【エキスパートがお届け!!Site of RSNA】隈丸加奈子先生(順天堂大学放射線科)  Part1

RSNA2016 Report:エキスパートがお届け!!Site of RSNA
2016.11.29

隈丸加奈子先生(順天堂大学放射線科)からRSNA2016の参加レポートを頂きました。

画像診断領域の Challenge と Change :ACR International Economic Committeeによる教育プログラム

 RSNA参加の大きなメリットの一つは、世界各国の画像診断の社会的状況を知ることができる点である。
 日曜日の午後、ACR International Economic Committeeによる教育プログラム「Imaging challenges and change: A global perspective」を拝聴した。政治・経済・人口構造などの社会状況は急速かつ持続的に変化しており、画像診断や放射線科医のあり方も、その変化に対応することが求められている。各国の状況をシェアし今後に生かすというのがこの教育プログラムの目的であったが、カナダ、スペイン、米国、そして日本についての発表があった。
 カナダでは診断機器の配置に際して公的な承認が必要であること、病院の予算が十分確保できないことなどから、CT・MR機器が十分配置されず、検査の待ち時間が非常に長いことが問題となっていた。“Access to a waitlist is not access to care”。待ち時間を解消するために公的ではない私的な(保険でカバーされない)MRIクリニックが活用され始めており、今後はPrivate-publicのハイブリッドシステムに期待が寄せられていた。
 スペインでは、放射線科医に対する給与の低さが強調されており、講演者のDr.Luis Marti-Bonmatiによると週45時間の勤務で、日本円で年収は700万―950万円程度、これはオンコール対応も含まれるということで、多くの放射線科医は日本のようにバイト読影で収入を補完しているらしい。また、CT・MR・血管撮影用機器も古く、10年以上の機器がCTの24%、MRの36%、血管撮影機器の42%を占めるとのことである。
 米国に関しては、新大統領就任でどのような変化が待ち受けているのか、まだ先が読めない感じであったが、ACRのVice ChairであるDr. Geraldine B. McGintyの講演で、①質が高く、適切な検査が価値を生むという概念、②医療へのアクセス、③金銭的にカバーされた適切なスクリーニング、④イノベーションが支援される環境、この4つを守るために、放射線科医は各ステークホルダーに働きかけていくことが大事であると強調された。
 日本に関してはcommitteeのFacultyでいらっしゃる岩手医科大学の江原茂教授がご講演されていた。高齢化、放射線診断専門医の不足、専門医制度の変化、遠隔読影への障壁、法的環境の変化などが日本の近年の特徴として紹介された。放射線科医も高齢化(?)しており(1996年の放射線科医の平均年齢は38.8歳、2008年は44.0歳)、画像診断の増加に伴って日々の仕事量も多いが、仕事に満足していない放射線科医は10%以下と比較的少ない。また、ご存知の通り機器にも恵まれている。
 私も今後、このACRのInternational Economic Committeeの活動のお手伝いをさせて頂くことになったが、放射線診断に関する各国の制度や環境をダイレクトに知ることができる貴重な機会であり、非常に楽しみにしている。