第33回 日本脳神経外科コングレス総会ランチョンセミナー
日時: 2013 年5 月11 日( 土)
場所: 大阪国際会議場
共催: 東芝メディカルシステムズ株式会社
small vessel diseaseという概念
われわれが脳卒中救急で遭遇することの多いラクナ梗塞や、白質の虚血性変化、microbleedingなどは、臨床的にはそれぞれ治療方法が異なるため、異なった疾患として認識されている。しかしながら最近、これら脳卒中関係の病態を “small vesseldisease”、すなわち小血管病変として1つの病態と捉え、どのような経路をたどって最終的にそれぞれの表現型に至るのかについて、一元的に考えてみようという考え方が注目されている。例えば脳出血では、アミロイドの血管内皮への沈着や、microaneuryによる血管の破綻から脳出血に至る、また脳梗塞の場合は、血管平滑筋の損失、血管壁の肥厚などにより急性の脳虚血が生じ、それが脳梗塞に至る、との考えである。
MRAで多くの患者の脳血管を診ていると、動脈硬化により、明らかに血管表面の凹凸が激しい患者でも脳梗塞を起こさない場合や、また逆にMRAでは脳血管に問題の認められなかった患者が脳梗塞を起こすというのはよく経験することであり、動脈硬化から脳梗塞を発症する機序に関して疑問に思うことも多い。実際、2009年の論文1)では、主幹動脈の動脈硬化の変化と脳卒中の表現型とが必ずしも一致しないことが報告されており、臨床での実感が研究レベルでも明らかにされつつあると感じている。また例えばアミロイドアンギオパシーにおいても、microbleedingだけで済んでいる症例と、ある程度の血腫も伴う症例との2種類があり、両者を病理的に比較すると、脳深部の血管の病理変化に差が認められることがわかっている2)。
まとめ
以上より、イメージングにより穿通枝であるレンズ核線条体動脈の変化を評価できることが示され、最終的にはsmall vesseldiseaseの評価にイメージングが応用できると考えられ、このことによって、脳卒中関連疾患の病態の解明と臨床応用につながることが期待される。特にFSBB法では、非侵襲、非造影で穿通枝動脈を観察できることが大きなメリットといえよう。
〈文献〉
1) Man BL et al:Lesion patterns and stroke mechanisms in concurrent atherosclerosis of intracranial and extracranial
vessels. Stroke 40(10):3211-3215,2009
2) Greenberg SM et al:Microbleeds versus macrobleeds: evidence for distinct entities. Stroke 40(7):2382-2386, 2009
3) Kang CK et al: Hypertension correlates with lenticulostriate arteries visualized by 7T magnetic resonance angiography. Hypertension 54(5): 1050-1056, 2009
(本記事は、RadFan2013年8月号からの転載です)