の腹水症例である。漏出している箇所にピシバニールを投与する方法があり、この方法を用いた。X 線透視下で、先端の曲がったカテーテルを用いて患部を探し、造影剤を少量注入。腹水中の分布を確認した上でピシバニールを投与した。数日おきに何度か処置を行ったところ、漏出は止まり腹水も消失した。このような手技は、CT とX 線透視の両方がないと対処できない。
 凍結療法の針は、特にRFA 針と比べるとキレが悪く、対象の横をかすめてしまう傾向がある。この腎癌症例(図6)では、まず血管撮影をしてリピオドールの注入により腫瘍のマーキングを行った。X 線透視で確認できるようになったため、あとは主にX線透視下に中心を狙って穿刺すれば良くなった。CT-fluoro の場合は、同じ断面からずれた場合は3 断面、4 断面で確認する方法もあるが、X 線fluoro のほうがこの症例のような場合にははるかに有用である。
 図7 は広範な肝切除術後の門脈血栓症例である。まず経皮的に肝内門脈を穿刺し、ラジフォーカスガイドワイヤーを使って上腸間膜静脈側へ狭窄部を突破した。ただ、ここをバルーンで広げてステントを挿入しても、小さな肝臓で門脈血を受け切れなければ、また血流速度が落ちて血栓ができてしまう。そこで、シャント形成を考えた。ピッグテールカテーテルをマーカーとして入れ、逆行性に門脈側から下大静脈にアプローチして経頚静脈的肝内門脈肝静脈シャント形成術(TIPS)を行った。それぞれのルートをバルーンで拡張し、ステントを留置した。上腸間膜動脈からの経動脈性の門脈造影では、門脈、肝内門脈に流れて一部が肝静脈に出ていくことが確認できる。その後、門脈血栓は出現しなくなった。
 最後に、最近経験したIVR 症例を紹介する。3D 画像では、門脈が途絶し、側副血行路で肝臓に入っているのがわかる(図8)。門脈閉塞の原因は飲酒による膵炎であった。上腸間膜静脈の血液が下から戻れない一方、脾静脈側に流出するルートがあったのがこの症例の特徴である。ただし、脾静脈も閉塞していた。門脈圧亢進症による空腸からの出血であり、静脈瘤硬化術を行えば良いが、普通の方法ではここに内視鏡が届かないことから、IVR の依頼を受けた。
 肝内門脈から上腸間膜静脈のほうに突破して、そのルートを広げようと試みたがうまくいかなかった。そこで、右門脈から脾静脈に直接ルートを作ってはどうかとの提案が出て、行ってみた。実はここが一番カーブの少ない、ほぼ直線で結べるルートではあったが、脾静脈に入る前に腹腔動脈と上腸間膜動脈を避ける必要があり、難しかった。
 この状況に対処するため、中に細い針が入っていて、先端から斜めに針が出るデバイスをその場で自作した。カテーテルが大動脈と下大静脈、更に左右の肝内門脈と脾静脈にも入っている(図9)。小まめにCT を撮りながら、右門脈から脾静脈に至るルートを拡張して、ステントを挿入した。しかし造影剤を注入したところ、貯溜して全くout-flow がない状況が確認された。そのため、さらにTIPS を作って一部をシャントに逃がすことにした。脾臓側からバルーンカテーテルを挿入し、このバルーンを目標に穿刺したところ(図10)、シャント側にガイドワイヤーを誘導することができ、TIPS ルートにステントを挿入することができた。実はこの症例は出血が少し残ったため、最後は外科医に依頼し、右の回結腸静脈からカテーテルを挿入して、瘤のほうにNBCA を用いて追加塞栓を行った。最終的には、側副血行路から脾静脈系へのルートを通って門脈に流れ、一部が下大静脈に逃げていくという予定通りの状況ができあがり(図11)、退院に至った。
 
Angio-CT における新機能
 2013 年、東芝メディカルシステムズのAngio-CT に便利な機能が追加された。それはCT 装置とAngio 装置の位置決めを容易にする仕組みである。たとえばCT 撮影画像上でターゲットの位置を指定するとその位置にAngio 装置のアイソセンターが設定されるため、CT 撮像後にAngio に切り替えて撮像するような場合に位置決めをし直す手間が省け、検査時間の短縮につながる。この機能により、穿刺をする際もすぐにX 線透視下で場所を決めることができる。また寝台を長手・横手さらに上下に動かしても、設定されたアイソセンターにしたがってAngio のC アームが追いかけ、寝台上下動を自動的にこなすことも可能である。更に、Angio 画像からCT 撮影に必要な位置を表示することも可能となり、スキャノを用いずCT 撮影の計画が立てられ、時間短縮につながる。

おわりに
 強調したいのは、IVR を実施する際はAngio とCT を右手と左手のようにコンビネーションで使っていただきたいということである。Angio-CT はIVR を大きく進歩させ、さらにAngio-CT 装置そのものも進化し続けている。ただし、Angio-CT もカテーテルやガイドワイヤーと同様に単に道具であるということを忘れてはならない。Angio-CT が何かをやってくれるとは考えずに「Angio-CT を使って我々が何をするか」を考える姿勢が重要だと思う。
 
 
〈文献〉
1) Matsui O et al: Work in progress: dynamic sequentialcomputed tomography during arterial portography in thedetection of hepatic neoplasms. Radiology 146: 721-727,1983

 
 
(本記事は、RadFan2013年8月号からの転載です)

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