第26回 日本老年脳神経外科学会ランチョンセミナー1
日時:2013 年3 月1 日( 金)
場所:東京ステーションコンファレンス
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社
はじめに
3 次元シーケンスは1.5T でも撮像可能であったが、3T を使用することにより非常に高精細な画像が短時間で撮像できる。また3T ではT2 強調、FLAIR、T1 強調のいずれのシーケンスでも撮像可能であり、空間分解能の非常に良好な画像が得られる。特に腫瘍性病変においては、造影後のT1 強調像を3D で撮像し、3方向の再構成を実施している。一方造影増強効果がみられない病変では、FLAIR 像の3D が非常に有用である。また3D の撮像ではないが、拡散強調画像をボリュームデータとして再構成することも有用な場合がある。増強効果を示す腫瘍性病変では、T1 強調像での3D の撮像とその再構成は日常的に用いられている。ここでは、東芝メディカルシステムズのVantage Titan 3T 装置による脳腫瘍診断の最新のテクニックについて述べる。
ASL 法とDSC 法の乖離
先述したASL 法とDSC 法の乖離について19 例で検討した。待ち時間(delay time)2,200 msec で信号を得たASL 法の画像をDSC 法による画像の視覚的所見を比較すると、19 例のほとんどは両者で一致していたが、anaplastic oligoastrocytoma(AOA)およびリンパ腫各1 例はASL 法で高信号であり、逆に脳転移やoligodendroglioma はDSC 法で高信号であったが、ASL法とDSC 法が一致していた疾患と比べ、組織診断に明らかな傾向はみられなかった。ただし比較的均一な増強効果を示す疾患では、ほぼ同等かASL 法のほうが高信号であり、またリング状の増強効果を示す疾患の多くは同等であった。一方さほど増強効果のない疾患では、ASL 法とDSC 法の間に乖離が生じる傾向がみられた。このような乖離は、labeling delay time、すなわち上流でラベルされてから信号を得るまでの時間の違い、また特にDSC法に関しては患者の心大血管を含めた循環の要素、スライス厚などの違い、ASL 法は撮像時間が数分かかる影響、さらに最大の原因である腫瘍内部での血流の違いなど、複合的な要因により生じると考えている。1 回のみのスキャンではこのような乖離がしばしば生じるため、当院ではASL 法だけでなく、灌流画像に関してはtime-resolved contrast-enhanced MRA(MRDSA)にひき続き行うDSC 法を併用することをルーチンとしている。glioblastoma では、MRDSA でも典型的なAV shunt や濃染像が描出され、また続けて造影剤の残り半量で得るDSC 法の灌流画像では、高いCBF、CBV が描出される。また手術翌日から感覚性の言語障害が出現したバイパス術後の内頸動脈閉塞例では、STA-MCA バイパスは開存しているが、バイパス部位近傍を中心にやや腫脹傾向があり、ADC が若干上昇している部分と低下している部分が混在していた。本症例のMRDSA をみると、バイパスの開存が確認できることに加え、わずかなcapillary brush 様の所見が認められた。本症例でも腫瘍症例と同様の灌流画像を続いて撮像すると、わずかなhyperperfusion の状態を描出することができた。
(本記事は、RadFan2013年8月号からの転載です)